創業100年以上、伝統の味を楽しめる老舗日本料理店 京都編

京都を訪れたら、一度は足を踏み入れてみたい老舗。数寄屋造りや風格のある建物は、敷居が高くて気軽に食事をする場ではない、と臆する気持ちも湧いてきますが、懐深く旅人を受け入れてくれるのが京都の老舗なのです。伝統の技と美意識を今に伝える京都の日本料理は、一度は味わってみたい美食の最高峰。今回は、そんな京都ならではの創業100年以上の伝統に培われた老舗日本料理店を紹介します。

1.伝統を守りながらも革新を続ける“水の料理”

菊乃井本店(京都府/祇園四条駅)

京都らしい風情漂う祇園を抜けると、高台寺の緑に囲まれた一角にある「菊乃井本店」。創業1912年、豊臣秀吉の妻・北政所が茶の湯に用いた名水「菊水の井」を、代々守ってきた先祖を持つ3代目の主人・村田吉弘氏が、現在腕を振っています。

こちらでいただけるのは「きれい寂び」と呼ぶ「上品で美しく、力強い美味しさ」を追求した京懐石。水に生かされた野菜を、出汁で煮含めて調味する村田氏の“水の料理”は、伝統を守りながらも革新を続けています。「凛とした美しいサービス」と「気遣いすれどもおかまいせず」が、おもてなしの信条。器や部屋の設えなどの高い美意識に圧倒され、四季の移ろいの中で旬の料理を味わうことで、日本の文化を体感できる老舗料亭です。

懐石・会席料理

菊乃井本店

京阪本線 祇園四条駅 徒歩15分

2.風雅な空間の中、きめ細かいおもてなしで麗しい懐石を

柊家旅館(京都府/烏丸御池駅)

京都市役所からほど近い街中に、趣ある佇まいの老舗「柊家旅館」が姿を現します。創業文政元年(1818年)、木造2階建ての風格を感じさせる数寄屋造りの旧館と、2006年に完成した新館からなる全28室の名旅館。小説家・川端康成をはじめ、各界の著名人に愛される定宿とされてきました。

自宅のような寛ぎを感じさせる、控え目できめ細やかなおもてなしが信条。四季の食材を活かし、選び抜いた器に盛り付けた目にも麗しい懐石料理を凛とした空間でいただき、心からの寛ぎを堪能。手入れの行き届いた坪庭を眺めながら、京都の風情にたっぷり浸ることができます。

京会席料理

柊家旅館

地下鉄線 烏丸御池駅 徒歩10分

20,000円〜29,999円

3.お茶の心を活かした懐石料理と侘び寂びの世界

炭屋旅館(京都府/御池駅)

京都の街中とは思えない、静けさをたたえる数寄屋造りの老舗「炭屋旅館」。大正初期の創業で茶の湯の宿として知られ、由緒ある茶室をいくつも擁しています。ほの暗い明かりの中、飴色に光る北山丸太の柱に土壁の滲みなど、情緒ある設えは侘びの美学。

夏には「葭障子」がたてられ、畳の上には「あじろ」が敷かれる、そんな四季折々の心遣いも茶の美意識ならでは。京の匠の技が冴える数寄屋造りの部屋でいただく「お茶の心」を活かした懐石料理は、格別の趣を醸し出します。毎月7・17日の夜は、茶室で釜を懸けておもてなし。侘び寂びの世界に浸ってみてはいかがでしょうか。

懐石料理

炭屋旅館

地下鉄烏丸線 御池駅 徒歩約10分

20,000円〜29,999円

4.高野川と広大な日本庭園を眺めながら名物料理を満喫

山ばな平八茶屋(京都府/修学院駅)

天正年間創業、430年もの時を経てなお愛され続ける「山ばな平八茶屋」。安土桃山時代、多くの旅人が足を休めた若狭街道沿いの街道茶屋として栄え、北大路魯山人や夏目漱石などの芸術家や文人が通った料亭として知られています。趣向を凝らした数寄屋造りの建物は、高野川に面しており、すべての部屋から川面を眺めることができる特等席。

料理は、創業当時より受け継がれる名物、すりおろした丹波産つくね芋を出汁でのばし、麦飯にかけた「麦飯とろろ汁」や、珍重されるぐじを用いた若狭懐石など。老舗が守り続ける京料理の職人の心と技を、600坪もの緑深き日本庭園を眺めながら、ゆったりと堪能したい一軒です。

日本料理

山ばな平八茶屋

叡山電鉄線 修学院駅 徒歩 5分

15,000円〜19,999円

5.京都を象徴する八坂神社境内の老舗で、雅な食体験を

中村楼(京都府/祇園四条駅)

八坂神社の境内に位置し、情緒ある風情を醸し出す「中村楼」。創業は室町期ともいわれ、当初は門前の水茶屋からスタート。豆腐料理、菜飯などを供する店を経て、江戸末期からは京都屈指の料理茶屋として名を馳せています。

振る舞われるのは、吟味した彩り豊かな素材を、贅沢に味わえる京料理の数々。時代を経ても変わらない、伝統の味と品格を満喫できます。名物は、木の芽と味噌で香ばしく仕立てられた味噌田楽豆腐。ハレの日に時間を過ごしたい、雅な世界観も京都ならではですが、隣には「茶店 祇園 二軒茶屋」もあり、気軽に軽食も楽しめます。

懐石・会席料理

中村楼

京阪電気鉄道線 祇園四条駅 6番出口より徒歩9分

15,000円〜19,999円

京都の文化を伝えてきた老舗の世界観は、一度訪れると「またその空気感に浸りたい」と思わせる魅力に満ちています。美意識の粋を集めた庭や空間、凛としたおもてなし、京都の豊穣な食材を、華麗なる技を駆使して仕立てられた艶やかな料理。どちらの店も意外なほどリーズナブルに食事を楽しむことができるので、ぜひ一度、日本文化の粋を尽くした美食体験を計画してみてはいかがでしょうか。

※こちらの記事は2023年10月29日作成時点での情報になります。最新の情報は一休ガイドページをご確認ください。

Miki D'Angelo Yamashita

コロンビア大学・パリ政治学院修士。新聞社を経てフリージャーナリスト。専門は別だが、趣味が高じて食担当記者に。延べ3000人料理人インタビュー、約30カ国で食関連を取材。料理本も多数編集。

【MY CHOICE】
・最近行ったお店:未在 / 晴山 / レヴォ /茶禅華
・好きなお店:ギ・サヴォワ / Restaurant KEI / 祇園さゝ木 / 宮坂
・自分の会食で使うなら:ル・ブルキニオン / ラルジャン / 乃木坂しん / 蕎麦おさめ
・注目しているお店:お料理ふじ居 / 日本料理 研野 / ELEZO ESPRIT
・得意ジャンル: スイーツ
・好きな食材:麺類

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