国が認めた日本一のてんぷら店「てんぷら近藤」が、東京・銀座にあります。店主は、23歳の若さで『てんぷらと和食 山の上』の料理長を任され、「天ぷらなら山の上ホテル」と言わせしめた、和食界の巨匠・近藤文夫氏。オバマ元大統領より先客の予約を優先させ、さらに名声を高めた傑物でもあります。
設えも素敵な「てんぷら近藤」。ビジネスやプライベートにかかわらず、普段からお世話になっている大切な方との会食にもぴったりのお店です。
伝統の江戸前てんぷらに、新風を吹き込む
近藤氏が独立したのは、91年。たゆまぬ努力と半世紀以上に渡る職人歴で磨きあげた技術は、江戸以来の守り抜かれたてんぷらに新たな息吹を与えました。
その一番顕著な例が、近藤氏が考案した『さつまいものてんぷら』です。
そもそも、伝統の江戸前のてんぷらは、魚介が中心。近藤氏は、そこに積極的に野菜を使い、常識を塗り替えました。従来の薄い輪切り状態のさつまいものてんぷらに疑念を抱いたのも、近藤氏ならではの視点です。
焼きいもは広く国民に愛されている。ならばてんぷらでも厚さ10センチで揚げてみたらどうか。
近藤氏は実に30分以上かけ、10センチもの厚さのさつまいもを油で揚げ、ホクホクとした焼きいも並みの食べ応えある、店の代名詞となったさつまいものてんぷらを作り上げたのです。
白木が美しいオープンカウンターから、巨匠の技術を堪能
専門誌で二ツ星にも輝く名店があるのは、銀座の細い路地を抜けた石造りの立派なビル。エレベーターを9階で降りると、紺地に白抜きで『てんぷら近藤』と書かれた暖簾が目の前に下がっています。
店の屋号を手練れの筆文字でしたためたのは、『鬼平犯科帳』など時代小説で名を馳せた、昭和の文豪・池上正太郎氏。店内には、江戸の趣きを大切にする近藤氏が“師”と仰ぐ池波氏の絵画も飾られています。
店内は、白木のカウンターが2棹のみ。
天種を衣にくぐらせ、油に注ぐ様子も全部、お客様からは丸見え。これは何も隠すものはないという、近藤氏の自信の表れでもあります。
カウンターの向こうでは巨匠自ら料理の腕を振るいます。
射すくめられてとても味わうどころではないと震えあがる心配は要りません。近藤氏の物腰は、実に穏やかです。
旬の野菜や魚を繊細な技術で味わう、贅沢なひとときを
前述のとおり、『てんぷら近藤』では野菜の天種が豊富。コースに含まれている食材は、揚げる前に近藤氏自らが産地などの情報を説明してくれます。
オーストラリア産のアスパラや熊本のばってん茄子など、その日に振る舞われる食材は、その日に仕入れた最高の旬のものだけ。カウンターの向こうには、それら野菜が静物のように飾られています。
海老を頼むと、身からではなく、カリカリに揚げられた頭だけ先に出てくるのも近藤流。タマネギやニンジンなど、よく見知ったはずの食材がまるで飴細工のように華やかに手がけられ、別物に感じられる見た目で供されるのも一興です。
そして、それら食材の味わいは、濃縮され、驚くべき甘味やうま味が引き出されているのです。ひと通り食べ終わったころには、その折々の季節の風味を一度に楽しんだことに気づき、自然と笑みが漏れていることでしょう。
そして、キスやメゴチ、アナゴなどのメインの魚介類は、すべて江戸前にこだわっているのも大きな特徴です。
中には、ウニと大葉の挟み揚げという変わり種が登場することも。ウニをてんぷらにするとどんな味になるのか、ちょっと想像してみてください。
こんなに繊細な味わいを持つ魚たちが東京湾に現代も生息している事実に、あなたはハッとすると同時に、日本の素晴らしさを再認識することでしょう。家庭では真似できないプロの揚げ方、天つゆの味わいは、あなたの人生で5本の指に入るおいしさのてんぷらとなることでしょう。
てんぷらの最高峰を、あなたも一度経験してみては?
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アクセス
住所 東京都中央区銀座5-5-13 坂口ビル 9F
※こちらの記事は2023年04月17日更新時点での情報になります。最新の情報は一休ガイドページをご確認ください。