和食を思わせる繊細な味わいの料理で、新宿の「OSTERIA OLIERA」を一躍人気店に押し上げた古井シェフが、2018年10月より「RISTORANTE PEGASO」の料理長に就任されたという話を聞きお伺いしました。

優雅な中にもどこか温かみを感じる、ホワイトを基調とした内装。地下や二階にも個室やダイニングスペースがあり、演奏会なども定期的に行われるそうですが、本日はシェフの調理がよく見えるカウンター席をお願いしました。
前菜は、蒸したホタルイカに蕗の薹(ふきのとう)のペーストとホワイトアスパラガスのムースを添えた一皿。軽く蒸すことで、ホタルイカの身にぷっくりと張りが出て甘みが増し、内臓の苦味が程よくなっています。この時期に蕗の薹やホワイトアスパラガスと合わせるのは定番ですが、ホタルイカ自体の食感を一番楽しめるようにペーストされているのが嬉しく、一緒に口に運ぶ量を自分で調節できます。
合わせるワインには、スウェーデン王室御用達シャンパーニュを。上品なフルーティーさが口の中に広がる辛口のシャンパーニュは、ホタルイカや蕗の薹の苦味とよく合います。生臭さなどを引き出すこともなく見事に調和が取れているので、食べ終わる前に飲み切ってしまいそうでした。
続いては、桜のチップで燻製した鰹のサラダ仕立て。驚くのは燻製の効かせ方が絶妙な塩梅であることです。
最近では専門店ができるほど燻製は料理に多用されていますが、香りが強すぎて素材の味ではなくて燻製の味を食べているような気持ちになることがたまにあります。
古井シェフの燻製は、素材を引き立てるためだけの最小限な効かせ方になっており、素材の周りの空気に燻製の香りをまとわせるような印象で、決して素材そのものの味を浸食してしまうことがありません。
噛めば噛むほど感じる鰹の赤身の美味しさを、僅かな燻製が最高のアクセントになって増幅させています。
鰹に合わせたロゼは、軽やかな果実味と柔らかい酸味が魚の生臭みを強調してしまうことなく赤身の血肉感ととてもよく合っています。本当によく考えられた組み合わせになっています。
お魚のメインは、カサゴの炭火焼に桜海老とズッキーニを使ったサフラン風味のソースです。特注の炭火台でじっくりふっくらと焼き上げたカサゴは、身と皮の間の旨味が体に染み渡るような美味しさで、カサゴの旨味をたっぷり含んだソースと交互に味わうと、なんとも言えない滋味深さが長く続きます。
カサゴの穏やかな旨味に合うようにと、ボディがしっかりとした厚みがあって少しだけスパイシーなフレーバーのある白ワインは料理を下支えしてくれて、するすると気持ちよく喉を通っていってくれました。外れのないペアリングです。
パスタは、手打ちのタヤリンをボロネーゼソースで。古井シェフのパスタは私が本当に美味しいと思うパスタで、こういったシンプルなメニューでその美味しさが遺憾なく発揮されます。タヤリンは口当たりがふわっと優しく、適度な柔らかさと弾力を感じながら、小麦の美味しさが嫌味なく香り、ソースともよく絡んで文句のつけようがありません。
合わせた赤ワインは、ほんのりとした甘さ、しなやかでいながら密度の高い果実味から溢れる酸味と渋味は、ボロネーゼソースとピッタリ。シンプルに肉と赤ワインは最高という気持ちにさせてくれます。
お肉のメインは、仔牛のイチボの炭火ローストを、シェリービネガーとバターのソースで。不安定な炭火を適切にコントロールして休ませつつ上手に焼き上げると、赤身肉は中までしっかりと火が入っているにもかかわらず綺麗なピンク色に。イチボを噛み締めてびっくりしたのは、歯を押し返してくる弾力。コリコリとゴリゴリの間位の食感で、筋繊維からとめどなく旨味が溢れてくるのです。
合わせるワインは、ミネラリーで力強いシャルドネの白ワイン。
また、ネッビオーロ主体の重厚で果実味が特徴的な赤ワインもお勧めいただきました。両ワインともイチボによく合い、肉を噛み締めながら味の変化を追うのも最高でした。
デザートは、苺のコンフィチュールと練乳のジェラートにモスカートのジュレを添えて。さっぱりとした甘さ、散らされたサクサクのタルト生地の食感も楽しい一皿をいただき、大満足のコースを食べ終えました。
お店での購入はお電話で要相談となりますが、ワインのネット販売も行っており、セラーに保管される800種前後の在庫から、多様なワインを料理に合わせて提供していただけるのも大きな魅力です。
毎朝市場に出向き、ご自身で仕入れをする古井シェフの確かな目利きと、素材に対しての繊細で控えめなアプローチがコースの全皿に貫かれており、始めから終わりまで美味しさに包まれた時間でした。
デートや食事会など、幅広いニーズに応えられるお薦めのリストランテです。
※こちらの記事は2023年04月17日更新時点での情報になります。最新の情報は一休ガイドページをご確認ください。