京都には独自の中華料理があると言われます。出汁に特色あり、にんにくは控えめ、香辛料や油も少なめといった店も多く、とにもかくにも京都の街に磨かれた「はんなり」とした味がこの街の中華の身上です。
雑誌で特集されるなど、ここにきて静かなブームでもある京都の中華。今回は本物の町家を改装した風情たっぷりの空間でいただけるのがなんとも嬉しい、そんなところも京都ならではの厳選6軒をご紹介します。
目 次
高瀬川のほとりで満喫する 町家の京風創作中華
創作中華 一之船入(京都市役所前)
京都市役所にも程近い史跡・高瀬川一之船入のほとりに立つ、かつてはお茶屋であった築90年の町家。高瀬川一之船入は、高瀬川を往来する船の荷の積み下ろしや方向転換に使われた入り江で、現存する唯一の船入です。
横浜中華街や全国の有名店で修業を積み中国特級調理士の資格を有するオーナーシェフが、京料理の出汁使いにも注力し作り上げた、京都人の厳しい舌にも支持される創作中華。契約農園から仕入れる無農薬の京野菜を“医食同源”の考えに基づいた料理に仕立てます。
窓の外は高瀬川の入り江という風情ある町家の個室で、この上ない情緒を感じながら京都と中華の融合が楽しめる一軒です。
洗練された「麻」や「辣」の新感覚・四川料理を、寛ぎの町家で
町家四川 星月夜(四条)
四条堀川に近い油小路仏光寺の築100年の町家を改装し2015年にオープン。情緒あふれる町家の店内で四川料理がいただける評判の一軒です。
数々の有名中華料理店で長年修業を積んだシェフが、伝統を守りながらも新しい感覚の四川料理を追及している同店。厳選した京都ならではの旬の食材を使用し、巧みなスパイス使いで「麻」や「辣」を効かせたこちらの四川料理は、豊富に用意された紹興酒やワインと一緒に味わいたい洗練されたメニューが揃います。
坪庭の四季折々の表情を望む落ち着いた空間で、デザートや食後の中国茶までをゆっくりと。特別なひとときのランチやディナーにもおすすめです。
石畳の情緒と共に、薬膳とふかひれの贅沢なひととき
白碗竹快樓 祇園店(四条)
京都らしい風情が人を惹きつけて止まない祇園の巽橋界隈。情緒ある町家が並んだ新橋通で、お茶屋として使われていた町家を改装し店を構える、薬膳とふかひれ料理が自慢の「白碗竹快樓」。店名は白いお碗と竹の箸を意味しています。
趣のある店内には、料理人の鮮やかな調理を眼前に楽しむカウンター席や新橋通を静かに見下ろす2階席や個室があり、いずれも外の喧騒を忘れ寛ぎの中で食事ができる作り。
薬膳師の資格を持つ料理長が旬の食材を季節の薬膳料理に仕上げ、宮城県気仙沼から直送の厳選したフカヒレは自慢の姿煮や土鍋煮に。祇園の優美な空間と贅を尽くした美味が、京都での忘れ難い時間を演出します。
室町の贅沢な邸宅で、北京料理と京食材の融合に舌鼓
膳處漢ぽっちり(烏丸)
かつては呉服商が立ち並んでいた室町通界隈。阪急烏丸駅や地下鉄四条駅に程近いこの地で、元は呉服屋の邸宅であった豪奢な町家を改装した北京料理店です。
洋館風の外観が目を引く、町家の中でもめずらしい作りのこちら。その店名は、腕の良い料理人が多く集まっていた滋賀県大津の「膳所(ぜぜ)」と呼ばれる都の御厨子所(みずしどころ)に倣い、同店を「京の台所」に見立てたことに由来します。
設えの異なる空間や個室を楽しみながら、京の食材を活かした北京料理や名物のふかひれ料理を堪能。食後は中庭の蔵を改装したバー「ぽっちり」で、食後酒と共に素晴らしい料理の余韻を味わうひとときを。
長い伝統的町家の、滋味溢れる力強い家庭料理
雪梅花 菜根譚(四条)
京の台所・錦市場にも通じる柳馬場通沿い。「うなぎの寝床」と称される典型的な京町家が、風情はそのままに中国の家庭料理を供するレストランに生まれ変わりました。
店名の「菜根譚」とは「堅い菜根を噛み締めれば(=苦しい境遇に耐えれば)、多くのことを成し遂げられる」という意味の故事に由来する中国の古い処世訓のこと。
設えを眺めるのも楽しい店内には、中庭を望む元茶室などの様々な席が用意されています。
旬の京野菜、特に「菜根譚」を体現する根菜を多く使った“大陸の力強い中国家庭料理”がこちらの身上。旬の食材の力を実感できるような滋養に富んだ家庭料理と共に、贅沢な食材も使った味わい深い料理が満喫できる一軒です。
町家の様式美に囲まれいただく、花街の華やいだ中国料理
ぎをん 桃庭(祇園四条)
賑わう花見小路通で、祇園甲部歌舞練場の斜向かいの風情ある町家。かつて谷崎潤一郎も贔屓のお茶屋として知られた築100年以上のこの建物を、出来るだけ手を加えずに生まれ変わらせた「ぎをん 桃庭」。
坪庭や花見小路通を望むテーブル席の他に、個室やお茶屋当時の面影を残すお座敷もあり、会食や接待にも便利に利用できます。
贅沢な食材や季節の地物野菜をふんだんに用いた広東料理を、紹興酒やワインと共にコースやアラカルトで。京都らしさ満点の贅沢な雰囲気ながら、ランチもディナーも比較的お手頃に楽しめるのも魅力のこちら。花街・祇園でいただく季節の中国料理もとても乙なものです。
強い匂いがご法度とされる花街や織物業が盛んな界隈の需要に応えながら、京都の中華は独自の方向性が築き上げられたと言われます。
揺るぎない和食文化がある街の人々に愛される、よその街ではなり得なかったここだけの中華料理。食べ比べてお気に入りを見つけるのも楽しいもの。
思わずハマってしまうその魅力を確かめに、京都まで足を延ばしてみませんか?
※こちらの記事は2024年01月25日更新時点での情報になります。最新の情報は一休ガイドページをご確認ください。