今回は、タベアルキスト・マッキー牧元がおすすめする、東京都内にあるワインと一緒に楽しめるビストロを4軒、ご紹介いたします。
目 次
1.40数種のフランス郷土料理が笑顔を呼ぶ
マ・キュイジーヌ(東京都・六本木駅)

「マ・キュイジーヌ」は「ラ・ピッチョリー・ドゥ・ルル」や「白金 シェ・トモ」で料理長をやられていた、池尻陵介シェフの店。ブーダンノワール、ブイヤベース、カスレ、羊のクスクス、バラ肉のプティサレなど、フランス郷土料理が、40数種も並ぶ。
「アンドゥイエット」は内臓の香りが溢れ出して笑顔を呼び、フロマージュ・ド・テットたっぷりのコラーゲンの旨味をラビゴットソースの酸味が受け止める。「コックオーヴァン」は、現代風に軽く、赤ワインソースの酸味のキレがいい。一人で作られているのだが、手際よく提供されるのも素晴らしい。お値打ちのワインをぐびぐびと飲み、デセールを食べ、食後酒も飲んで、酔いに浸る。そんな食いしん坊のためのビストロである。
2.東京フランス料理の老舗格。「誠実」という味が染みた、堂々たる料理を味わう
ビストロ ボンファム(BISTRO Bonne Femme)(東京都/溜池山王駅)
「ビストロ ボンファム」は、創業1983年、東京フランス料理界の草分け的存在の店である。「鴨フォアグラのコロッケ」「舌平目のボンファム」「シャラン産鴨胸肉のロティ、グリーンペッパーソース」など、ビストロ料理ではない、堂々たるフランス料理を、ビストロのカジュアルな雰囲気と価格で味わえる希少な店である。
例えばスペシャリテの「牛テールの赤ワイン煮」は、現れた瞬間からして、神々しい。肉を切ろうとすれば、はらりと崩れ、ソースに落ちる。舌に乗れば、混沌となったうまみが広がっていく。肉の滋味、灯を照らす太い酸味、ワインとフォンが境目なく溶け合った凛々しいうまみ。濃厚でいながら軽やかさがあり、圧倒感がありながらエレガントである。すべての料理が、富山勉シェフの「誠実」という味が染みている。
3.パリのビストロの香りと量を、そのまま東京で味わえる幸せ
アン ファス(東京都・人形町駅)
「アン ファス」は、パリの人気ビストロ「ル・コントワール・デュ・ルレ」などで働かれた、亀山知彦シェフの店。料理の味と香り、量とともにビストロ食文化を実直に伝える店。どの皿も2人でシェアしても多いほどの量があるので、大食いでも、2人なら前菜2種、主菜1種が適量。
テリーヌは、フランス風にナイフを突き刺して登場する。10センチメールほどの厚さに切って出す、テリーヌ型ブーダンノワールは、豚の頭の各部位、つまりテット・ド・フロマージュとブータンを合体させ、ピマンドエスプレットの辛味を混ぜた料理で、ブーダンノワールよりは味が優しい。鴨肉コンフィ、太いトゥールーズソーセージ、分厚い豚肉のコンフィが入ったカスレも、量を食べなくてはわからぬ美味しさがある。タルトタタンも素晴らしいのでおすすめである。
https://www.instagram.com/en_face_ningyocho_/
予約は、メールにて受付(enface.ningyocho@gmail.com)
4.王道ビストロ料理のダイナミズムを痛感しに出かけよう
TROMPETTE (トロムペット)(東京都/小伝馬町)
ビストロ料理は、ある程度の量や厚さ、高さがないとその本領を発揮しない。「TROMPETTE (トロムペット)」は、その正義を心得た正統なビストロである。テリーヌの、ドーバーの断崖のごとき絶壁は、食欲を喚起し、その厚さゆえの豊満を生む。またモンブランの如きにそびえたつタルタルを崩し、口いっぱいに頬張ってこそ、肉のたくましさと甘さは爆発する。鞍下肉は、ピレーネ山脈の如く連なり、口に運ぶ興奮があってこそ、仔羊の情熱はほとばしる。
あるいはふっくらと膨らんだ雄大な、鳩のパイ包み焼きとが艶々と輝くソースは、切った瞬間の圧倒から味は始まり、口に運べば、鳩の鉄分と滋養が、パイの香ばしさとソースのうま味とが渾然となり、脳幹を刺激する。さあ、フランス料理のダイナミズムを痛感しに、出かけよう。
https://www.instagram.com/trompette170518/
今東京のビストロシーンは熱い。老舗格の店から近年できた店まで、フランスにおけるビストロ料理の熱気を伝える名店で、醍醐味を楽しもう。
※こちらの記事は2024年12月05日更新時点での情報になります。最新の情報は一休ガイドページをご確認ください。