「ジョンティアッシュ」平野敬祐氏に聞く「研鑽の末に見つけた、テーブル上の調和」

2008年4月の開業より、白金台の食通たちから人気を集めていた「ジョンティアッシュ」。
フランスの星付きレストランなどで研鑽を重ねていた平野敬祐さんが、2018年7月より
料理長に就任されてからも多くのお客様が足を運んでいます。本日は平野さんのこだわりやどんなお料理を届けていきたいか、その胸の内にある思いをインタビューいたしました。

人気店の二代目料理長に就任、困難に立ち向かっていったその気概とは

―平野さんが料理長に就任された経緯を教えてください。

前料理長の進藤さんが、ご自身のお店を2018年に開業することが決まっていました。当時私はフランスでの修業から一時帰国して、また渡仏しようと考えていたのですが、お世話になっていたワインスクール「レコール・デュ・ヴァン」の信国さんから声を掛けられたのがきっかけですね。信国さんから捕まえたぞ!という強い意志を感じたような気もしますが、振り返ればとてもよいチャンスだったと思います。

進藤さんは「ジョエル・ロブション」グループでの先輩で、同じ店舗で働いたことはありませんでしたが、私の採用面接時の面接官でした。「ジョンティアッシュ」を引き継ぐ際に初めて1か月間一緒に働いたのですが、食材への強いこだわりに大きな影響を受けました。食材の劣化を極力無くし、なるべく新鮮で美味しい料理を提供したいという姿勢を貫いていました。そのため、事前の仕込みや食材の熟成という手法はほとんどしませんでした。

―新しい「ジョンティアッシュ」で、特に注力されていることを教えてください。

テーブル上の調和を今まで以上に重視しています。マネージャーソムリエの柴田とも相談しながら、お皿の中のことだけでなく、すべてのテーブルで美味しいお酒と最良の調和ができるように考えています。
以前はワインペアリングの際に、複数のワインをご提案するようなこともありました。それもよいのですが、少し押しつけがましくなってしまう気がして、より一層料理と調和する一杯をご提案できるように精選を重ねました。

―引き継がれてから苦労したことはありましたか。

引き継いだ直後は、進藤さんの影響を受けすぎてしまっていた部分があったかもしれません。自分の料理をお客様に楽しんでいただくために、食材を生かすというよりも引き立たせる仕立てを心がけました。
私の料理人としてのルーツには、「ジョエル・ロブション」グループで働いていた時の上司だった渡辺さん(現在は「レストラン ナベノイズム」を経営)がおり、私に多くのことを教えてくれました。

文化的側面も踏まえ料理のバックボーンを意識し、複数の食材を巧みに調和させる。そして何より、フランス料理の肝である美味しいソースをお客様にしっかりと味わっていただく。そういった渡辺さんに教わってきたことも、きちんと私の中で昇華して料理をご提供していかなくてはならないと気づきました。
いま一度原点を振り返ることにより、私の気持ちや料理を安定させることができたと思っています。

最良の調和を追い求めて、必要なことは躊躇せずにやっていく

―あらためて「ジョンティアッシュ」の強みを教えてください。

ご提案するワインを精選したというお話をしましたが、一言で言えばお酒好きに優しいお店であることでしょうか。
私たちは、テーブル上の調和を貪欲に追い求めています。どのお店でも同じように努力されていることだとは思いますが、ワインをボトルで飲んでいただいてもペアリングで飲んでいただいても、高い精度で最後まで楽しんでもらえるのではないかと考えています。お酒が大好きな私が言うので、信頼していただけたら嬉しいですね。(笑)

―コース料理の流れ(起伏)は食事を楽しむ上で重要だと思うのですが、どのように考えていますか。

コースを通して、無理強いをするような形でない、適度な緊張を自然に感じていただけるよう心がけています。
例えば、起伏を作るために力を抜いたようなお皿をご提供するのではなく、食材を引き立てつつもスパイスの香りで緩慢な流れにならないようにする。すべてのお料理の魅力を堪能していただけるようにと考えています。

言葉にすると少し分かりにくいかもしれませんが、コース料理の流れを折れ線グラフのようにではなく、太陽系の惑星の配置のように。テーブル上に展開された、それぞれの独立したお料理をお客様に巡っていただくというようなイメージをしています。味の強弱だけでなく、色や香りなど様々な要素を起伏の重要なファクターとして考えています。

―例え話ですが、グラニテを出さないということもあるのでしょうか。

肉料理の前にお口直しをするわけではなく、食後のデザートという惑星群に、このグラニテで移行することを示しつつのアヴァンデセールとしてご提供をしています。ここからグランデセールに向かって、デザートの世界が広がっていくことをイメージしています。

編集後記
頭でっかちになってしまわないようにと気をつけながらも、満足感はありつつ最後まで疲れることなく、食事を楽しんでいただきたいとのお話でインタビューは終わりました。終始平野さんからは、「もっとお客様にうまくお伝えしていきたい!」という気持ちが伝わってきました。まだまだ理想の調和を目指す旅は終わらなそうで、「ジョンティアッシュ」はこれからも、お伺いするのが楽しみなフランス料理店であると確信しました。

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平野敬祐 プロフィール
1990年生まれ、静岡県出身。
大阪あべの辻調理師専門学校を卒業したのち2011年より東京恵比寿にあるシャトーレストランジョエルロブションにて料理人としての修行を開始する。五年半の勤務中に各ポジションを経験し料理人としての腕を磨きつつその間JSAソムリエ認定試験にも合格する。その後2016年に渡仏、ブルゴーニュ地方ボーヌにあるミシュラン一つ星レストランLe Carminにて本場のフランス料理を学びつつ、週末にはブドウ畑やワイナリーを渡り歩く。日本に帰国後2018七月よりレストランジョンティアッシュの料理長として就任する。「食材の季節、典型性を大切にしつつそれらを組み合わせテーブルの上でワインとのマリアージュを試みる。

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フランス料理

ジョンティアッシュ

都営三田線 白金台駅 1番出口 徒歩3分

20,000円〜29,999円

アクセス
東京都港区白金台5-18-17 ゴールドフォレストビル2F

※こちらの記事は2023年04月20日更新時点での情報になります。最新の情報は一休ガイドページをご確認ください。

橋本 恭一

美味しいお酒とお料理を求め続ける 都内屈指の胃袋&肝臓フル回転系ライター。 和洋中ジャンル問わず、王道の古典料理から イノベーティブ系のお料理にどんなお酒が合うかを ひたすらに追い求めており、食前食後などのバーの 楽しみ方も皆様にお伝えしてまいります。
【MY CHOICE】
・さいきん行ったお店:ナスキロ/サエキ飯店/赤坂 らいもん/鮨 みうら
・好きなお店:レストラン キエチュード/ラ クレリエール/私厨房 勇/トラットリア ダディーニ
・自分の会食で使うなら:くろ﨑/Les Chanterelles/日本料理 晴山/の弥七
・得意ジャンル:フレンチ/イタリアン/バー
・好きな食材:サルミソース/真鱈の白子/生トリ貝

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