【速報】『ゴ・エ・ミヨ 2023』受賞者発表!グランシェフのインタビューをレポート

日本の豊かな食文化を発信するレストランガイドとして、毎年発刊されている『ゴ・エ・ミヨ』。日本での7刊目となる『ゴ・エ・ミヨ 2023』が、2023年3月15日に発売されました!日本版の歴代の受賞者には「日本料理 龍吟」山本シェフ、「HAJIME」米田シェフ、「L’évo」谷口シェフなど、今の料理界で注目されるシェフが名を連ねています。ようやく日常を取り戻しつつある昨今にふさわしい、2023年版で発表されたレストランとは?さっそくご紹介していきましょう。

『ゴ・エ・ミヨ』とは

グルメ大国フランス発、本格レストランガイドの2大勢力の一つ『ゴ・エ・ミヨ』。2人のフランス人ジャーナリスト、 アンリ・ゴ(Gault) とクリスチャン・ミヨ (Millau) が 1972 年に創刊したパリ生まれのレストランガイドブックです。評価本という形を取りながらも、レストランに寄り添う姿勢を重んじ、シェフたちからの信頼は厚いといわれています。特に「新しい才能の発見」に力を入れるという特長を持ち、ジョエル・ロブションやギィ・サヴォワのような気鋭のシェフをいち早く見出す、先見性に定評があります。日本では2017年より発刊されています。

『ゴ・エ・ミヨ』の評価は、現在展開している世界15カ国共通の定められた基準のもと「予約の電話から見送りまで」を評価し、レストランという舞台全体を支えるプロフェッショナルに注目します。評価は、20点満点中0.5点刻みの点数と、それに応じたトック(フランス語で「コック帽」の意)の数で行うものの、基本は、食べる喜びと感動を伝えることを使命と考えています。

『ゴ・エ・ミヨ 2023』は東北地方が加わり、世界的美食ガイドとして初の日本全国版!

2023年版では新たに東北地方が加わり、世界的な美食ガイドでは初の日本全国版へと発展。『ゴ・エ・ミヨ』の精神ともいえる「新しい才能の発見」や「その土地ごとの食文化“テロワール”」を中心に全47都道府県、501店舗のレストランをまとめた1冊となりました。

注目を集める「今年のシェフ賞」の他、ソムリエやサービス、生産者など、9つの賞、12名の受賞者インタビューが掲載されています。
(『ゴ・エ・ミヨ』については、こちらの記事もご覧ください:【極みのコラム】世界的な美食ガイド『ゴ・エ・ミヨ』の秘密に迫る:https://www.kiwamino.com/articles/columns/2567

『ゴ・エ・ミヨ 2023』受賞者の一部を紹介

2023年3月13日に発刊記念イベントが開催されました。受賞者発表や受賞シェフへのインタビューの模様を一部ご紹介します!

「今年のシェフ賞」

「日本料理かんだ」神田裕行氏(東京)

神田氏は、2022年2月に自らの店を虎ノ門ヒルズへ移転。建築家・杉本博司氏の創り出す和の空間で、70歳までの10年を1つの区切りと考え、引き算による「感性と味覚のぎりぎりのところで成立する繊細な日本料理」を追究。堪能な語学を活かし、日本料理を海外にも発信し、NPO法人「FUUDO」では料理人として食の未来を考えるなど、日本の料理界を牽引する存在であることが評価されました。

神田裕行氏の受賞コメント

「私はパリの板前割烹「TOMO」での料理長時代、フランス版/1988年発行の『ゴ・エ・ミヨ』にアジア料理の最高峰として掲載してもらったことがありました。ロブションさんやフランスの名だたる料理人と出会うきっかけになりましたが、当時の点数は1トックの14点。自分では何でもできると思っていましたが、どれだけ小さな頂を目標にしていたのかと感じ、日本に帰って勉強しようと決意しました。今回『ゴ・エ・ミヨ』で素晴らしい賞、良い点数をいただき、本当にありがとうございます。」

「明日のグランシェフ賞」

「明日のグランシェフ賞」は、確固たる基本技術の上に独⾃の料理世界を築き、優れた才能として⽇本の料理界を牽引することが期待される料理⼈へ贈られます。2023年は「楽・食・健・美-KUROMORI-」黒森洋司氏、「セザン」ダニエル・カルバート氏(東京)の2人の料理人に贈られました。

写真左:「楽・食・健・美-KUROMORI-」黒森洋司氏、写真右:「セザン」ダニエル・カルバート氏(東京)

「楽・食・健・美-KUROMORI-」黒森洋司氏(宮城)

黒森氏は、2011年の東日本大震災後、「料理人としてできること」を自らに問いかけ、仙台へ移住。復興支援にも努めながら宮城や三陸の産物を活かした独自の中国料理を提供し、全国からゲストを集めつつ、各地のシェフとも交流を深め、次世代の料理人育成にも熱意を燃やしています。

黒森洋司氏の受賞コメント

「今年から東北が掲載エリアに入り「明日のグランシェフ賞」という栄誉ある賞をいただき、とても光栄です。2011年3月の東日本大震災後に宮城に移住して12年になります。宮城には中国料理の素晴らしい食材が沢山あり、私の店では「今の宮城」を食べてもらいたいと思っています。宮城ならではの食材を沢山使って、ここでしか食べられない中国料理を作っていきたいと思います。」

「セザン」ダニエル・カルバート氏(東京)

カルバート氏は、全国の産地を訪ねて日本の風土と食材への理解を深め、ロンドン・ニューヨーク・パリ・香港で身につけた料理技術と、氏ならではの色彩感覚や精細な味覚を活かした料理で支持を得ています。日本の食材に新たな光をあて、フランス料理界に新風を吹き込む存在であることが評価されました。

ダニエル・カルバート氏の受賞コメント

「このような大変光栄な賞をいただき、ありがとうございます。いつも「セザン」にお越しいただいてサポートいただいているゲストの皆さん、チームの皆に感謝していきたいと思います。スタッフ全員で、より良い店作りに努めていきたいと思います。」

「期待の若手シェフ賞」

才能と情熱、技術が、今後の活躍を大いに期待させる新進気鋭の料理人に贈られる「期待の若手シェフ賞」は、「アシッド ブリアンツァ」児玉智也氏(東京)、「オーベルジュ オーフ」糸井章太氏(石川)の2名の料理人に贈られました。

写真左:「オーベルジュ オーフ」糸井章太氏(石川)、写真右:「アシッド ブリアンツァ」児玉智也氏(東京)

「アシッド ブリアンツァ」児玉智也氏(東京)

児玉氏は、フランス料理の基礎に、デンマークで学んだモダンノルディックの発酵を活かした料理で独創的な世界を創り出しています。コースを通して、発酵による「酸」と「旨み」で意表を突く料理展開を見せており、その溢れる才気が注目を集めています。

「オーベルジュ オーフ」糸井章太氏(石川)

糸井氏は、2022年7月、石川県小松市で、廃校になった小学校の校舎を活用する「オーベルジュ オーフ」のシェフに就任。近くの野山や河原で採取した食材も織り交ぜ、確たるフランス料理の基礎の上に、独自の里山キュイジーヌを生み出しています。料理のみならず、若いスタッフを率い、地域再生プロジェクトに取り組むリーダーシップも高く評価されています。

「トラディション賞」

その土地が育んできた伝統文化を守り、時に挑戦を試み、次世代へつなぐ知識と技を磨き続ける職人または料理人へ贈られます。

「とおの屋 要」佐々木要太郎氏(岩手)

佐々木氏は、どぶろく造りをきっかけに「稲作文化を掘り下げれば世界と戦える」と、在来米の「遠野1号」を無農薬無肥料で育て、醸した純粋を極めるどぶろくは、スペインの名店「ムガリッツ」などが採用し、世界で評価されています。また、オーベルジュでは、地元の田圃の畦道にあるような何気ない食材に、伝統の発酵などによる旨みを纏わせた料理で国内外の注目を集めています。近年は、米糠を使った酒造りにも取り組み、自然のままに育てた米を余すところなく使い、最高の酒を生み出すことに挑戦しており、佐々木氏の動きは、過度に技巧に走りがちな現代において、「伝統」(トラディション)を突き詰めた先にあるシンプルなものが、もっとも革新的であることを示しています。

「トランスミッション賞」

「トランスミッション賞」とは、培ってきた知識と技術を、時に国を超え、世代を超えてトランスミッションする(=伝える)ことに多大な貢献をされた料理人を表彰する賞です。

「レストランバスク」深谷宏治氏(北海道)

深谷氏は、バスクの人々が気軽に街歩きを楽しみながら飲み、食べる文化に感銘を受けて「函館スペイン倶楽部」を結成。また、サンセバスチャンが、美食を核に発展する姿を目の当たりにし「料理学会」を日本でも開きたいと、2009年に「世界料理学会in HAKODATE」を開催、実行委員会代表を務めています。料理人自身が取り仕切る学会は、2022年に10回目を迎え、日本の料理界での調理技術や情報の交換、交流の場として牽引してきた深谷氏の功績は高く、その大きな貢献に対し、この賞が贈られました。

授賞式には、スペシャルコラボレーションとして「ベストパティシエ賞」延命寺 美也氏&「ベストソムリエ賞」若林 英司氏によるスペシャルコラボレーションのデザートとドリンクが用意され、記念すべき会に華を添えていました。

2023年に行くべきお店とは?グルメを愛する「KIWAMINO」読者なら必ずチェックを!

プレス発表会は、2023年3月13日の「マスク着脱」が自己判断になった日に開催されたこともあり、徐々に日常に戻り心から外食を楽しめる日々が復活しつつあると実感しました。
「食べる喜び、感動を伝える」という『ゴ・エ・ミヨ』ならではの視点に、改めて食の可能性や楽しさの価値を再発見することができるでしょう。
『ゴ・エ・ミヨ 2023』は2023年3月15日(水)より全国の書店、オンラインストアにて発売。全47都道府県、501軒の名店の数々から、極みの美食時間を楽しんでみてはいかがでしょうか?

『ゴ・エ・ミヨ 2023』
3,000円(税込)
2023年3月15日より、全国の書店またはAmazon、楽天ブックスなどにて販売

Amazonはこちら:https://www.amazon.co.jp/%E3%82%B4%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%83%BB%E3%83%9F%E3%83%A8-2023-Gault-Millau-%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%9D%E3%83%B3%E7%B7%A8%E9%9B%86%E9%83%A8/dp/4344954548

ゴ・エ・ミヨ公式HP
https://jp.gaultmillau.com/

Airi Ishikawa

一休のメディア事業部長。日本全国を旅しながら、その道のプロにインタビューや取材をしています。休みには足をのばして国内ワイナリーを巡るのが好き。地産地消や、生産者に近い距離で食材や料理に向き合う「極みのシェフ」がいる店をご紹介します。
【MY CHOICE】
・最近行ったお店:銀座 しのはら / 南青山 まさみつ / サエキ飯店 / コートドール
・好きなお店:鮨 梢 / フランス料理 エステール / コンチェルト / エンボカ 京都
・注目しているお店:SeRieUX / プルサーレ / bistronomie Avin
・得意ジャンル:フレンチ / バー
・好きな食材:山菜 / 鴨

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