ブックマークしたい鮎を使った名店のスペシャリテ 京都編

海から遠く、新鮮な海産物が手に入りにくいため、川魚料理が発達し、独自の川魚料理の文化が育まれてきた京都。6月に解禁を迎える鮎は、京都の夏の風物詩。シンプルに塩焼きにするのが一番美味しいといわれる鮎ですが、今では、多くの料理人が新しい鮎の味わい方を披露。今回は、鮎料理を堪能できる京都の名店を厳選して紹介します。

1.風雅な数寄屋造りの宿で味わう野趣溢れる鮎料理

美山荘(京都府/出町柳町)

山里の野趣と、都の風雅を併せ持つ歴史ある数寄家造りの宿で、4代目の店主、中東久人氏自らが山に入って探した自然の恵みを堪能できる「美山荘」。京都市街から車で約1時間、俗世を忘れる別世界、花背で味わう野草や山菜、茸のほか、野鳥や猪、鹿や熊などの山の幸尽くしは、まるで食の桃源郷です。

夏になれば、宿の脇を流れる桂川の上流で獲れた鮎が、炭火でていねいに焼き上げられ、ほかでは味わえない豪快な夏の逸品として登場。鮎の押し寿司や巻き寿司、鮎の姿寿司、子持ち鮎など、中東氏がこだわるのは鮎のあらゆる美味しさを表現すること。フランスで経験したサービスの仕事で学んだ食文化から、中東氏が創り上げる“摘草料理”は、五感に染み入る唯一無二のご馳走です。

懐石・会席料理

美山荘

線 駅 【自家用車利用の場合】京都市中心部から約1時間 ※冬季期間は、スタッドレスタイヤの装備を必ずお願いいたします。

2.月毎に変わる創作日本料理を、洗練された隠れ家で

東山 吉寿(京都府/清水五条駅)

東山の静かな路地に佇む「東山 吉寿」。京都の大人の隠れ家店となる最大の魅力は「タケノコ×中華」「月の輪熊×丹波篠山の猪」など、毎月変わる料理コンセプト。ジビエから中華まで、培ってきた和のベースに独創的なセンスと卓越した技術で、鈴木吉寿氏ならではの創作料理を繰り出します。

はずせないスペシャリテは、鮎のフリット。秋には子持ち鮎で提供されることも。利き酒師でもある店主が鮎料理に合う日本酒を厳選、さらにはワイン、シャンパン、ウイスキーなどで自在にマリアージュ。鮎の味わいがさらに深みを増します。どんなジャンルの料理にも合うよう、バーを模した和洋折衷のカウンター。江戸切子の酒器やオールドバカラのグラスなどの器に映えるコースに、鈴木氏の話術が楽しい余韻を残します。

割烹・小料理

東山 吉寿

京阪本線 清水五条駅 出入口4、 徒歩9分

20,000円〜29,999円

3.西洋料理の学びから生まれた鮎の変化球

祇園にし(京都府/祇園四条駅)

伝統の日本料理に、新しいエッセンスも加えた京会席を楽しめる「祇園にし」。店内に足を踏み入れると一枚板のカウンター席や、和と洋が調和したモダンでお洒落なテーブル席が、ジャンルを超えた食を引き立てます。「日本料理 とくを」で伝統的日本料理を学んだ西隼平氏は、フォアグラやトリュフなどの洋の素材に興味を持ち、イタリアンやフレンチでも修業。京都の清水焼を中心とした選りすぐりの器で華を添え、新たな世界観を創出しています。

食材の輪郭を際立たせた八寸は、目にも麗しいコースのハイライト。ブランド米「京式部」を使った鮎の手巻き寿司など、こだわりが詰まった鮎料理が季節に応じて供されます。ソムリエと日本酒の利き酒師の資格も持つ、西氏が合わせたる日本酒やワインのマリアージュで味わう変わり鮎は、また格別。わざわざ足を運びたい一軒です。

懐石・懐石料理

祇園にし

京阪線 祇園四条駅 徒歩8分

4.多国籍な食材や調理法で創り出す和食の進行形

ひがしやま司(京都府/東山駅)

閑静な文化エリア、京都・東山岡崎に2021年にオープンした「ひがしやま司」。「祇園 さゝ木」「祇園丸山」での16年間の経験をもとに、多国籍の食材や調理方法も組み入れた独自のエッセンスで、新たな和食の道を切り拓く宮下司氏。奇を衒わず、新たな美味しさを追求する一方、意外性のある味や盛り付けを信条としています。「煮はまぐりのシャリ粥」は、その一例。にぎり寿司と出汁茶漬けを一度に味わう斬新なアイデアが随所に顔を見せます。

塩焼きで出されることの多い鮎は、生春巻きとして登場。若鮎を天ぷらにして大葉や玉ねぎ麹と共にライスペーパーで巻き、鮎の香りや苦味を包みこんだ新鮮な鮎料理です。三条通りに面したビルの2階の落ち着いた空間では、新機軸の料理でゲストをもてなす宮下氏の和食の進行形が生まれています。

懐石・会席料理

ひがしやま司

京都市営地下鉄東西線 東山駅 徒歩2分

20,000円〜29,999円

5.若き才能による、美山の野性味を感じるジビエ料理

Gibier MIYAMA(京都府/祇園四条駅)

京都北山、ジビエ料理専門店「Ristorante miyama162」が、2020年10月祇園に「Gibier MIYAMA」として移転オープン。素材の良さが最大限に引き出されるのは、料理人のかける巧みなひと手間。その技を、生産者の想いと共に食べ手に届けたい、と京都の山間部、美山で育った神田風太氏は、地元で獲れた上質のジビエを使用した料理で美食家の舌を唸らせます。美山荘で働き始め、ジビエと出会ったのが、19歳。以来、ジビエ道に邁進し、若き才能を発掘するコンテストでも入賞。

お店では、自慢のジビエ4品が出たあとに、京野菜や山菜のほか、鮎、モロコなどの川魚といった約30品のアラカルトメニューから、好きなものを好きなだけ食べることができます。なかでも、レンコンのフリットを合わせて白味噌でいただく子持ち鮎の炭火焼きは、ジビエの流れを汲む野趣に溢れ、ぜひ味わってみてほしい逸品です。

ジビエ料理

Gibier MIYAMA

京阪本線 祇園四条駅 徒歩5分

15,000円〜19,999円

獲れたばかりの生きた鮎は、スイカのような独特な匂いがします。黄金色に輝く美しい天然の鮎。京都では、そんな獲れたての鮎のさまざまな料理を堪能できます。今年の夏も、京都の鮎料理を楽しみたいですね。

※こちらの記事は2023年08月22日更新時点での情報になります。最新の情報は一休ガイドページをご確認ください。

Miki D'Angelo Yamashita

コロンビア大学・パリ政治学院修士。新聞社を経てフリージャーナリスト。専門は別だが、趣味が高じて食担当記者に。延べ3000人料理人インタビュー、約30カ国で食関連を取材。料理本も多数編集。

【MY CHOICE】
・最近行ったお店:未在 / 晴山 / レヴォ /茶禅華
・好きなお店:ギ・サヴォワ / Restaurant KEI / 祇園さゝ木 / 宮坂
・自分の会食で使うなら:ル・ブルキニオン / ラルジャン / 乃木坂しん / 蕎麦おさめ
・注目しているお店:お料理ふじ居 / 日本料理 研野 / ELEZO ESPRIT
・得意ジャンル: スイーツ
・好きな食材:麺類

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