インタビュー|

大阪の名店「funachef(フナシェフ)」船岡勇太氏インタビュー。今の地球に必要な“循環型レストラン”とは

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大阪・JR天満駅より徒歩5分。アクセス便利な地に店を構える「funachef(フナシェフ)」。オーナーシェフの船岡勇太氏は、東京や大阪、パリなどミシュランの星に輝いた名店で研鑽を積み、2018年にはプロサッカー・本田圭佑選手の専属料理人として世界中を飛び回っていた人物です。今回は、「funachef(フナシェフ)」を語る上で欠かせない“循環型レストラン”というスタイルなどについて、船岡氏にお話を伺いました。
※本インタビューは、2021年5月18日に感染症対策の上で行いました。

船岡氏の世界をカタチ作った一つひとつの出会い

-船岡様がフランス料理の道を歩んだきっかけを教えてください。

子供の頃から食べることが大好きで、母と祖母の作る料理を楽しみにしていました。学生の頃、母の代わりに寝たきりの祖父にお粥を作ってあげたことがあったんです。その時、祖父から「おいしい、ありがとう」と言われたことが嬉しくて、料理って良いなと思いました。それがこの道に進むきっかけかな。フランス料理の道に進んだのは、父が入院していて、生きているうちにナイフとフォークを使った食事を経験させたかったから。今までお箸しか使ってこなかった父なので、自分の作った料理を食べてもらいたかったんです。

これまでの自分の料理の道は、かなりアップダウンが激しかったと思いますね。いろいろな方に、迷惑をおかけしました。そんな自分の人生を決定付けた人物が2人いて、その一人は大阪・本町にある「Restaurant La cime(ラ・シーム)」のシェフ高田祐介さんです。最初に働いた大阪のお店でご一緒させていただいて、料理のことだけではなく人としての考え方も教えていただきました。

「タテル ヨシノ」のシェフ吉野さんや「オテル・ド・ヨシノ」のシェフ手島さんにも迷惑かけましたね。誰よりも美味しいものが作れるという自負が大きかったんです。挨拶はしないし、態度も悪いし、最低でしたね。でもそんな自分を「タテル ヨシノ」のスタッフのみんなは見捨てないでいてくれて。だから、その中で自分を見つめ直して働くことができたと思います。

「オテル・ド・ヨシノ」で働いた後に、高田さんがご自身のお店をオープンするということで参加させてもらいました。高田さんがパリへ行かれる時に、「私がお店を開いたら一緒に働いてみるか?」という約束を覚えていてくれて、嬉しかったですね。そのお店が「Restaurant La cime(ラ・シーム)」。この時も高田さんに迷惑をかけましたね。東京でうまく進んでいたので、調子に乗っていたんですよね。「相手を思う気持ちがなければ、料理人失格だ」とか、この時に高田さんからいただいた言葉は今、僕の金言となっています。

プロサッカー本田選手と世界を渡って感じた思い

-自身の人生に大きな影響を与えてくれたもう一人が、プロサッカー本田圭佑選手だそうですね

2018年に、ひょんなきっかけから紹介していただき本田圭佑さんの専属シェフをすることになったんです。ご本人から直接電話がきた時は、びっくりしましたね。人を大切にすること、常に夢を持つこと、ネガティブな時こそポジティブになること、困っている人がいれば立場関係なく平等で助けること、これらを本田さんの横で学びました。

本田さんが話すことの多くは、これまで吉野さんや手島さん、高田さんにいただいた言葉と同じだったんです。20代の自分に言っていただいた言葉が、一つになるような体験でした。一流の人の共通点が見えましたね。

“人と環境と地球の循環”を大事にした料理を提供したい

本田選手との帯同で訪れたカンボジアやオランダで、“循環型レストラン”というスタイルを考えたとか。

“循環”とか、もともと興味がなかったんです。良い素材を美味しく料理できれば良いという考えでした。でも、オランダを訪れた時に現地のシェフと日本の“モッタイナイ”精神の話をしたら、「それって普通なんじゃない、私たちは朝に顔を洗うくらい当たり前のことだよ」と言われたんです。オランダでは、日本よりフードロスに関することが進んでいて。例えば、日本のブッフェは卵焼きが一つ足りなかったら、余って捨てることを考えずにたくさん追加しますよね。でもオランダだと、余ったものを捨てずに販売するためのアプリがあったりするんです。日本がやっていることは特別なことではなく、逆に遅れていたことなんだと気付かされました。

それから、アムステルダムでフードロスを考えて食べ歩きました。結局、貴重な食材をどんなシェフが使用するのかが重要ということに行き着いたんです。傷が付いた食材は見た目が悪いから使えないと判断する人がいる一方で、それをあえてそのまま使ったり、スープや別の調理法で美味しく調理する人がいる。後者が本当の料理人だと気が付きました。

オランダでは料理以外にも刺激を受けました。例えば、ある街に古くからあった銀行は、外観をそのままにカフェになっているんです。それがとてもかっこよくて。古いからと壊しては、資源の無駄ですよね。フードロスも大事ですけど、地球規模で考えたら、限りある資源は使い捨てでなくもう一度使わなければならない。ここで僕は、サーキュラーエコノミー(廃棄を出さない資源循環型経済)という言葉に触れたんです。

カンボジアを訪れた時、食べ物がないから生ごみを漁る子供たちがいました。その中で、自分より困っている人がいたら分け与える人もいたんです。僕たちがこのままの生活を続けたら、食料や資源が乏しいカンボジアの子供たちはどうなるのだろうか。それで3R。リデュース(減らす)、リユース(再利用する)、リサイクル(再資源化する)の重要性を学んだんです。

食材がシェフと出会って変わるように、資材もそして自分たち人間も、誰と出会うかで価値が変わってくる。それがこの「funachef(フナシェフ)」で表現したい、“人と環境と地球の循環”なんです。この共存関係にあるトライアングルで、一つでも乱れると全体が壊れてしまうと思っています。でもこの中で一番の悪は人間なんですよね、地球で後から生まれたのに我が物顔をしている。共存関係だからこそ、僕たちは乱れず環境や地球のためにできることをしなきゃいけないんです。SDGsや循環型社会は、今いろいろ話題に上っていますが、表面だけではなく何を目的としているかを考えることが大切かなと思います。

-船岡様の今後の目標などをお聞かせください

人のために、人を元気にさせる料理をこれからも作っていきたい。この思いは、本田圭佑さんの専属料理人だった時に気付かせてもらったことなんです。高田シェフや本田圭佑さん、たくさんの方々にいただいた恩をこれからも返していきたいと思っています。

【プロフィール】

船岡 勇太(フナオカ ユウタ)
1985年、滋賀県土山生まれ。東京の「タテルヨシノ」や、パリの「ステラマリス」大阪の「La Cime(ラシーム)」など名だたる名店で研鑽を積む。その後、大阪・中之島のフレンチレストラン「DUMAS(デュマ)」のシェフに就任し、ビブグルマンを獲得。2018年からは、プロサッカー・本田圭佑選手の専属料理人に。本田選手と各国を飛び回った2年後、大阪に自身のフランス料理店「funachef(フナシェフ)」をオープンする。2021年10月には、船岡氏がコロナ禍で思い描いていた新しいお店がオープン。
<店舗情報>
「Funachef」(フナシェフ)
大阪府大阪市北区黒崎町6-4 2F
・JR天満駅より徒歩5分
・地下鉄堺筋線扇町より2番A出口徒歩4分
・地下鉄谷町線中崎町、天神橋筋六丁目より徒歩6分
http://www.funachef.com/

【編集後記】
家族をとても大事にされていた船岡様。地球を大切にするというと途方もないことに聞こえるかもしれませんが、船岡様にとって家族を大切にするくらい身近なものだということを感じました。いかにして“人と環境と地球の循環”のトライアングルを壊さないようにするか。船岡様の行動に、自分でも何かできないかを考えさせられるインタビューでした。

吉田ふとし

人材業界系メディアの編集・制作を経て、現職。小学生の娘をもつ1児の父。アルコール(日本酒、焼酎、ウィスキー)を好むのは祖母譲り。読者のみなさまには、気づきのある多くの情報をお届けいたします。よろしくお願いいたします。

【MY CHOICE】
・最近行ったお店:ジランドール
・好きなお店:広東料理 センス
・自分の会食で使うなら:「赤坂浅田」
・得意ジャンル:和食 / バー
・好きな食材: ジビエ、白子

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