食通が選ぶ2023年のベストレストラン マッキー牧元氏編

日々様々なレストランを巡る食通が、本当に好きなお店とは?今回お話を伺ったのは、数々のメディアに出演・執筆し、年間700食以上を食べ歩くマッキー牧元氏。そんな牧元氏から、東京を中心に2023年のベストレストランをジャンルごとに伺いました。どのお店も一度は行きたい、常連になりたい素敵なレストランばかり。早速チェックしていきましょう。
(記事掲載時点の情報となります。詳細は公式サイトなどで事前確認することをおすすめします。)

ご紹介してくれるのは……

マッキー牧元氏
「味の手帖」編集顧問)。国内、海外を問わず、年間700食ほど旺盛に食べ歩き、雑誌、テレビ、ラジオなどで妥協なき食情報を発信。近著に「超一流サッポロ一番の作り方」(ぴあ)がある。

【東京・日本料理のお気に入り店】

1. 味幸(東京都/新富町駅)

「京味」で長らく修行された大将が、去年10月に開店した。「京味」の料理と精神を汲みながら、独自の世界を展開されている。なにより肩に力が入らず、自分を消して料理に向かっている姿が美しい。「胡麻豆腐とゴマだれ」の豆腐は、浅く煎って、モチっとした食感を生み出し、上にかける胡麻ダレは、深く煎って香りを生み出す。

「茄子と味噌に鰹節」。焼茄子に味噌を塗り、上に削りたての鰹節をかけた一皿。「京味」ではウニだったが、ここでは鰹節に変えることで、茄子の甘みと味噌の旨味、鰹節の香りが織りなす空間がどこまでも自然で、心が座る料理となっている。まだお若いながら緩急を巧みに取り込んだ料理に充足させられる。

2. Auberge TOKITO(東京都/立川駅)

立川市にできたオーベルジュ内に位置するの割烹料理店。総料理長は「京都吉兆 嵐山本店」出身で、欧州で和食としては初めてミシュラン二つ星を獲得した「U M U」の料理長であった石井義典氏。日本人でありながら長らく海外にて、和食を翻訳してきた感性が素晴らしい。日本料理の新たな可能性を伝える、刺激的な料理に出会える。

例えば「Surf & Turf No.1」は、藁焼きしたシビマグロの刺身にフォンドヴォーのソースを合わせた一皿。生マグロと動物性のソースとの出会いに驚かされるが、見事な相性に感銘する。あるいは「修学院離宮」は、桂むきした胡瓜に煮込んだ鰻と白和えを添えた一皿。うなきゅうと白和えの要素を一旦分解し凝縮されている。ワイン、日本酒を織り交ぜたぺアリングも素晴らしい。

https://www.aubergetokito.com/

【東京・中華料理のお気に入り店】

3. 飄香 広尾本店(東京都/広尾駅)

都内にて「老四川 飄香」を展開されている井桁良樹シェフの新店。長年研究され再現されてきた古典食文化を元に、新しい料理生みだす。古代文化に基づきながら、唯一無二の四川料理がいただける。その料理には、四川料理の未来があり、日本が中国に誇れる料理である。

例えば「琵琶」は、“泡菜(四川省の漬物)”をテーマにした、中国の弦楽器・琵琶に見立てたボタン海老の料理である。ウドとパプリカの泡菜の上に、泡菜の液でマリネしたボタン海老をのせ、オイルで乳化状にまとめた白いシートを琵琶形状にしてかけた、美しい一皿。13皿の料理はいずれも中国料理通でも出会ったことがない料理であり、井桁シェフの情熱とロマンが生み出した、華麗で奥深い味わいに陶酔する。

四川料理

飄香 広尾本店

東京メトロ日比谷線 広尾駅 1・2出口より徒歩約5分

20,000円〜29,999円

【関東・スパニッシュのお気に入り店】

4. anchoa(神奈川県/鎌倉駅)

代々木八幡で「アルドアック」をやられていた酒井涼シェフが、鎌倉に移転してやられた店。前の店ではモダンスパニッシュと郷土料理の違う側面をやられていたが、今回はより郷土料理を軸に、展開する。鎌倉野菜と「さかな人」として知られる長谷川大樹氏の魚を使った料理に息を呑む。

細胞が生きているかのような「サワラのフライ」は、その優しい甘みにアーモンドソースの甘味と白アスパラのミネラルを添える。また鱧は、軽く燻して、生ハムの骨と鱧の骨でとったダブルコンソメの深い旨味を抱かせる。優しさとたくましさを感じさせる「白いんげん豆と猪、椎茸の煮込み」や、魚介の旨味をだけを吸わせたパエリアなど。この土地の力を濃縮させた料理に、圧倒させられる。

スペイン料理

anchoa

JR、江ノ島電鉄線 鎌倉駅 徒歩3分

12,000円〜14,999円

【その他、関東以外でよかったお店・オーベルジュなど】

5. JIMGU/ENOWA YUFUIN(大分県/由布院駅)

由布院に今年誕生したラグジュアリーホテル「ENOWA YUFUIN」のレストラン。“ファーム・ドリブン”をテーマに、ホテル開業の3年前から自社畑を作り有名農家の指導によって野菜を作る。シェフはニューヨークにあるミシュラン二ツ星レストラン「ブルーヒル(Blue Hill at Stone Barns)」などで修行したチベット人のタシ・ジャムツォ氏。

代表作の一つ「トマトのタルタル」は、コンフィ、ピクルス、セミドライ、生が、叩かれ、切られ、一つにされる。多数の酸味や甘み、旨味が絡み合う味は、今まで知らなかったトマトの世界が広がっている。このようにトマト、ナス、胡瓜、じゃがいもなど、日常で食べているものの新たな魅力を発見する感動がここにはある。野菜料理だけではない。何気ないような料理に込めた、熱情と精緻さが心を動かす。
※レストラン利用は宿泊者のみ※

https://www.ikyu.com/00002995/

6. エレゾ エスプリ(北海道/豊頃町)

荒涼たる海を望む十勝平野の丘に佇むレストラン。長年狩猟、生産の家畜・家禽、解体、加工、飲食店という一連の流れで活動を続けてきた食肉料理人集団の理想的レストラン。血の一滴も無駄にしない精神のもとに作られた料理は清く、胸を打つ。コースは、甘みも酸味も内包した、深く清廉された味わいがする鹿のコンソメで始まる。

純粋さを感じる綺麗な味に唸るシャルキュトリー類。グイグイと音が立つような筋繊維をもち、香りが濃いシャモの料理。肉汁が湧き出るとはこのことだと知る、放牧豚の料理。そしてスペシャリテの「鹿肉のロースト」で終わる。そこには味わいより、命にのしかかれた感じがあり、体に命が満ちて行く幸せがある。

https://esprit.elezo.com/

いかがでしたでしょうか?数多の名店に通い、味覚の経験値が国内随一な美食家が選ぶ2023年のベストレストラン。どれも素敵なお店ばかりです。ぜひチェックしてみてくださいね!

※こちらの記事は2024年02月10日更新時点での情報になります。最新の情報は一休ガイドページをご確認ください。

マッキー牧元

「味の手帖」編集顧問。 国内、海外を問わず、年間700食ほど旺盛に食べ歩き、雑誌、テレビ、ラジオなどで妥協なき食情報を発信。近著に「超一流サッポロ一番の作り方」(ぴあ)がある。

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