若草山を背景に、東大寺の旧境内跡地に建つ邸宅のような美しい佇まい。庭越しに東大寺の自然を借景とする奈良らしいロケーションに、その革新的世界観の料理で話題を集めるレストランがあります。

国内はもとより、スペイン・バスク地方の有名店でも修行を重ねたシェフが、自由な発想で奈良の地の食材を活かし、伝統との融合を図りながら “イノベーティブ”(革新的)な料理を振る舞う注目の一軒「アコルドゥ」をご紹介します。
かつて奈良市内にあった趣あるレンガ造りの建物で、“モダンスペイン”という新しいスタイルと概念に基づいた料理が好評を博し、2008年のオープン以来愛され続けてきた「アコルドゥ」。しかしながら大正時代建立であった建物の老朽化により、2014年に惜しまれつつも一度閉店しました。その後2016年、奈良公園の一角を成す東大寺の旧境内跡という歴史ある地を舞台に、待望の再開を果たします。
現店舗はシンプルで洗練された外観の2階建て。ガラス張りの未来的な厨房や清々しい庭の緑を望むサロン、美しい個室にバンケットなどを擁する店内は、コンテンポラリーでミニマルな設えの中に心落ち着く温かみを感じさせます。
広々とした庭に面するダイニングスペースは明るく、開放感もたっぷり。隅々にまで美意識の行き届いた空間そのものに出会うことも、こちらのレストランを訪れる楽しみの一つといえそうです。
シェフの川島宙(ひろし)氏は、東京生まれ。大阪の調理師学校卒業後に「ホテル西洋銀座」に入社するなど、関東と関西で複数のホテルやレストランを経験しています。その後33歳の時には、新たな方向性を求めるべくスペインへ。美食の街、バスク地方サン・セバスチャンで世界のベストレストランの一つとも称される「ムガリツ(Mugaritz)」に入店し、多大な影響を受けたそう。
そして前述のように2008年、パティシエの経歴を持つマダムの友紀氏と共に「アコルドゥ」を開店し、2016年の移転オープンを経て現在に至ります。また大阪市内と奈良県内に、系列店「ドノスティア」と「アバロッツ」を運営しています。
「アコルドゥ」で楽しめる料理は、スペインやフランスといった枠にははまりきらないイノベーティブさが特徴。奈良の風土そのものといえる地の食材を伝統と融合させながら、シェフ独自のセンスと世界観で振る舞う料理が鮮烈な印象を残します。
前菜からデザートまで、奈良の季節の移ろいを繊細に楽しめるコースには、さらなる美味しさを味わえるワインのペアリングも別途用意されています。
「アコルドゥ(akordu)」とはバスク語で“記憶”の意。奈良の地に根ざし、一度人々の“記憶”の中の存在となった期間を経て、また新たな時間を紡ぎ始めました。素材の作り手や生まれた背景にまで思いを寄せ、人と素材と料理に向き合う。単なる“地産地消”には留まらない真摯な情熱と姿勢が織り成す、独自の世界観に出会える珠玉の一軒。わざわざ奈良にまで足を延ばしてみたくなる、魅力にあふれたレストランです。
※こちらの記事は2023年04月17日更新時点での情報になります。最新の情報は一休ガイドページをご確認ください。