家庭の食卓でも定番料理の天ぷら。美味しい揚げ具合は、素材の水分を“脱水”し、旨味を“凝縮”させるという、難しい技を必要とします。素材によって揚げる時間や衣の厚みに変化をつけるのはもちろん、同じ食材でも時期や産地によって調整して、理想の状態に仕上げるのがプロの技。今回は、そんな上質な食材の旨味を衣で封じ込める高い技術が光る、福岡の天ぷらの名店2軒を厳選しました。
1.歯ごたえの後にくる素材の旨味が絶品の江戸前天ぷら
天冨良 天孝(福岡県/薬院大通駅)
薬院大通駅から徒歩約3分の閑静な住宅街に佇む「天冨良 天孝」。淡い香りの太白胡麻油とサラダ油をブレンドした油を用いて、薄い衣で素材の旨味を封じ込め、香りを引き出しながら、サクッとした食感に仕上げる技が魅力です。先代と同じ、東京・銀座の名店「天一」で経験を積んだ店主の田中諭志氏は、江戸前天ぷらの伝統の技と味を受け継ぎながら、新たな天ぷらの可能性を追求。
旬の食材を使い、食材本来の旨味を引き出すため、揚げ油の温度や揚げるタイミングなどを計りながら、出来たてを提供します。大切にしているのが食感。サクッとした軽い口当たりを出すために、衣は泡を立ててふんわりと仕上げ、パスタのアルデンテのような噛み応えを生み出します。そんな天ぷらは、歯ごたえの後にくる素材の旨味が絶品です。
2.麻布の老舗が天ぷらに鮨を加えて、新境地を開く
博多 鮨 よこ田(福岡県/天神南駅)
西中州の裏通りにあるデルタウエストの1階奥に位置する「博多 鮨 よこ田」は、東京・麻布十番の名店「天冨良 よこ田」の博多店。ミシュランの星獲得8回の経歴を誇る本店の信念を引き継ぎつつ、博多の地で新境地を開きます。
新たに誕生したのは、料理長厳選の食材を揚げる天ぷらに加えて、上質な鮨を併せた贅沢なコース。素材や味だけでなく、彩りや香りにもこだわり、ゲストの満足度を徹底的に追及しています。魚介の香りが口の中に広がるのは、巧みな火入れと揚げ具合の結晶。サクッとした小気味よい食感と衣の香ばしさは、火力をまめに調整しながら最適な時に油から引き上げる、技の高さの現れです。
天ぷらはシンプルな調理法ゆえに大切なのは、食材の新鮮さ。どの店も素材や油にこだわり、食通達の舌を満足させてきた天ぷらの名店ばかり。薄い衣で素材の旨味を封じ込め、サクッとした食感に仕上げた天ぷらは絶品です。そんな職人技を満喫できる福岡ならではの天ぷらの真髄を、ぜひ味わってみてはいかがでしょうか。
※こちらの記事は2024年10月28日更新時点での情報になります。最新の情報は一休ガイドページをご確認ください。