言わずと知れた有名レストランや知る人ぞ知る隠れた名店など、ジャンルを問わず数えきれないほどの店舗が集まる東京。様々なレストランを見てきた食のプロが何度も足を運びたくなるお店には、きっと特別な魅力があるはずです。今回は、食通が愛してやまない“とっておきのレストラン”を東京から厳選してご紹介します。
目 次
1.伝統の洋食メニューを今にアレンジ。食後感の軽やかさも魅力
目白 旬香亭(東京都/目白駅)

“新しくて懐かしい洋食”をコンセプトにオープンして10年。今や、すっかり地元客にとって定番的な一軒となった「目白 旬香亭」。品書きを開けば、マカロニグラタンやハンバーグ、カニクリームコロッケからステーキ、ハヤシライスにカレー等々、洋食メニューは圧巻。いずれもおなじみの洋食料理ですが、ここでは一つひとつの下拵えを丁寧にすることで素材の持ち味を生かしつつ、食後感の軽い味わいに仕上げています。
ホワイトソースにしても「コクを出すためにバターや生クリームではなく出汁を加えることで、濃厚でありながらライトな後口にしています」とは同店の古賀達彦シェフ。また、フライの揚げ油も、揚げあがりが軽く油切れがよくなるようサラダ油と太白胡麻油をブレンド。いずれの皿も納得のいく味ですが、なかでもデミグラスソースは秀逸。甘みとほろ苦さ、深みのある旨みとバランスの取れた美味しさが、この店の実力を物語ります。
2.正統派でありながら唯一無二。さりげない一捻りが光る江戸前寿司
日本橋蛎殻町 すぎた(東京都/水天宮前駅)
馬喰横山で創業後、2015年に名前を変えて現在の場所へと移転した「日本橋蛎殻町 すぎた」。2024年5月には20周年を迎え、より説得力のある寿司をと日々精進するご主人の杉田孝明さん。その握る一貫一貫は正統派でありながら、さりげないオリジナリティが光ります。例えば漬け鮪。やや薄めに大きく切りつけ、折り畳むように握るのが杉田流ですが、それも、漬け込む時間をなるべく短時間にし、鮪本来の風味を逃さぬことなく味を入れたいがため。また、折り畳んで握ることで量感が出ると共に、鮪の身と身の間に微かに含まれる空気感がふんわりとした食感を演出。寿司飯と鮪が口中で軽やかに溶け合います。
締め加減も絶妙な小肌、塩締めのふっくらとした春子鯛等々、余韻の深い味わいは「すぎた」の寿司の真骨頂。流行を追うことなく食材を深く理解することで普遍的な価値を見出します。「全てはお客様の笑顔のために。」それが、杉田さんの原動力と言えましょう。
3.衒いなくジャンルを超えた日本のイタリアン。レジェンドの真髄を味わう
インフィニート ヒロ(東京都/赤坂駅)
伝説のイタリア料理店「バスタパスタ」を始め、数々の話題店を手掛けてきた斯界のレジェンド・山田宏巳シェフ。その集大成とも言えるのが、赤坂「インフィニート ヒロ」です。「ここでは、日本人の舌に合うイタリア料理を作っていきたいですね」とは山田シェフ。バジリコの代わりにシソを使った「シソベージェ」もその一つ。出自は「キャンティ」ですが、山田シェフは更にバージョンアップ。バジリコの代用としてではなく、シソ本来の個性を第一に考えた日本のパスタとして昇華させています。
また、全国各地の美味しいものを食べ歩いてきたからこその食材も多彩。新潟の鴨、愛媛今治のカリスマ漁師・藤本純一さんの魚などが日々のコースを彩ります。「料理のインスピレーションは、和食やフレンチ、中華から受けることが多いね」とは山田シェフ。ジャンルを超えながらも、最後はイタリアンに着地する手腕もさすが。気負いのない美味しさも魅力です。
4.赤坂の古民家で味わう変幻自在な中国料理。四季を感じるコースも魅力
月居 赤坂(東京都/赤坂駅)
赤坂の路地裏、小径の奥にひっそりと佇む古民家中華料理店「月居 赤坂」。アンティークな調度品に囲まれた店内は、しっとりと落ち着いた雰囲気です。調理風景を目の当たりにできるカウンター席のほか、2階には最大20人まで入れる個室もあり、様々なニーズに応えてくれそうです。厨房で腕を振るうのは「赤坂璃宮」などで修業を積んだベテラン・船倉卓磨シェフ。
広東料理をベースにしつつ、豊かな知見のもとに創り出される料理の数々は融通無碍。魚の蒸し物一つにしても、広東風の清蒸で供されることもあれば、時には湖南風に発酵唐辛子で蒸しあげたり、といった按配です。春は筍、夏は冬瓜、秋の秋刀魚や松茸に冬の牡蠣などなど四季折々の食材を巧みに盛り込んだコース料理は月替わり。「ラムスペアリブと酸菜の煮込み」といった攻めた料理から、松茸を浮かべた上湯のような優しく滋味深い一品まで変幻自在な船倉中華の世界を満喫してみては。
5.100年の時の流れが培う老舗の底力。町寿司の矜持が息づく粋を味わう
喜寿司(東京都/人形町駅)
創業は大正12年。昭和、平成、令和と4つの時代にわたり伝統の味を守り続けてきた江戸前寿司の老舗「喜寿司(㐂寿司)」。風情溢れる日本家屋の一軒家は、この店の長い歴史を静かに物語るようです。当代の油井一浩さんは4代目。暖簾を引き継いで6年。江戸前寿司の嚆矢と言われる「華屋與兵衛」の流れを汲む銘店ながら「町の寿司屋でありたい」と一言。それゆえ、今時の一斉スタートではなく、コースのみでもない。誰もが気軽に暖簾を潜り、好きなように酒を嗜み、好みの握りを食べる昔ながらの寿司屋のスタイルがここでは日常の光景です。
ゆで卵の黄身と海老朧を白身に詰めて握った「ひよっこ」や「朧の茶巾絞り」といった珍しい飾り寿司も同店ならではの一品ですが、その真骨頂は、小肌や鯖などの締めもの、そして、秋から冬にかけての本鮪。殊に、香りがあり鉄分の旨み豊富な赤身に注力して選んだ鮪は逸品。わざわざ食べにいく価値のある美味しさです。
食通が足を運び続ける“とっておきのレストラン”を、東京から厳選してご紹介しました。
皆さんも実際に訪れて、そのお店ならではの魅力を体験してみてはいかがでしょうか。
※こちらの記事は2025年02月01日作成時点での情報になります。最新の情報は一休ガイドページをご確認ください。