伝統の技を受け継ぐ、東京にある天ぷらの名店5選

香ばしい香りとともに広がる天ぷらのサクサク感とネタの旨み。季節の素材を凝縮して衣で包んだ、日本を代表する料理が天ぷらです。一つのネタでも、職人によって異なる食感や味を堪能できるのが魅力。素材の選択、下処理、揚げ油のブレンド、揚げ方など、シンプルな料理工程には、それぞれの職人の知恵と技が詰まっています。今回は、名店で修業した職人がその技術を継承しながらも独創的な天ぷらを繰り出し美食家を魅了する、東京にある天ぷらの名店5軒を紹介します。

1.老舗の味を今に伝え続ける由緒正しき江戸前天ぷら

てんぷら 深町(東京都/京橋駅)

京橋駅より徒歩約1分の至便な一角にある「てんぷら 深町」。店主の深町正男氏は、お茶の水「山の上ホテル」内「てんぷらと和食山の上」で修業をスタート。27歳で和食部門の料理長に就任し、34年間務め上げ独立。2代目の一真氏、次男の純央氏とともに、老舗の味を今に伝え続けています。

天ぷらに使用するのは新鮮な太白胡麻油。食材一つひとつごとに油の温度を変えながら、野菜や魚介の持つ瑞々しい旨みを引き出します。天つゆはこだわりの島根県・太鼓醤油を使用。看板料理の大葉で巻かれた雲丹は、濃厚な甘さ。磯の香りがふわっと香ります。

美しい朱塗りの盆が配された、凛とした檜造りのカウンターで、由緒正しい江戸前天ぷらに舌鼓を打つ、口福な時間が流れます。

天ぷら

てんぷら 深町

東京メトロ銀座線 京橋駅 徒歩1分

20,000円〜29,999円

2.注目の若手が表現する“衣を味わう天ぷら”

天ぷら浅沼(東京都/日本橋駅)

天ぷら店の激戦区、日本橋。「天ぷら浅沼」は日本橋駅より徒歩約1分のビルの6階に店を構えています。店主の浅沼努武氏は、銀座の名店「銀座 天一」などで修業を積んだ後に独立。“衣を味わう天ぷら”を信条に掲げる注目の若手です。

こだわるのは食材と衣との一体感。しっかり空気を含み、ツノが立つぐらいの固さに仕上げて衣の軽さを表現。大香胡麻油と太白胡麻油2種類をベストの割合でブレンドし、素材ごとに最適な温度を調節するなど緻密な仕事が光ります。店主が信頼する仕入先から入手する野菜にていねいな下処理を行い、水分量を調整することで、香り・食・味、3拍子そろった天ぷらを仕上げてファンを魅了します。

田舎の古民家のような居心地よい雰囲気のなか、全国各地から選び抜かれた銘酒とともに、素材と衣の一体感を満喫してみてはいかがでしょうか。

天ぷら

天ぷら浅沼

銀座/東西線 日本橋駅 徒歩1分

3.食材ごとの最適な調理法で旨みを引き出す

天冨良 いわ井(東京都/銀座駅)

銀座駅より徒歩約5分、新橋からもアクセスのよい立地のビル6階に位置する「天冨良 いわ井」。店主の岩井義郎氏は「銀座 天一」で、17年間研鑽を積み独立。自ら吟味した魚介中心の江戸前スタイルに、旬の野菜を合わせた12~15品からなる一期一会のコースを楽しめます。

それぞれ最適な調理法で、その食材ならではの美味しさを引き出した一品一品。なかでも、ぜひ味わいたいのは、試行錯誤の末生まれたという、濃厚な旨みと風味が広がる雲丹のみを揚げた看板メニュー。ワイン好きの店主が厳選し、ソムリエ役の女将さんがセレクトする一本が天ぷらの美味しさを引き出します。

会話も弾む温かな雰囲気のなか、店主の追求する奇を衒わない「まじめな味」を堪能してください。

天ぷら

天冨良 いわ井

東京メトロ銀座線・丸ノ内線・日比谷線 銀座駅 B7出口より徒歩5分

30,000円〜39,999円

4.素材一つひとつの持ち味を最大限引き出す絶妙な技

清壽(東京都/築地駅)

築地駅から徒歩約3分、築地本願寺近くにある「清壽(セイジュ)」。店主・清水良晃氏は、かつて赤坂にあった一つ星の名店「楽亭」出身。師から継承した技術をベースに、独創性あふれる天ぷらを生み出し、食通を魅了しています。

豊洲市場近接の立地を活かし、天ぷらには鮮度にこだわり抜いた魚介類や無農薬・有機栽培の野菜を使用。手間暇かけて下処理を施します。使用する太白胡麻油を一組ごとに替え、素材一つひとつの持ち味を最大限引き出す技は見事。

絶妙な火入れで揚げた天ぷらは、素材の旨みが口のなかに広がります。衣は軽く繊細、レアに仕上げた身の甘さは絶品。天ぷらに合わせるワインも充実。四季の情緒を堪能できるコースです。

天ぷら

清壽

東京メトロ日比谷線 築地駅 徒歩3分

20,000円〜29,999円

5.旬鮮素材を軽い口当たりに揚げた体に優しい天ぷら

天ぷら 逢坂(東京都/虎ノ門駅)

虎ノ門駅より徒歩約7分、黒壁にえんじの暖簾が瀟洒な「天ぷら 逢坂」。店主・大坂彰宏氏は神田「天政」や「天麩羅 つじ村」などで修業し、2001年に独立しました。綿実油とゴマ油をブレンドして軽い口当たりに仕上げる、体に優しい天ぷらが女性にも支持されています。

天ぷらに大根おろしをのせ、レモン汁とともにパキスタンの岩塩を振るのが、天ぷらの味を引き立てるおすすめの食べ方。まろやかな味わいが広がります。春には山菜、初夏には稚鮎、秋には和栗の天ぷら、と季節を感じる天ぷらも人気です。

樹齢200年の杉カウンター席でゆっくりくつろぎながら、選りすぐりのワインや日本酒とともに、ひと味違う天ぷらを楽しむことができる一軒です。

天ぷら

天ぷら 逢坂

東京メトロ銀座線 虎ノ門駅 徒歩7分

20,000円〜29,999円

名職人のもとで修業を積んで技術を磨き、独立後は、自分の個性を活かして新しい天ぷらの世界を創り出している魅力的な店をご紹介しました。進化する天ぷらの味を体験してみてください。

※こちらの記事は2024年11月07日作成時点での情報になります。最新の情報は一休ガイドページをご確認ください。

Miki D'Angelo Yamashita

コロンビア大学・パリ政治学院修士。新聞社を経てフリージャーナリスト。専門は別だが、趣味が高じて食担当記者に。延べ3000人料理人インタビュー、約30カ国で食関連を取材。料理本も多数編集。

【MY CHOICE】
・最近行ったお店:未在 / 晴山 / レヴォ /茶禅華
・好きなお店:ギ・サヴォワ / Restaurant KEI / 祇園さゝ木 / 宮坂
・自分の会食で使うなら:ル・ブルキニオン / ラルジャン / 乃木坂しん / 蕎麦おさめ
・注目しているお店:お料理ふじ居 / 日本料理 研野 / ELEZO ESPRIT
・得意ジャンル: スイーツ
・好きな食材:麺類

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