家庭の食卓でも定番料理の天ぷら。美味しい揚げ具合は、素材の水分を“脱水”し、旨味を“凝縮”させるという、難しい技を必要とします。素材によって揚げる時間や衣の厚みに変化をつけるのはもちろん、同じ食材でも時期や産地によって調整して、理想の状態に仕上げるのがプロの技。今回は、そんな上質な食材の旨味を衣で封じ込める高い技術が光る、東京の下町にある天ぷらの名店5軒を厳選しました。
目 次
1.浅草にある情緒あふれる老舗で、江戸前天ぷらを満喫
天麩羅 中清(東京都/浅草駅)
浅草駅より徒歩約5分、「浅草公会堂」の向かいの重厚感あふれる一軒家が「天麩羅 中清」。創業明治3年の江戸の趣漂う老舗です。錦鯉が泳ぐ池、苔が美しい庭園、数寄屋造りの離れ座敷など情緒たっぷり。着物姿の仲居さんのおもてなしも温かく、レトロ感のある和室に通されると、タイムスリップしたかのよう。
芝海老や貝柱を使った名物のかき揚げ「雷神揚げ」をはじめ、メゴチ、アナゴなど魚介をメインに、厚めの衣をまとわせた江戸前の味を満喫できます。代々主人の家系のみに受け継がれてきた手法で揚げる天ぷらは、サクッとした衣にフワフワのネタが絶妙な口当たり。目利きが選んだ食材をベストの状態に仕上げる職人技が光ります。
2.柳橋の風情を楽しみながら満喫する、3代続く江戸前の味
柳橋 大黒家(東京都/浅草橋駅)
浅草橋駅より徒歩約5分、江戸情緒が漂う柳橋に佇む「柳橋 大黒家」は昭和23年創業。祖父の代に浅草の「大黒家天麩羅」から暖簾分けし、代々江戸前天ぷらの技術と老舗の味を守り続けています。3代目店主、丸山雄三氏が立つのは、ネタさばきから揚げるまでの工程を眺めることができる円形カウンター。衣は揚げる直前にまとわせ、胡麻油と綿の種子の油脂・綿実油を6対4に調合して軽く仕上げます。
じっくり味わいたいのは、海老のすり身を食パンに挟んで香ばしく揚げ、濃厚なウニソースをたっぷりしみ込ませた創業時からの名物お通し「うにパン」。食事の前後に楽しめるお茶とデザートの時間は、眼下に柳橋一帯の風景が広がる風雅な個室で過ごせます。
3.リーズナブルに、本格的な天ぷらを楽しめる一軒
天ぷら 大塚(東京都/入谷駅)
入谷駅から徒歩約6分、閑静な住宅街に店を構える「天ぷら 大塚」。新御徒町の「天婦羅みやこし」で修業した大将が生み出す、油が残らずあっさりとした味わいの天ぷらが食通を魅了しています。厳選魚介のふんわりとした身と衣のサクサク感が絶妙なコンビネーション。入谷で生まれ育った職人肌の大将が食材と真摯に向き合う姿勢に期待が高まります。
店内は、明るい木目調のカウンターと柔らかい照明が特徴の、落ち着いた空間。揚げたての天ぷらとダイナミックな職人技の数々を、臨場感たっぷりと楽しむことができます。天ぷら10品、9,000円のコースに刺身盛りがついて11,500円。リーズナブルに本格的な天ぷらをいただける一軒です。
4.2種の油を使い分け、旬の味をそのまま楽しむ
天ぷら福たろう(東京都/根津駅)
根津駅から徒歩約3分の至便な場所に店を構える「天ぷら福たろう」。店主の小貫福太郎氏は、日本料理の修業をするうち天ぷらに魅せられ同店を開業。食材ごとに「九鬼産業」の2種の胡麻油を使い分け、ふんわり空気を含んだ衣のさくっとした食感と香ばしさを引き出します。江戸前や近海を中心に旬の魚介を仕入れ鮮度を重視して調理。海老はそれぞれの油で揚げ、食べ比べも楽しめます。
かつお・むろあじ・さばの節を秘伝の割合で合わせたコクがある天つゆに、沖縄産「粟國の塩」と自家ブレンドの柚子塩を用意し、味わいの幅を広げます。食材は生産者から直送される旬の野菜、富山県の米「てんたかく」を使用。炊飯に使用する水にもこだわり、現地から取り寄せています。出汁がきいた椀物や炭火の焼き魚など日本料理の数々も登場。メインの天ぷらに彩りを添えます。
5.店主のこだわりが詰まった口当たりの軽い、身体に優しい天ぷら
天麩羅 四季彩 村松(東京都/湯島駅)
湯島駅より徒歩約3分、「学問のみち」の通り沿いにシックな黒い門が迎えてくれる「天麩羅 四季彩 村松」。アプローチを抜けて扉を開けると、白木の檜の広々としたL字カウンターが目に飛び込んできます。和の設えが落ち着く店内では、玉締めしぼり技法で作られた胡麻油で揚げる口当たりの軽い、身体に優しい天ぷらを味わうことができます。
本枯節を出汁に使用した香り豊かな天つゆのほか、3種類の塩も用意。才巻海老、才巻海老兜、季節の魚、季節の野菜、胡麻豆腐あられ揚げなど天ぷら12品に、突き出し、香の物、デザートがついたランチコースが13,750円とお値打ちです。このほかにも、天丼・天茶など締めを選べるコースなどが用意されています。その日に提供している素材や塩についての丁寧な店主の説明を聞きながら、この店ならではの食事時間を楽しみましょう。
天ぷらはシンプルな調理法ゆえに大切なのは、食材の新鮮さ。どの店も素材や油にこだわり、食通達の舌を満足させてきた天ぷらの名店ばかり。薄い衣で素材の旨味を封じ込め、サクッとした食感に仕上げた天ぷらは絶品です。そんな職人技を満喫できる下町ならではの天ぷらの真髄を、ぜひ味わってみてはいかがでしょうか。
※こちらの記事は2025年03月14日更新時点での情報になります。最新の情報は一休ガイドページをご確認ください。