老舗というと、どのようなイメージをお持ちでしょうか。受け継がれてきた伝統や先代から伝えられる秘伝の味など、様々な印象がありますが、店が世代を超えて愛され続け、今に至っても存在感を放っているのは素晴らしいことです。今回は、石川県・金沢にある創業100年以上の老舗日本料理店を4軒ご紹介いたします。
1.金沢で最も歴史ある料亭で郷土料理を堪能
つば甚(石川県/野町駅)
野町駅から徒歩で約9分「つば甚」は金沢で最も歴史ある料亭として知られる老舗。加賀百万石の礎を築いた前田利家に仕えていた鍔家3代目・甚兵衛が本業の傍ら営んだ小亭・塩梅屋「つば屋」が起源とされ、その歴史は270年以上に及びます。
犀川沿いに立ち、200畳ひと続きの格天井が広がる大広間や、美しい眺望の部屋など老舗ならではの趣を感じる建物。その風格に魅せられこれまでに松尾芭蕉、三島由紀夫といった日本を代表する多くの文人墨客が訪れてきました。
いただけるのは、豊かな自然が育んだ山海の幸を使った郷土料理の数々。例えば、石川県の伝統工芸品・治部椀に盛り付けられた「治部煮」や、金沢の祝いの席には欠かせない「鯛の唐蒸し」のど黒など。食事を通して石川県の文化を享受できることでしょう。
2.文化人も愛した料亭で感じる金沢の伝統文化
料亭 大友楼(石川県/北鉄金沢駅)
北鉄金沢駅から徒歩で約20分。四季の移り変わりを映し出す尾山神社の境内からほど近い場所に位置する「料亭 大友楼」。創業天保元年(1830年)を誇る由緒正しき料亭で、金沢芸妓を招いて伝統的なおもてなしに触れることもできます。
いただけるのは四季折々の旬を取り入れた料理です。使用する日本海で獲れた新鮮な魚介と季節を彩る山の幸は、その日に仕入れたもの。白山を源とする清冽な水を使い、素材の持ち味を活かすよう心がけられた一皿は絶品です。
元禄の頃から加賀藩との縁が深い同店。歴史と威厳ある料亭の味を求め、これまで吉田健一、司馬遼太郎、三島由紀夫といった名だたる文化人が訪れたそう。歴史の風を感じつつ、金沢の美食に舌鼓を打つ贅沢な時間を過ごされてはいかがでしょうか。
3.一客一亭のもてなしと滋味に富んだ石川の名物料理
山乃尾(石川県/金沢駅)
金沢駅から車で約15分のところにある「山乃尾」は、明治23年(1890年)創業の老舗旅館です。門をくぐると幽玄の世界へと誘われ、一棟一棟が独立した離れの部屋で一客一亭の精神を大切にしたおもてなしを受けることができます。
料理には、のどぐろや能登牛といった石川県の名物が登場。霊峰・白山連峰と日本海に囲まれた自然環境が生み出す四季折々の山海の幸を、時に素朴に、時に豪快に調理。その滋味に富んだ味と美しい見た目で、訪れた人の五感を喜ばせます。
また、同店の初代主任・太田多吉は陶芸家・魯山人に金沢の国賓とも言わしめた数寄者だったそう。侘び寂びの心をも感じるお店の設えや美しい庭、食材への心配り、器へのこだわりから初代の精神を細部まで受け継いでいるように感じられることでしょう。
4.歴史ある庭園を眺めつついただく心を尽くした会席料理
金城樓(石川県/金沢駅)
金沢駅から車で10分ほど、歴史的な街並みや美しい自然が残る浅野川界隈に佇む「金城樓」。日本建築の粋を凝らした建物と庭園が、創業130年を超える老舗料亭ならではの荘厳な雰囲気を醸します。
伝統の様式美を随所に残しつつ、四季の移ろいを感じるしっとりと落ち着いた庭園はまるで心が洗われるよう。前田家の時代からほとんど姿を変えていないという、不二石や槙の樹、獅子印璽燈籠らが長い歴史を物語ります。
そんなお庭を見ながらいただけるのは、能登の風土が生み出す珍味や、日本海の海の幸、そして加賀野菜をふんだんに使った心尽くしの料理の数々。料理長・加茂野隆志氏は、仕入れから料理が口に運ばれるその瞬間まで正確に演出する“超一流”を目指した仕事で、長く愛される老舗料亭の魅力を守り続けています。
いかがでしたか。時代が変わっても多くのゲストに愛され続け、老舗が老舗である所以がどの店からも伝わってきますね。弛まぬ努力を続け、受け継がれてきた伝統の味を求めて、金沢へ足を運んでみてはいかがでしょう。
※こちらの記事は2024年10月07日作成時点での情報になります。最新の情報は一休ガイドページをご確認ください。