インタビュー|

「肉割烹 上」大久保 丈太郎氏インタビュー。肉本来の味を一番美味しい状態で楽しめる肉割烹の醍醐味

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西麻布交差点のほど近く、外苑西通りから一本奥に入ったビルの地下に店を構える「肉割烹 上」。こだわりの国産黒毛和牛を心地良い空間で楽しめる高級焼肉店「うしごろ」グループが手掛ける肉割烹で、開店から僅か2年で「ミシュランガイド東京 2019」の一つ星として紹介され、3年連続で掲載され続けていることでも注目を集めています。
今回は料理長の大久保丈太郎氏が、KIWAMINOのインタビューに応えてくださいました。

※本インタビューは、2021年5月18日に感染症対策の上で行いました。

1.「自分で何かを作りたい、表現したい」という想いから料理人の道へ

-まずは料理人を目指されたきっかけについてお聞かせいただけますでしょうか?

元々は、アパレルの専門学校を卒業して洋服屋に就職しましたが、長く続けていくイメージが持てず1年で退職しました。その後すぐ料理人を目指した訳ではないのですが、「何か自分で表現してみたい、作ってみたい」という想いはあったんです。
ある日、料理の仕事は場所も年齢も関係なく長く働けると気付き、「あるものを売るのではなく、自分で作ったものを売ってお金に換ええられる仕事がしたい」という想いにも繋がると思ったので、料理人として修業を始め、今に至っています。

―日本料理店や割烹店などで研鑽を積まれた後、2014年に現在の会社に入社されたとのことですが、「和食」から「肉」というジャンルへ転身を決めたきっかけは何だったのでしょうか?

初めて修行に入った天ぷら屋で独立願望を持つようになりましたが、「自分で天ぷら屋をやりたい」と思う一方で、「天ぷらしか出せないのはどうなのか」とも思っていました。その後、修行に入った和食屋では、仕込みや料理方法など幅広い知識や技術を勉強することができました。一通り自分でできるようになり、あと何が必要かと考えたときに、今までの修行でほぼ触ったことがなかった「肉」のジャンルに興味を持つようになりました。

そんな中で紹介していただいたのが今の会社。良い意味で、焼肉屋らしくないという第一印象でした。社長はアパレル出身で料理人ではないので、ビジュアルから入る目線や経営者としての考え方など自由な発想が新鮮で面白く、ここで仕事をしたいと思いました。
今の会社に入って、料理長やメニュー開発など幅広い経験を通じて、部位ごとの味や食感の違い、適した調理方法など一通りわかるようになりましたね。

2.「肉割烹 上」が提案する「肉割烹」というスタイルについて

―大久保様は「肉割烹 上」の立ち上げから関わられたとのことで、ご自身の考えもお店に反映されているかと思うのですが、「割烹」というスタイルへのこだわりを教えていただけますでしょうか?

お店は5年目になりますが、当時はまだ「肉割烹」というジャンルのお店はあまりありませんでした。「肉割烹とはこういうもの」という明確な答えが無い中、どんなお店にしようか考えたときに、お寿司屋さんのカウンターが浮かびました。切って焼いて盛り付けをする一連の調理工程が楽しめるオープンキッチンや、まな板とカウンターの高さを揃えているのもそこからイメージしています。

美味しいお肉を一番美味しい状態で食べてもらいたかったのと、せっかくオープンキッチンにするならお肉を焼いている様子もお客様に見てもらいたかったので、窯で焼くステーキをメイン料理にし、オープンスタイルの特注窯を作ってもらいました。

窯の中は2つに分かれていて、半分は直火、半分は鉄板と使い分けができるようになっています。

「肉割烹」というと、お肉だけといったイメージを持たれることがありますが、お肉を美味しく食べてもらいたいからこそ、お肉以外の料理も取り入れることが大事だと思っています。お客様にどんなお肉を食べてもらいたいかを重視して、コースを考えています。前半は、お肉に魚や野菜も交えてつまみを楽しんでいただくお寿司屋さんのようなイメージ。最後はステーキで完結するのが、うちのスタイルです。日によって変わりますが、一連のコースで7~8種類のお肉を食べ比べることができます。
ステーキ屋さんなど一人で入れないお肉屋さんが多いですが、うちはカウンターがメインですし、お料理もコースなので、おひとりさまでも気軽に楽しめます。これも割烹スタイルならではだと思います。

3.店名である「上」の一文字に込められた食材へのこだわり

―食材、技、空間、おもてなしと、全てにおいて最上を目指す想いが「上」という店名に込められていると拝見しました。なかでも食材に関してのこだわりを教えていただけますでしょうか?

オープン当初、お肉は「生産者指定」にこだわりを持っていました。ですが、同じ人が作ったとしても牛によって個性があることに気付いたんです。自分がどんなお肉が好きでどんなものをお客様に出したいかも、経験を重ねることでわかってきたので、今は必ずしも生産者を限定している訳ではありません。

今こだわっているのは、但馬牛の血統の雌牛。飼育期間が一般的な黒毛和牛に比べて長く、手間をかけて育てられているので味が良いんです。通常は月齢26~27カ月で屠畜されて売り場に出るのですが、うちでは最低でも30カ月以上、長いものだと40カ月のものを使っています。牛肉は一般的に30カ月を超えた頃からお肉が美味しくなると言われていて、「体内熟成」によって育ちながらお肉が熟成され、旨みが増して味が強く濃くなります。見た目も、赤の色が濃くなります。サーロインは脂が多いイメージがあって好みが分かれるかと思いますが、但馬牛の血統のサーロインは脂が全くくどくないんです。
お肉そのものが美味しくて、脂の甘みを感じられながらもくどくなくもたれない、食べ続けても食べ飽きない、そういったことを意識してお肉を選んでいます。

―脂ではなく、肉本来の味わいを大事にされているんですね。

あと実は、うちでは「A5」という等級にはあまりこだわっていません。というのも、等級は美味しさのバロメーターではなく、サシがどのくらい入っているかを測るためのものです。脂よりもお肉の味わいを重視しているので、料理に合わせて「A4」や「A3」の牛肉を使っています。

―メイン料理であるステーキの写真を拝見しましたが、表面の焼き色はもちろん、切ったときの断面の色も絶妙でそそられました。火入れなどのこだわりを教えてください。

黒毛和牛は炭火との相性が良いので、特注のレンガ窯を使って炭火で焼き上げ、表面に炭の香りを付けて旨みを閉じ込めています。肉本来の味を味わっていただきたいので、味付けはシンプルに塩とわさびのみです。
ステーキのお肉は1種類のときもあれば2、3種類のときもあって、その日の仕入れで変わります。部位によっても美味しい火入れの加減が違うので、一番美味しい火入れのタイミングを見極めるように心がけています。

お肉の厚みは、ヒレのように柔らかくてみずみずしい部位には、口の中に入れたときに、厚みがあるのに柔らかいという感覚を楽しんでもらえるように、ごろっとした切り方で。逆に、噛み応えがある赤身は、何度も咀嚼しなければいけなくなってしまうので、薄切りにして、少ない回数で旨味を感じられるようにしています。

―お肉以外の食材はどのように選ばれているのでしょうか?

このご時世で控えていますが、今までは毎朝自分で豊洲などに行って魚を仕入れていました。最初は知り合いのお寿司屋さんと一緒に回らせてもらっていましたが、もう何年も付き合いがあるので、最近は電話やLINEを活用して、相談しながら購入しています。

やはりお肉だけだと赤い料理ばかりになってしまうので、他の食材を取り入れることで見た目の変化や季節感も出せるため、魚や野菜のメニューは大事です。実際、お肉と全く関係ない料理はお客様によって反応も様々ですが、喜んでいただける方が多いのでその反応を見るのは楽しいです。割烹スタイルだからこそいろいろな料理に挑戦できますし、それを楽しみに来てくださるお客様もいらっしゃるので、ここで料理をするやり甲斐にもなっています。料理のバリエーションも含めて、お肉の美味しさは他のお店に負けていないと思います。

4.料理人として今後の目標

大久保様が今後挑戦してみたいこと、目標などを教えてください。

一言で言うと、肉料理の幅をもっと広げていきたいですね。
「鮨 由う」「鮨 在」とお付き合いがあって、2020年3月に「鮨 在」とのコラボレーションイベントをやりました。肉料理と寿司をペアリングで楽しんでいただく内容で、お客様からも好評だったので、今年1月に2回目を開催しましたが、時世を考慮して先の開催は保留になっています。お寿司屋さんの仕入れや仕込みを見せていただけて、教えていただくこともあるので、こういった経験を通じてもっと自分の幅を広げていきたいです。

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料理長 大久保 丈太郎
1980年5月2日 福岡県生まれ
服飾専門学校卒業後、アパレルから飲食に天婦羅や割烹料理店を経て2019年から3年連続でミシュラン1つ星を獲得
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【編集後記】
お寿司屋さんをイメージしたカウンターとのことですが、私はそれに加えて、照明に照らされた段差の無い美しいカウンターが、まるでステージのようにも思えました。こだわり抜いた上質なお肉が、料理人の手によって目の前で多彩な料理に生まれ変わる様子は、まるでライブを見ているようなワクワクした気持ちにさせてくれることでしょう。
部位ごとの食べ比べだけでなく、調理方法による食べ比べなど、様々な食感や味わいを楽しめる「肉割烹 上」ならではの醍醐味を、私も体験してみたくなりました!

割烹・小料理

肉割烹 上

都営地下鉄大江戸線 六本木駅 2番出口より徒歩8分

20,000円〜29,999円

Mika Tsuboi

一休.comの宿泊営業アシスタントから編集部へ。ワインと一緒に、美味しいものを少しずついただくのが最高の幸せ。こぢんまりとしたフレンチやネオビストロがお気に入り。
最近は日本ワインにも興味を持ち、旅先で出会った好みのワインを自宅で愉しむのが日課。パンやスイーツなどにも目がなく、週末にはカフェやパン屋巡りをし日頃の情報収集も欠かさない。
・最近行ったお店:Restaurant Fermier/六雁/Varmen
・好きなお店:広尾 ぺりかん/RESTAURANT MAMA./LATURE
・得意ジャンル:ビストロ
・好きな食材:ジビエ/蛤/伊勢海老/キノコ

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