一度は訪れたい、和食の名店 福岡編

九州の中で最も人口が多い県、福岡。豊かな山の幸と海の幸が手に入りやすい恵まれた立地であるため、昔から飲食店が集まり、国内外はもとより海外からも多くのゲストが訪れています。東京や大阪なども飲食店が集中していますが、福岡ならではの魅力に富んだお店が日々、切磋琢磨しています。今回は福岡県内にある、一度は訪れてみたいと思う和食の名店を5軒、ご紹介いたします。

1.繊細な調理技法でもてなす、色とりどりに輝く四季の恵み

お料理 佐藤(福岡県/小倉駅)

お料理 佐藤の店内

小倉駅の目の前にあるセントシティから至近という、好立地にお店を構える「お料理 佐藤」。石畳の凛としたアプローチを歩いて行くと、入口があります。内装は心地良い緊張感の和の空間で、木目が綺麗に浮かび上がったコの字のカウンターがお出迎え。個室の用意もあり、こちらにも6名まで利用可能な白木の小さなカウンターが設えてあります。

店主・佐藤好美氏は、食材の美味しさを最大限に引き出す料理人として、国内の多くのゲストから高い評価を集めています。豊かな自然に囲まれた地の利を活かし、確かな目利きで九州産の食材を中心に入荷。匠の技で四季折々の美味しさを味わえる料理が、次々と供されます。

器にも造詣が深く、店内には佐藤氏が蒐集してきた京焼、備前焼、バカラなどの逸品が並びます。料理に合うお酒も揃っており、特に人気が高いのが、2日間ほど竹の器に移し替えて風味付けがされた福岡の日本酒「寒北斗」。穏やかな味わいにほんのり竹の香りが漂い、料理を上品に引き立ててくれます。

日本料理

お料理 佐藤

JR線 小倉駅 徒歩2分

20,000円〜29,999円

2.福岡でこそ表現できる日本料理の可能性を追求した、店主のおもてなし

御料理 古川(福岡県/博多駅)

筑前国一之宮 住吉神社のほど近くという、博多区の落ち着いたエリアにお店を構える「御料理 古川」。細い路地を抜けた先、奥まったマンションの1階に、涼やかな藍色の博多織暖簾がたなびいています。店内に入ると温かみのある土壁に、桜一枚板のカウンターが美しく映え、日常を忘れて安らかな気持ちに。

個室は2部屋あり、間仕切りを取って1部屋にすれば最大10名までの利用も可能。ご家族でのお祝い事などにぴったりです。「お料理が美味しいお店は、探せばいくらでもあります。だからこそ当店を選んでくださったお客様に最高のおもてなしをし、愛されるお店を目指していきます」店主・古川誠氏は、そう語ります。

食材は柳橋市場をはじめ、厳選した旬の素材を生産者からも直接仕入れます。料理を通して福岡の、ひいては九州のものづくり文化や職人の思いまでも伝えたい。そんな心意気は唐津焼の器や久留米籃胎漆器だけでなく、大川組子、博多曲物、博多織と、至るところに散りばめられています。

懐石・会席料理

御料理 古川

JR線 博多駅 徒歩15分

15,000円〜19,999円

3.人と人との縁が紡ぐ、懐石料理と鮨の魅惑の融合

一本木 石橋(福岡県/西鉄平尾駅)

福岡の繁華街である薬院からすぐ、高級住宅が建ち並ぶエリアにひっそりとお店を構える「一本木 石橋」。数寄屋造りの一軒家は、少し時を巻き戻したようなノスタルジックな風情が。格子戸を開ける際に手が感じる、ほんの少しの重さと軽やかな音が、心に平穏をもたらしてくれます。

1階はカウンター席のみで、目の前で刺身をひく姿などの調理風景を楽しむ事ができます。2階は個室となっており、会食や接待などにうってつけです。店主・石橋康孝氏が大切にしている事は、人との縁。食材をはじめ、お店で扱う物はすべて、自身と縁のある物にこだわっています。

特徴的なのが、おまかせの懐石料理コースの流れの中で鮨が提供される事です。締めの御飯の前に、コースの中盤で本格的な握りを堪能できるというのは、懐石料理と鮨の名店で修業を重ねてきた石橋氏ならでは。シャリの上品な酸味が、タネが持っている素材自体のうま味を引き出しており、コース後半へ向けて気分が高揚していくのを感じる事でしょう。

懐石・会席料理

一本木 石橋

西鉄天神大牟田線 西鉄平尾駅 徒歩6分

20,000円〜29,999円

4.吸い寄せられるようにグルマンたちが集う、薬院の隠れ家日本料理店

千翠(福岡県/薬院駅)

薬院駅から少し歩いたエリア、薬院公園を越えた路地裏にお店を構える「千翠」。グレーを基調としたシックな建物の2階、一見通り過ぎてしまいそうな佇まいは、大人の隠れ家感が漂っています。店内に入ると、暖色の照明が包み込むようにカウンター席を照らす、安堵の調光。

熊本県・荒尾の粗めの陶土で焼かれた小代焼や、独特の釉薬で力強く絵付けされた沖縄県の壺屋焼など、素朴ながら味わい深い食器が揃っている事が、空間に絶妙の侘び寂びをもたらしています。店主・松尾英樹氏はフランス料理の門を叩き、料理人となりましたが、渡欧中に日本の文化を再考。日本人として和食を継承し、発信する道へと舵を切ったという、異色の経歴の持ち主です。

食材は玄界灘、豊前、唐津などの近海で揚がった魚介類や、九州産を中心とした地野菜を使用。福岡ならではの、そして「千翠」ならではの日本料理を提供するために、探求の歩みは止まる事がありません。

割烹・小料理

千翠

市営地下鉄七隈線 薬院駅 徒歩5分

12,000円〜14,999円

5.実直な料理と誠実なおもてなしが奏でる、茶懐石の真髄

茶懐石 中伴(福岡県/天神南駅)

西中洲のビルの2階、周囲の賑わいから切り離されたような静謐な空気を醸し出す「茶懐石 中伴」。緊張感のある張り詰めた空間ではなく、そっと飾られた一輪の花のように、優しさと清らかさが同居するカウンター席。茶室をイメージした設えと聞いて納得。心が自然に寛いでいくのを感じます。

「気張らずに楽しんでほしい。お子さんも歓迎ですし、とにかく食の時間を楽しんでいただければ」と語るのは、この道50年を越えた店主・中川敏行氏。炊き合わせにせよ煮物椀にせよ、いずれも出汁や食材の滋味が引き出され、優しくも力強い味わいに満ちています。研ぎ澄まされたシンプルな仕立て、そこにはあらゆる面で手間を惜しまない、中川氏の料理哲学が凝縮されています。

“基本に忠実に”という事を、どれだけ徹底的に追求してきたか。出汁の一滴、米の一粒にまで宿る1人の料理人の矜持が、ゲストに主客一如を実感させるような、誠実なひとときと出会わせてくれる。茶懐石の真髄を感じられる事でしょう。

懐石・会席料理

茶懐石 中伴

福岡市地下鉄七隈線 天神南駅 徒歩4分

15,000円〜19,999円

いかがでしたでしょうか。今回ご紹介したお店に福岡近県の方のみならず、国内外から多くのゲストが足を運ぶ理由が、お分かりいただけたのではないでしょうか。“この土地で、この設えで、この料理人がおもてなしをしてくれるからこそ成立する”という世界が、確かに存在します。そんな唯一無二の素晴らしいお店を、これからも皆様に沢山ご紹介していけましたら幸いです。

※こちらの記事は2024年12月05日更新時点での情報になります。最新の情報は一休ガイドページをご確認ください。

橋本 恭一

美味しいお酒とお料理を求め続ける 都内屈指の胃袋&肝臓フル回転系ライター。 和洋中ジャンル問わず、王道の古典料理から イノベーティブ系のお料理にどんなお酒が合うかを ひたすらに追い求めており、食前食後などのバーの 楽しみ方も皆様にお伝えしてまいります。
【MY CHOICE】
・さいきん行ったお店:ナスキロ/サエキ飯店/赤坂 らいもん/鮨 みうら
・好きなお店:レストラン キエチュード/ラ クレリエール/私厨房 勇/トラットリア ダディーニ
・自分の会食で使うなら:くろ﨑/Les Chanterelles/日本料理 晴山/の弥七
・得意ジャンル:フレンチ/イタリアン/バー
・好きな食材:サルミソース/真鱈の白子/生トリ貝

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