フードライター・森脇慶子さんに聞く、訪れる度に惚れ直す「偏愛レストラン」5選

日々食べ歩きをするフードライター・森脇慶子さんが、おすすめのレストランをご紹介!
今回は、数々のお店を知り尽くしている森脇さんに、特に思い入れがある「偏愛レストラン」を伺いました。

1.肉焼きの名手が繰り出す緩急を効かせたコースが魅力

三和(東京都/白金台駅)

ピエモンテ州を始めイタリア各地で研鑽を積み、中目黒「ロデオ」では肉ラバーの胃袋を鷲掴みにした渡邉大佑シェフ。この肉焼きの名手が2021年に独立、白金に「三和」をオープンするや、瞬く間に予約の取れない店として美食家垂涎の一軒になりました。それも、スライス仕立ての生ハムから始まる緩急自在なコースを見れば納得。旬の食材を巧みに取り入れた一皿ひとさらは、シンプルながらも奥行きのある味わいが秀逸です。

さりげなく添えたソースのベースにはフォンやフュメを用いるなど、名店「シェ・イノ」でフレンチを学べばこその振れ幅の広さが光ります。炭火で香り豊かに焼きあげる肉は4〜5種が揃い、中から好みの肉を選ぶスタイル。肉汁溢れるジューシーな美味しさは“言わずもがな”ではないでしょうか。

イタリア料理

三和

東京メトロ南北線 白金台駅 293m

2.誇らず奢らず常に焼き鳥の高みを目指す、予約至難の実力店

鳥しき(東京都/目黒駅)

世界のVIPも認める焼鳥の名店「鳥しき」。「日本が誇る食文化の一つ“焼鳥“を世界に広めたい」との想いを胸に、日々研鑽を積むご主人の池川義輝氏。グローバルな視点を持ち、弟子の育成にも熱心な池川氏ですが、自らの牙城は常に焼鳥の王道から外れることなく、焼鳥本来の醍醐味を堪能させてくれます。

強火の近火で焼き上げる一串ひとくしは、ボリュームもたっぷり。焼きたてを頬張ると、炭火で焼けばこその薫香が広がり、口中に肉の旨みが溢れ出ます。この勢いのある旨さこそ焼鳥の本領。通いたくなる所以でもあります。鶏は、ストレスなく健康に育てた伊達鶏を使用。ジューシーで味わいのある肉質が特徴です。コースはお任せのストップ制となり、〆の親子丼も必食の佳品。

公式HP:https://torishiki-ichimon.jp/

3.伝統の味を踏襲しつつ日本人ならではの繊細さが光る四川の名店

蜀郷香(東京都/四谷三丁目駅)

オーナーシェフの菊島弘従氏は、あの四川料理の巨匠・趙楊氏に師事。10年に亘り、その伝統の味を学んだ数少ない後継者の一人です。「蜀郷香」をオープンして14年、毎年四川まで足を運び、現地で調達する調味料や乾物を駆使した料理は、四川料理の真髄を教えてくれます。ともすれば、“四川=辛い料理”と思われがちですが、決してそればかりではありません。

例えば「鶏豆花湯」。ペースト状にした鶏肉をおぼろ豆腐状に仕上げた四川の古典的なスープで、鶏ガラでとる清湯がベースのそれは、滋味溢れる実に優しい味わいの逸品です。乾燥キノコの蒸しスープなど手間暇かけたスープの美味しさにも菊島シェフの実力のほどが伺えます。予約をすれば、薬膳、精進の各料理もお手のもの。火鍋のコースも好評です。

四川料理

蜀郷香

東京メトロ丸ノ内線 四谷三丁目駅 A4出口より徒歩3分

20,000円〜29,999円

4.静かにブラッシュアップをし続ける日本料理界のホープ

新ばし 星野(東京都/御成門駅)

「新ばし 星野」の魅力。それは“進化し続ける味わい”ではないでしょうか。といっても、料理が斬新というわけではなく、むしろ至ってシンプルかつオーソドックス。ですが、料理にかけた見えない部分での切磋琢磨が素晴らしいのです。

例えば、旬のお椀。去年と今年では、見た目が大きく変わるわけではありませんが、出汁の取り方を少し変えてみたり、また、冬の真鴨や夏の天然鮎は焼き方を毎年いろいろ工夫してみたり等々、食材へのアプローチを日々研鑽しています。「京味」で12年間培った基礎をベースに、独自の感覚と食べ歩きから得た知見を加味して創り上げていく。それはまさに“星野芳明の味”。近年は、礼文島の雲丹や静岡の筍など、産地まで足を運び食材の探求にも余念がありません。また、最後の白飯の旨さも同店の楽しみの一つ。和食における米の重要さを改めて教えてくれるはずです。

5.アラカルトの楽しさを満喫できる気さくなシチリア食堂

ロッツォシチリア(東京都/白金高輪駅)

店内イメージ

痒いところに手が届くサービスのエキスパート・阿部努オーナーソムリエとシチリア料理の達人・中村嘉倫シェフ。この2人がしっかりとタッグを組んで始めたシチリア食堂が「ロッツォシチリア」。共に東京のシチリア料理店の草分け的存在である「トラットリア シチリアーナ・ドンチッチョ」出身です。

活気漲る雰囲気の中、手渡されたメニューを見れば、所狭しと書かれたアラカルトの数々に、思わず目が釘付けに。「仙鳳趾牡蠣のオイル漬けナスとオリーブのペースト」や「会津馬肉と焼茄子、松の実のタルタル」等々、日本の食材にシチリアのエッセンスを巧みにリンクさせるセンスの良さはさすが。元気を貰える一軒です。

公式Instagram:https://www.instagram.com/rozzo_sicilia/

有名フードライター・森脇慶子さんが愛してやまない「偏愛レストラン」をご紹介しました。お店選びの参考にしてみてはいかがでしょうか。

※こちらの記事は2024年03月18日作成時点での情報になります。最新の情報は一休ガイドページをご確認ください。

森脇 慶子

学生時代からの食べ歩きが昂じて食の世界に携わり、早や40年余り。
フードライターという言葉もない頃からこの道一筋。美味しいものへの探求心は、変わりません。
食は歴史、食は人をテーマに続けていければ、というのが目下の願い。「東京最高のレストラン」のメンバーとしても20余年のキャリアです。

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