フードライター森脇慶子がおすすめする四川料理店5選

“百味百菜”と言われるほど多彩な味わいと多岐にわたる調理法、そして辛味、香りの高さが魅力の四川料理。そんな四川の味を満喫できる話題店が、ここ数年、こぞってオープンしています。
と言っても各店各様。同じ四川でも、それぞれにシェフの個性が光る店が増えている点も見逃せません。そんな中から実力派の5軒をご紹介します

1.和の食材を取り入れた菰田流四川料理をコースで堪能する

4000 Chinese Restaurant(東京都/広尾駅)

あの「赤坂 四川飯店」で30年に渡り腕を振るい、総料理長まで務めた斯界の達人、菰田欣也氏がオーナーシェフの「4000 Chinese Restaurant」。
落ち着いた色調でまとめた店内は、テーブル席があるものの特等席はやはりカウンター席でしょう。

菰田シェフ自らが立ち、ゲストの食べるスピードや反応を鑑みつつサービスしてくれる醍醐味はまた格別です。
日本の食材を積極的に取り入れたコースは全13品ほど。「四川料理のベースは外すことなく、素材の持ち味を活かすよう僕流にアレンジしています」とは菰田シェフ。
例えば 青椒肉絲。和牛を用いたそれは、肉を低温調理で仕上げることでしっとりとした旨味を活かし、上に乗せたピーマンと新感覚の味を表現しています。

中国料理

4000 Chinese Restaurant

東京メトロ日比谷線 広尾駅 徒歩11分

20,000円〜29,999円

2.広東点心との融合を計る四川料理の新しいスタイル

中國菜 李白 RIHAKU(東京都/恵比寿駅)

“四川と広東点心の融合”をコンセプトに、2021年7月にオープンしたのが恵比寿「中國菜 李白 RIHAKU」。代々木上原「虞妃」で辣腕を振るった佐藤剛シェフの独立店です。
とはいえ、厨房を任されたのは「老四川 瓢香」出身の木村侑史シェフとその奥様の葵さん。佐藤シェフはオーナーとしてサービスを担当しつつ「メニュー作りや試作は3人の
共同作業です」とのこと。

毛筆そっくりのカレーパイから始まるコースには、おなじみの坦々麺や成都名物の夫妻肺片(牛モツの麻辣和え)といった本格四川料理もあれば、白子入り麻婆豆腐など和の食材を取り入れた一皿もありと緩急自在。
その合間に、見た目も味も秀逸な点心が登場。メリハリのついたコースの流れを楽しませてくれます。

中華料理・四川料理

中國菜 李白 RIHAKU

JR線 恵比寿駅 東口より恵比寿スカイウォークより徒歩8分

10,000円〜11,999円

3.伝統料理の継承者が編み出す辛さだけではない四川の味

蜀郷香(東京都/四谷三丁目駅)

「味の種類の豊富さ、辛さの深み。初めて趙楊さんの四川料理を食べた時の感動は、今も忘れられません」と、その場で趙楊氏に弟子入りしたのは菊島弘従シェフ。
それから10年、「趙楊」で修業を積み、荒木町に店を構えて10余年になる「蜀郷香」は“四川の伝統の香り”の意味を持つ店名通り、趙楊氏から学んだ四川の味を継承。

その教えを忠実に守りつつ、そこから自然と生まれてくる自らのテイストを表現しようとしています。大切にしているのは季節感。
そして、食材の持ち味を活かし切ること。例えば、鮮魚の豆板醤煮込み。魚の味を大切にしながらも、いたずらに味付けを控えるのではなく、辛味に拮抗できるだけの優れた食材を選び、後味に残る食材本来の旨味の余韻を引き出しています。

四川料理

蜀郷香

東京メトロ丸ノ内線 四谷三丁目駅 A4出口より徒歩3分

20,000円〜29,999円

4.自家製調味料から生まれる多彩な四川の味覚を満喫

仙ノ孫(東京都/西荻窪駅)

西荻窪北口から歩くこと7〜8分、商店街の一隅に佇む中国料理「仙ノ孫」。場所柄、町中華と思いきやさにあらず。ご主人の早田哲也シェフは、原宿の老舗「龍の子」出身。
その他、都内の中華料理店や中国本土でも修業を積んだ隠れた逸材です。日々の食べ歩きを始め、シェフ仲間との深夜の勉強会等々、中国料理への溢れんばかりの熱愛ぶりは人一倍。お約束の麻婆豆腐や坦々麺はもちろん、自家製渣海椒(トウモロコシ粉入り発酵唐辛子)を使った黒豚の蒸し物や青唐辛子で作る春雨の自家製青豆板醬煮込みなどなど、ずらりと並ぶマニアックなメニューの数々に、その片鱗が窺われます。
味の決め手は、なんといっても丹念に仕込む自家製調味料。ご夫婦2人で切り盛りする家庭的な雰囲気にも心惹かれます。

http://www.sennomago.com/

5.メニューの振り幅の広さも魅力のニューホープ

中國菜 四川 雪蓉

場所は吉祥寺。東急百貨店横の大正通りに面していながら、うっかりすると見過ごしてしまうほど目立たぬ佇まいの一軒。それが、四川料理界のニューホープ「中國菜 四川 雪蓉」です。
実家の印鑑店の半分を改装したという店内は僅か12席。四川の古民家で見かける青煉瓦を壁に配した店内は、こぢんまりとして、どこか私房菜(プライベートキッチン)を思わせる居心地の良さです。
メニューを開けば、地元三鷹野菜を使った四川ベーコンの炒め物から、五島列島産放血神経〆の鮮魚を乳酸発酵青菜ピクルスと共に煮込んだ“酸菜魚”、更には東北料理の羊肉串までと、その幅広いレパートリーに目を見張るはず。中には「〆鯖の青胡椒と春雨のヒスイソース」のような独自にアレンジした一皿もあり、舌を飽きさせません。また、予約をすれば「鷄豆花湯」といった四川の伝統料理も味わえます。

東京都 武蔵野市 吉祥寺本町 2-14-1
0422-27-5988

今回は、アラカルトが豊富な麺飯一杯でもOK!のカジュアル店からコースのみの高級店までを、幅広くラインナップ。
いずれ劣らぬ四川の名手が、自らの個性を花開かせている店ばかりです。シチュエーション
に合わせて選んでみるのも一興。辛味だけではない、味わい豊かな四川料理の真髄をぜひ。

※こちらの記事は2023年04月20日更新時点での情報になります。最新の情報は一休ガイドページをご確認ください。

森脇 慶子

学生時代からの食べ歩きが昂じて食の世界に携わり、早や40年余り。
フードライターという言葉もない頃からこの道一筋。美味しいものへの探求心は、変わりません。
食は歴史、食は人をテーマに続けていければ、というのが目下の願い。「東京最高のレストラン」のメンバーとしても20余年のキャリアです。

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