ビストロからモダンフレンチまで、東京のフランス料理シーンは百花繚乱。
ベテランシェフが変わらぬ味を誇るかと思えば、若手シェフの台頭まで層の厚さもまた、東京フレンチならでは。
そんな中から、今、足を向けてみたい3軒をご紹介します。
1.時代の先端を駆け抜けたベテランシェフの味をシンプルに味わう
ヌキテパ(東京都/五反田駅)
五輪候補の体操選手からプロボクサー、そしてフレンチの料理人と異色の経歴を持つ田辺年男オーナーシェフ。
1988年、恵比寿に誕生した伝説のレストラン「あ・た・ごおる」では、いち早くソースのないフランス料理を提供。三崎の魚や有機野菜を使ったシンプルな皿の数々でグルマンの舌を唸らせました。1994年、五反田は島津山の瀟洒な一軒家レストランに変わっても、そのスタンスは変わらず。
蛤の旨味に満ちた汁を逃さぬようにと、殻ごと真っ黒に焼いたタドンのような“蛤の炭火焼”や、5〜6種類の旬の魚を内臓まで丸ごと使って作る“磯魚のスープ”など往年のスペシャリテは必食です。
御歳73歳。2017年には「現代の名工」にも選ばれ、ますます意気盛んな田辺シェフ。土や西瓜のコースなど、料理人の発想を超えた野生の勘から生まれる田辺料理は未だ健在です。
2.青木姉弟が奏でるパリのエスプリを楽しむカウンターフレンチ
レフ アオキ(LES FRÈRES AOKI)(東京都/東銀座駅)
2021年9月、東銀座にオープンしたカウンターフレンチの名店「レフ アオキ」。
店は新しくとも、青木誠オーナーシェフはフレンチ一筋35年の大ベテラン。本場パリでは、姉の三代子氏と共に13年間レストランを営んでいた経歴の持ち主です。
“青木兄弟”の意味を持つ店名を感じさせる、姉弟の意気のあった家庭的な雰囲気の中、パリ仕込みのテイストを楽しめます。
料理は「シェフおまかせのフルコース」など他のメニューもあり、昼夜共に数週間ごとに変わります。「フランス時代が長かったので、日本の食材はまだ手探り状態」と青木シェフ。とはいえ、蝦夷鹿は北海道「エレゾ」から、牛肉は滋賀の「サカエヤ」と目利きの確かさはさすが。
魚介は「銀座 鮨青木」の2代目店主、兄・利勝氏に豊洲の仲卸を紹介してもらうなど抜かりはありません。“地鶏のバロディーヌ”を始め、クラシックをベースに現代の嗜好を加味した皿の数々は、素材本来の味を感じさせる芯のある美味しさが身上です。
3.フレンチ方程式から生まれる美食の解を堪能する。口福のひととき
l’algorithme アルゴリズム(東京都/白金高輪駅)
美食のためのフレンチ方程式、そんな意味を持つフランス料理店「アルゴリズム」。
知る人ぞ知る美食スポット白金北里通りにひっそりと店を構えて5年、その安定感のある美味しさでグルマンらの胃袋をしっかりと捉えています。
哲学めいた店名やiPadに表記された謎解きのようなメニューに、一瞬、難解な皿の数々を連想させますがご安心を。
料理は独創的でありながらも、何を食べていただきたいかがわかる明快な美味しさが身上です。それも、全国から取り寄せる上質な素材とそれに対する深い洞察力、そして緻密な計算と技術力があればこそ。
クラシックからモダンフレンチまで様々なガストロノミックレストランで研鑽を積めばこその実力を、僅か8席のカウンターで気さくに楽しめるのも嬉しい限りです。
8人で満席のこぢんまりとしたカウンターフレンチから瀟洒な一軒家レストランまで、その日のシチュエーションに合わせて自在に選べるのもグルメ都市東京の強み。
さて、今日は誰とどちらに?
※こちらの記事は2024年09月11日更新時点での情報になります。最新の情報は一休ガイドページをご確認ください。