「誇味山」込山秀規氏に聞く、一頭買いのパイオニアが伝えたい焼肉の楽しみ方

2019年1月、西麻布にオープンした焼肉店「誇味山」。一頭買いの黒毛和牛を、店オリジナルのタレでいただくスタイルは、店主・込山秀規氏が立ち上げに携わった東京・駒沢の名店「Cossott’e」時代から続くもの。「誇味山」では、肉にマッチするワインを充実させるなど、新しい提案にも余念がありません。今回は、「誇味山」が追求する焼肉の楽しみ方について迫るべく、店主の込山氏を訪ねました。

27歳で飛び込んだ焼肉の世界

―焼肉業界に入ったきっかけについて

大学を卒業してからは企業に勤めていたのですが、27歳の時に会社を辞め、東京・用賀にある「ら・ぼぅふ」で店長として働き始めたことが直接のきっかけとなりました。

―歳を重ねるごとに、焼肉への思いが高まっているということでしょうか。

実は、そうでもないんです。もちろん、焼肉を食べるのは大好きでしたが、お店をやろうという思いを強く持っていたわけではありません。1997年と20年以上前のことですが、今振り返ると結構軽い気持ちで始めましたね。
「ら・ぼぅふ」のオーナーの方とは、僕が高校・大学時代にアルバイトをしていたころからの知り合いだったので、今思えば縁があったのでしょう。

当時は珍しい、一頭買いで注目を集める

―「ら・ぼぅふ」はその後、一頭買いで注目を集め、人気店となっていきました。まだ今ほど、一頭買いが浸透していない時代ですよね。

「ら・ぼぅふ」でも、始めた当時は各部位をバラバラに仕入れていました。
なぜ一頭買いを始めたのかと問われると、明確な理由があったわけでもないので困ってしまうのですが……。
当初は、どうしてもお店が閑散としていた時期がありました。それで、色々とチャレンジしてみようということで、一頭買いを始めたんです。正直、あまり深くは考えていなかったですね。

―一頭買いはチャレンジングな行動でしたが、その後立ち上げた、駒沢の「Cossott’e」や麻布十番の「Cossott’e sp」での躍進にも繋がったのではないでしょうか。込山さんのキャリアを語る上で欠かせないものとなりました。2011年ごろですかね、「Cossott’e」には私もお邪魔したことがあります。

有難うございます。
結果として、提供価格がだいぶリーズナブルにはなりました。お客様には喜んでいただけたのではないでしょうか。
個人的なことになるのですが、一頭買いをしたおかげで各部位の処理の仕方を一から学ぶことができました。教えてくれる人がいませんから、試行錯誤の連続でしたね。そこが一番大変だったかもしれません。

牛を一頭まるごと買い取るため、特定のパーツを余らせないように、最適な切り方についても工夫を重ねることができました。その後、新しいお店を立ち上げる際にも活かされたと思います。

「誇味山」ならではの、焼肉の楽しみ方

―今年1月からスタートして半年、すでに予約困難店として支持を集めています。焼肉を極めた「誇味山」が提案する、焼肉の楽しみ方についてお聞かせください。

お客様にとって、居心地のよい空間を提供していきたいですね。
「誇味山」では味の追求だけでなく、設えやホスピタリティを通して、リラックスしてお食事を楽しんでもらえるお店を目指しています。
美味しいお店はたくさんありますから、「誇味山」独自の提案がないといけないと考えています。
実はうち「西麻布で一番、西麻布らしくないお店」なんて、お客様から言われることもあるんです。

建物の外観も相まって、外から見るとラグジュアリーな雰囲気が漂うのですが、入ると意外と落ち着ける空間なので、そのギャップを楽しんでいただきたいですね。

デザイナーさんには、木の温もりを感じられる、温かみのある空間に仕上げていただきました。「Cossott’e sp」のスタイリッシュな雰囲気を知るお客様は、少し驚かれるかもしれません。
もちろん「Cossott’e」時代同様、「タレ」にこだわっていますから、味についても自信を持って提供しています。
「美味しいは当たり前、誇味山に来ることが楽しい」と言ってくださると、本当にうれしいですね。

―通常のコースでも、2~3時間とかなり長めに設定していますね。

長い時間楽しんでいただくこともあり、「誇味山」では特にワインのラインアップに力を入れています。現在はボトルで常時20種類ほど、フランス産のワインを中心に揃えています。
ソムリエはおりませんが、お世話になっている酒屋さんとも打ち合わせを重ねて、銘柄を決めています。

オープンして半年経ち、お客様の好みも把握してきました。
カウンターだけでなく、テーブル席でもスタッフが赴いてお肉を焼くので、お客様の反応がダイレクトに伝わってきます。そういった部分を、接客にどんどん反映していきたいですね。
例えば白はシャルドネが多いから、ソーヴィニヨン・ブランをいれてみようかなというように、品種も豊富に取り揃えていきたいと考えています。

「若手が活躍できる場を作りたい!」

―「誇味山」として、今後チャレンジしたいことについて

まだ構想の域を出ないのですが、もう少し単価の低いお店をやりたいという思いが強いですね。若手のスタッフも多いので、彼らが主体的に運営できるお店を出したいと考えています。

技術の継承や独立支援にも関わることですが、僕としては、やるなら真面目にやってほしいし、独立したいのであればできるかぎり応援してあげたいと考えています。
そういう意味でも、もう少し単価を下げたお店を出して、若手が活躍できる場を作りたいですね。
お客様にも、ぜひ楽しみにしていただきたいと思います。

業界では、一頭買いのパイオニアとして知られる込山さん。肉の処理などを独学で学ばれたと知り、驚きました。「ら・ぼぅふ」の店長に就任した1997年から20年以上の歳月が経ち、現在は若手スタッフの育成にも気を配っています。今後は、その確かな技術の継承にも注目したいと思います。

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込山秀規 プロフィール

27歳の時に脱サラし、焼肉店『ら・ぼぅふ』(用賀)の店長に就任。肉のカットを独学で習得し、当時では珍しいA5ランク牛の一頭買いを行う。人気店として一躍注目を集めることに。後にA5ランクの黒毛和牛にこだわった「Cossott’e」を東京・駒沢に、「Cossott’e sp」を麻布十番にオープンした。3年ほど現場を離れ、2019年1月に独立し「誇味山」を開業。

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焼肉

誇味山

東京メトロ千代田線 乃木坂駅 徒歩5分

15,000円〜19,999円

アクセス
住所 東京都港区西麻布1丁目15-9 ラ・アルタ西麻布1F

※こちらの記事は2020年10月23日更新時点での情報になります。最新の情報は一休ガイドページをご確認ください。

謝 谷楓

「一休.comレストラン」のプレミアム・美食メディア「KIWAMINO」担当エディター。ユーザーの悩み解決につながる情報を届けられるよう、マーケットイン視点の企画・編集を心掛けています。

前職は、観光業界の専門新聞記者。トラベル×テック領域に関心を寄せ、ベンチャーやオンライン旅行会社の取材に注力していました。一休入社後は「一休コンシェルジュ」を経て、2019年4月から「KIWAMINO」の担当に。立ち上げを経て、編集・運営に従事しています。
【MY CHOICE】
・最近行ったお店:和田倉、SENSE
・好きなお店:六雁
・自分の会食で使うなら:茶禅華
・得意ジャンル:日本料理
・好きな食材:雲丹/赤貝

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