名古屋「天婦羅 國久」塚原孝幸氏に聞く、旬の食材で和の魅力を伝える天ぷらへのこだわり

地下鉄亀島駅から徒歩約3分、名古屋駅からもほど近い場所に店を構える「天婦羅 國久」。揚げたての絶品天ぷらはもちろん、コースに日本料理を取り入れたスタイルで人気を集めています。今回は、店主の塚原孝幸氏に「天婦羅 國久」ならではの天ぷらの魅力について伺いました。

名店紹介「天婦羅 國久」(愛知県/亀島駅)

昔の蔵をイメージしたアプローチが、上質な空間へといざなう「天婦羅 國久」。宮大工が手掛けた店内は、華やかながらほっと落ち着く空間が広がります。旬の食材を用いた天ぷらと旨味豊かな一品料理をコースでいただくスタイルが特徴。店主・塚原孝幸氏の丁寧な仕事で、素材の旨みを最大限に引き出した至極の天ぷらを楽しめると、地元を始め、関西・関東から足しげく通うファンが後を絶ちません。

和食の料理人としてキャリアをスタート

―和食の料理人からキャリアをスタートされたそうですが、塚原様が料理人になられたきっかけは?

高校生の時に料理屋さんでアルバイトをしていたのが、料理を始めたきっかけです。アルバイト先のお店の方たちが、とても楽しそうに働かれてまして、料理の世界は楽しいものなのかなと思って。高校卒業後、大阪・阿倍野の「辻調理師専門学校」に入りました。フランス料理やイタリア料理、中華料理と選択肢がありましたが、自分は日本人だし、和食の世界に興味があったので、和食を選びました。

卒業後、最初に和歌山県の白浜にある「ホテル川久」に就職しました。今でも当時の先輩方とは繋がりがあります。
当時は会員制の高級ホテルとして運営されていて、オープン2~3年目位だったと思います。和食の懐石料理の部署で5年ほど働きました。1年目は追い回しとして仕事中の雑用から盛り付けをし、2年目は八寸場。3~4年したら揚げ場や焼き方、煮方を経験して、板場、花板となっていきます。天ぷらは揚げ場の仕事で、揚げ物を極めながら色々な料理を作ります。

現場では、様々な役割を全部合わせて長いこと経験していたのですが、その中で「天ぷら、揚げ物を極めながら、色々な料理を作れたらいいな」と思うようになりました。

―仕事をされる中で、天ぷら職人の道を目指されるようになったのでしょうか。

仕事を始めて10年目位から、懐石料理の仕事をずっとやっていくうちに、色々なことを何でもできるようになるのも良いですが、その中でも何か一つをこだわってやっていきたいと思い始めました。もともと天ぷらが好きだったということもあり、天ぷら屋をやろうかなと。
ただ、これまでのキャリアで培ってきた日本料理も作っていきたいので「天婦羅 國久」というお店で天ぷらに力を入れていますが、天ぷら以外の料理にもこだわって作っています。

―天ぷらはどこかで修業されていたんですか?

これまでの修業時代に天ぷらを作ってはいましたが、どこかの専門店で修業をしたことはないです。東京や色々な有名店に食べに行ったりもしますが、それよりは自分流で美味しいものをお出しできれば良いかな、と考えています。
ずっとお世話になった先輩方から「絶対にうまいものを作れ、美味しいものを出せ」と言われ続けてきました。そのため、自分が絶対に美味しいと思えるようなものを作ろうと日々やっています。

常に最高に良い状態のものをお出しするために

―2015年に「天婦羅 國久」をオープンされましたが、こちらにお店を作られたきっかけを教えてください。

「できたら一軒家で、広々したところが良いな」と思って物件を探していました。ビルの中のテナントだと、どうしても狭くなってしまうので。この場所は名古屋駅からも比較的近い距離にあるので、美味しいものを頑張って作っていたら、自然にお客様がこのお店に来てくれるようになるのではないかと思いました。
名古屋は京都や大阪からも近いですし、東京のお客様も多く来てくださっています。
名前の由来は、自分の両親の名前から一文字ずつもらい「國久」としました。色々お世話になったし、天ぷら屋に相応しい響きで、字画も良かったので。たまたま全国に同じ苗字の方が何人かいて、実際に食べに来てくれた人もいます。

―オープンした時のお店のコンセプトは?

メインは天ぷらですが、今までやってきた和食の料理を少しずつ出して、お酒のアテをつまみながら天ぷらを食べれるお店にしていきたいなと思っています。
また、季節の旬のものをふんだんに使って料理を作りたいということもあります。季節感を出すのは日本料理の特徴なので、先付も夏は冬瓜やフルーツトマト、ヤングコーンなど。お造りだとコチや蛸を出して、天ぷらでは車海老にキスや鱧、岩ガキといったものを使います。

仕入れは毎朝市場に行き、自分の目で見て、選んでいます。同じ魚でも、やっぱりその日によって状態も違いますね。野菜もそうですが、1週間前に採れたナスと今日入ってきたナスでは、時期が違うので水分量も違うということもしょっちゅうあります。なるべく良いものを仕入れることから料理が始まっている感じですね。献立は毎月変えて、良い食材を使って出せるようにと日々考えています。

あとは、定期的に来てくださる常連のお客様の好みを思い出して「あの方はこういうものがお好きだな」と考えながら献立を作ることもあります。カウンターで7~10名のお店にわざわざ食べに来ていただいているので、お客様が来た時に最高に良い状態になるよう、心がけています。

―仕入れのこだわりもそうですが、料理もかなりこだわられていると伺っています。特にカラスミは自家製で作られているとか。

12月頃から天ぷらのネタとして使っているので、レアな状態のカラスミを作るのがコツなんです。完全なカラスミにするには最低2週間位かかるんですが、そこまで仕上がった状態を揚げても美味しくなくて。もっとレアで中が全然固まってない状態のものが良いですね。火を余熱で入れ、大根と一緒に合わせてカラスミ大根風にしてお出ししました。

独自の天ぷらで言うと、今の時期はイチジクを揚げて田楽味噌と一緒にイチジク田楽風のものをお出ししています。
もちろん天ぷらを極めたいので、天ぷらをいかに美味しく引き立てられる料理を出すかという感じで内容を考えています。天ぷらも他の料理も全部が重たいとお客様も疲れると思うので、天ぷらを食べながらちょっとつまめるような料理のバランスを目指しています。
変わりものばかりではなく、天ぷらの合間に工夫した料理をさりげなく出して、これまでの技術や知識を使えたらいいなと思っています。

―和食のご経験があるからこそできる発想ですね。天ぷらを揚げる油については何を使われていますか?

油も色々と考えて研究しながら、ごま油2種類、ナタネ油3種類などをブレンドし、最初から最後まで食べられるような味を目指しています。エビを何本でも食べたくなるような、くどくならず、胃にもたれないような形ですね。8年ほどやっている中で、日々の研究もありますが、日によって少し変えてみたりしています。
最適な状態で食べていただけるように、カウンターの天ぷらの紙は適度に変えています。もちろん、揚げると水が出る食材もあるので、ベタベタになった紙の上に新しい天ぷらを乗せるのは、せっかく一生懸命揚げたのに残念かなと思いますし。
カウンターの仕事は、懐石料理を長年やっていた人間からすると、すごくきめが細かいんですよね。独立する前に有名なお鮨屋さんで3年ほど仕事させていただきましたが、接客はもちろん、カウンターでの料理の作り方、見せ方の工夫というものが勉強になりました。

―「大将は気さくで居心地がよかった」というお客様からの声がありますが、カウンターの仕事をされる中で、お客様とのコミュニケーションで心がけていることは?

そう言っていただけるのはうれしいですね。懐石料理では裏方で、直接お客様とお話しながら作ることはありませんでした。お客様の方から質問されたら、色々とご紹介するようにしています。ただ、お越しになるお客様は様々で、ご一緒された方と会話を楽しみたい方もいますし、つかず離れずのほどよい接客を心がけています。あまり気負わず、気楽に食べていただけるような雰囲気を作るようにしていますね。

―「KIWAMINO」では、天ぷらの人気が非常に高いですが、天ぷらに合わせるお酒も注目されています。ぜひ、天ぷらに合うお酒を教えていただけますか?

僕もそんなにお酒の勉強をしているわけではないですが、ワインなら天ぷらの油を中和してくれるような酸味のあるすっきりしたものを選んでいます。
ワインバーの方の知り合いがいるので、教えていただいたり、酒屋さんから天ぷらに合うワインを聞いたりして、色々試しています。
日本酒は食中酒で「辛口がほしい」と言われる方が多いのですが、辛口の感覚が人によって違う点があります。そのため、最初は飲みやすいさっぱりとしたものから、徐々に辛口に移行するようにします。お任せと言われたら、大体3~4合は飲まれるイメージで提案しています。
他にお出ししているお酒は、焼酎とジンがあります。ジンの飲み方はジントニックとジンハイボールで出していますが、山椒と鷹の爪を炙ったものを入れて少し風味を出しています。ちょっとピリッとして酸味がアップするので、おすすめしています。

―一つ一つにこだわり、意欲的にお店作りをされていらっしゃいますが、今後挑戦されてみたいことは?

夢は色々ありますが、具体的には秘密です(笑)。
天ぷらで何店舗か経営したいですし、天ぷらだけでなく、天ぷらを使った業態や、天ぷらと何かを食べるようなお店を、名古屋だけでなく東京にも出してみたいなという気持ちもあります。
あとは、初めてのお客様にも居心地良いお店作りをしていきたいです。「カウンター料理」というお店に行くのは、若い方だと特に最初はちょっと抵抗がある方もいらっしゃると思うんです。自分もそうでしたから分かるので、そんな方でも気楽にお越しいただけるようなお店にしていきたいですね。

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塚原 孝幸氏 プロフィール
岐阜県出身。高校生の時に料理屋でアルバイトをしていたのがきっかけで料理の道に進む。大阪の「辻調理師専門学校」を卒業後、各地のホテルや料亭にて料理人として働いたのち、和食の中でも一つのものにこだわってやっていきたいという思いが芽生え、2015年に「天婦羅 國久」をオープン。

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和食(その他)

天婦羅 國久

名古屋市営東山線 亀島駅 徒歩3分

12,000円〜14,999円

【編集後記】

塚原氏のお話しぶりから、これまで日本料理で培われた経験と、天ぷらならではの表現で、素材の旨さを最大限に引き出す工夫が随所に見受けられました。「自分が絶対に美味しいと感じられるものだけを出したい」という言葉は、シンプルながら料理の神髄にも感じられ、その心意気にゲストも魅了されるのでしょう。地元の方だけでなく、東京や関西から通われる方が多いのも納得です。

※こちらの記事は2023年08月22日作成時点での情報になります。最新の情報は一休ガイドページをご確認ください。

Airi Ishikawa

一休のメディア事業部長。日本全国を旅しながら、その道のプロにインタビューや取材をしています。休みには足をのばして国内ワイナリーを巡るのが好き。地産地消や、生産者に近い距離で食材や料理に向き合う「極みのシェフ」がいる店をご紹介します。
【MY CHOICE】
・最近行ったお店:銀座 しのはら / 南青山 まさみつ / サエキ飯店 / コートドール
・好きなお店:鮨 梢 / フランス料理 エステール / コンチェルト / エンボカ 京都
・注目しているお店:SeRieUX / プルサーレ / bistronomie Avin
・得意ジャンル:フレンチ / バー
・好きな食材:山菜 / 鴨

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