インタビュー|

「アサヒナガストロノーム」朝比奈悟氏に聞く、ロブション氏から学んだおもてなしの大切さ

2018年10月、ヨーロッパの街並みを彷彿とさせる日本橋・兜町の一角に誕生した「ASAHINA Gastronome/アサヒナガストロノーム」。 2019年11月には、有名ガイドブックで一つ星を獲得しました。代表を務めるのは、ジョエル・ロブション氏と13年間ともに働き、「ラ ターブル ドゥ ジョエル・ロブション」の料理長を7年間歴任した朝比奈悟氏です。今回は独立までの経緯や、2年目に向けての想いをお伺いしてきました。

長いコック帽に憧れてフランス料理の世界へ

―まずは朝比奈シェフが料理人を志したきっかけについて教えてください。

もともとは、高校時代にレストランでアルバイトをしていた事がきっかけです。そこで長いコック帽をかぶったチーフの格好良さに憧れて、洋食の中でもフランス料理の道を志すようになりました。高校卒業後は料理人として生きていこうと、決まっていた仕事の内定を取りやめて「ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテル」へ入社しました。

―ホテルの場合、複数のレストランがありますよね。希望通り、フランス料理への配属は叶ったのでしょうか。

当時は18歳と若かったですし、希望なんて偉そうなことは言えません。まずはオープニングスタッフとして入社するのが優先でしたね。
最初はイタリアンレストラン「ラ ヴェラ」に配属となりました。普通は1つのセクションに5年から6年ほど務めるのが一般的ですが、僕はだいぶ変わり者だったので各セクションを1年から1年半で異動になって。辞めるときには、全セクションを経験することができました。

―1番思い出深かったセクションはどこですか?

入社から5年後に念願のフレンチレストラン「アジュール」で副料理長、最終的にはメインキッチンの料理長を務めることになりました。若かりし頃に料理長ができたことは、自分の中では貴重でとても良い経験になったと思っています。

一流料理人、ジョエル・ロブション氏との出会い

―その後、「ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション」へ副料理長として入社されています。ロブション氏との思い出などがあれば教えてください。

僕はロブションの中でも、本当にいろいろなお店を経験させてもらいました。最初は六本木の「ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション」、それから日本橋の「ル カフェ ドゥ ジョエル・ロブション」のオープニング、その後丸の内の「ラ ブティック ドゥ ジョエル・ロブション」の2店舗を統括。最後は恵比寿の「ラ ターブル ドゥ ジョエル・ロブション」で料理長と、非常に恵まれた環境で働かせてもらうことができました。

日本橋と丸の内を統括するとき「ガレットを出そう」という話になり、ロブション氏から「一流のガレットを身に付けるために、本場のブルターニュに行ってこい」と……。僕はその4日後にはフランスへ飛び、ブルターニュの専門学校に入学。卒業後も現地のレストランで研修を受け、結局1か月くらい滞在しました。
思い出というか、やはりロブション氏の鋭い眼光はいまだに脳裏に残っていますね。

―朝比奈シェフのスペシャリテにリンゴを使用したデザートがありますが、フランスでの修業経験も大きいのでしょうか。

ポムダムール マスカルポーネのムース、エピス風味のリンゴのキャラメリゼ、バニラとカルバドスのアイスと共に

そうですね。フランスでは料理人だからデザートは作らないということはなく、料理はもちろんデザートも作れるのが当たり前なんです。
日本はまだ、料理人は料理だけ作っていればいいみたいな考え方も少し残っている気がします。僕はルカフェにもいたのでデザートもよく作っていましたし、「そうじゃないんだよ」という気持ちでデザートにも積極的に取り組んでいますね。

準備に1年の歳月をかけ、満を持して独立

―その後、ご自身の名前を掲げた「アサヒナガストロノーム」をオープン。独立までの経緯や思いがあれば教えてください。

やはり料理人である以上、自分のお店・自分の料理を出したいというのは誰しもが思うことです。しかしガストロノミーレストランはそれなりのスタッフと人数も必要なので、ただ「やりたい」という想いだけではできません。独立のチャンスをいただいてから自らスタッフを集めて、なんとかこのお店をオープンすることができました。

―日本橋・兜町を選ばれた理由は?

実は他に決まっていた場所があったのですが、土壇場で流れてしまって。再度一から探し始めてこの場所に決まるまで、結局1年くらいかかりました。
決め手は、店の造りと雰囲気。我々のようなレストランは食事のためにここまで来てくださるお客様ばかりなので、駅からの距離や立地は関係ないと思ったんです。

まずはグランメゾンとしてレセプションを設けるためのスペース、そして業者さんが裏から入れるバックヤードがあるのかを確認しながら探しました。
あと気に入っているところは、目の前にある東京証券取引所の石畳の壁ですね。夜になると人通りも落ち着いて、非常にノスタルジックでパリの郊外のような雰囲気になるんです。

―内装もスタイリッシュながら暖かみのある空間で、とても素敵です。

一番のポイントはモダンすぎずクラシックすぎず、その中にエレガントさを醸し出した空間です。色はグレーとシルバーと白の3色で統一しています。インテリアには世界を代表するデザイナー、マルセル・ワンダース氏デザインのシャンデリアを選びました。

カトラリーもたまたまクリストフルへ行ったら、ワンダース氏がプロデュースした「ジャルダン・エデン」シリーズを見つけて。「これにしよう!」と直感で決めました。プレザンタッションやパン皿まで、すべてクリストフルのものです。

―ご自身のお店を持たれて代表としてお客様をおもてなしされていますが、その中で大切にされていることはなんですか?

レストランは料理だけでなくサービスの振る舞いも大事だと思っているので、サービスのメンバーには感謝しています。また自分が把握できる席数にしたので、なるべくテーブルを訪れるようにしていますね。

―朝比奈シェフが提案する、フランス料理の楽しみ方があれば教えてください。

ガストロノミーというのは、料理、サービス、雰囲気が一体となって楽しめるものだと思っています。料理写真だけでレストランの良し悪しはわからないので、なにより足を運んでいただくこと。この三位一体で味わってもらうことが、一番の楽しみ方だと思いますね。

―10月23日でいよいよオープン2年目を迎えられますね。この1年を振り返って、また2年目に向けて目標などがあればお聞かせください。

オープン当初は思った以上のご来店と反響をいただき、非常に良いスタートが切れました。しかし1年が経って、お客様の入客も落ち着いてきたのが正直なところです。今後はよりお客様にご来店いただき飛躍的な2年目にしていきたいし、していかなければいけないと。しっかりと、安定したレストランを作っていきたいと思います。

【編集後記】
“一生懸命やっていれば必ずチャンスは訪れる”と、その華々しい経歴とは対照的な謙虚さで語ってくれた朝比奈シェフ。そういった真面目で真摯な姿勢が、居心地の良い空間や繊細なお料理の数々に表れているんだなと感じました。

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朝比奈悟氏 プロフィール

1991年 横浜グランドインターコンチネンタルホテル入社
2000年 同ホテル メインキッチン 料理長
2004年 ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション副料理長として入社
同 年  ル カフェ ドゥ ジョエル・ロブション料理長に就任
2011年 シャトーレストラン ラ ターブル ドゥ ジョエル・ロブション(二つ星)料理長に就任、以降2017年版まで二つ星を継続
2017年 13年間にわたり勤務したロブショングループを勇退
2018年 日本橋兜町に ASAHINA Gastronome を開業

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フランス料理

アサヒナガストロノーム

東京メトロ東西線・東京メトロ日比谷線 茅場町駅 徒歩4分

20,000円〜

アクセス
住所 東京都中央区日本橋兜町1−4 M-SQUAREビル 1F

misaki

一休.comレストランの元営業。300店舗近いレストランを担当したのち、もっと世の中に宿やレストランの魅力を発信したい!という思いから、KIWAMINOの編集に。よく食べ、よく遊び、よく働くがモットー。全国各地を飛び回り、インタビュー記事を通してシェフの熱き想いをたくさんお届けできるよう日々奮闘中です。
【MY CHOICE】
・最近行ったお店:LATURE/TAKAZAWA/銀座 きた福
・好きなお店:オテル・ドゥ・ミクニ
・自分の会食で使うなら:六雁
・得意ジャンル:フランス料理
・好きな食材:赤身肉/鴨/海老/いくら

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