「清流の女王」と言われる鮎。ふっくらとした身、香ばしい皮の香りが魅力で、和食料理店での提供を中心に、多くの方に愛されています。鮎の旬は6月から8月頃となっており、夏の訪れを季節の変化と共に、鮎をいただきながら感じられます。今回は東京都内の、鮎を使ったスペシャリテがあるお店を5軒、ご紹介いたします。
目 次
1.炭火で炙り滋味を引き出す、鮎とジビエを中心とした天然素材
たでの葉(東京都/外苑前駅)
外苑西通りの人気店が立ち並ぶエリアの一角、「たでの葉」は2017年にオープンしました。黒い戸を開くと、中央に据えられた囲炉裏が目に入ります。カウンター席は囲炉裏を囲むようにコの字型となっており、ここが南青山であるという事を忘れてしまうような和の空間が広がっています。
「故郷の父が獲っていた鮎をメインに使ったお店を出したかった」と語るのは、熊本出身の店主・小鶴清史氏。鮎は、大ぶりの物を囲炉裏の横火で約50分かけてじっくりと火を入れ、炉端焼きとして提供します。光沢が美しく、躍動感あふれる鮎が香ばしく焼き上がる様は、見ているだけでも心躍ります。
焼き立てにかぶりつくと、皮のパリッとした気持ちよい食感と、身の何とも言えない柔らかさがたまりません。小鶴氏はジビエ料理人気店で料理長を務めていた経験もあり、狩猟免許も所持。鮎以外にも多様な料理をいただけ、お酒も日本酒やワインなど幅広く揃っています。
2.季節の移ろいを五感で味わう、至福の日本料理
銀座 小十(東京都/銀座駅)
飲食店激戦区である銀座において、国内外から長年高い評価を集め続けている「銀座 小十」。店名は店主・奥田透氏と親交の深かった、唐津焼の名匠である西岡小十氏にちなんで名付けられました。樹齢270年の檜を使ったカウンター席の他、個室の用意もあり会食や接待にもうってつけです。
炭火で1時間ほどかけてゆっくり焼き上げる鮎の塩焼きは、名物料理の一つ。表面に染み出した魚の脂が時間を掛けて揮発していき、鮎の皮を揚げたてのようなパリパリと気持ちのよい食感に導きます。内臓から生臭みを感じる事はなく、身の美味しさを引き立てるように濃縮された苦味が、まるで丁寧に仕込まれた一品料理であるかのように深い滋味を感じさせてくれます。
一緒に提供されるのは、日本酒ではなく黒ビールで、内臓の苦味と黒ビールの苦味がぴたりと合う不思議な感覚。苦味が合わさる事で僅かな甘みも感じられ、鮎の魅力を味わい尽くせる見事なマリアージュです。
3.情緒に富んだ和の空間で楽しむ、四季を感じる京懐石
よし澤(東京都/六本木駅)
人気飲食店が集まる六本木ヒルズの5階、ウエストウォーク内にお店を構える「よし澤」。ビルの中にありながらも風情ある佇まいで、非日常感あふれる演出が行き届いた正面玄関がお出迎え。暖簾をくぐると石畳の床が続き、行灯や手水鉢まで配置されるこだわりようで、海外からのゲストにも喜ばれています。
内観は京都の町家をイメージした凛とした設えで、料理が作られるのを見て楽しめるカウンター席だけでなく、ゆっくり過ごせる個室もご用意。店主・吉澤定久氏は食材ありきという考えを体現し、素材の持ち味を最大限に引き出すその手腕は、多くのゲストから絶賛されています。
締めのご飯は土鍋で炊き上げ、夏には鮎の炊き込みご飯が提供されます。ふっくらつやつやとしたお米に、鮎の香ばしさが移っており、思わずうっとりとしてしまいます。口の中で噛み締めると美味しい余韻がじんわりと広がり、箸が止まらなくなる事でしょう。
4.“天ぷら食って蕎麦で〆る”、静岡野菜と魚介の魅惑の共演
蕎ノ字(東京都/人形町駅)
粋な下町情緒が色濃く残る、人形町の街にお店を構える「蕎ノ字」。足元には青い絨毯が敷かれ、心地よい緊張感の中にも木の温もりを感じられる、穏やかな雰囲気に包まれています。
店主・鈴木利幸氏は、地元静岡県で開業し“天ぷら食って蕎麦で〆る”をコンセプトに掲げ、絶品の天ぷらと蕎麦を一度に味わえるお店として、たちまち人気店の仲間入りを果たしました。東京への移転後もその料理は益々冴え渡り、甘さと香りが際立つ島田人参や、熱を入れると鮑のような食感になる玉取茸など、静岡ならではの食材が多用されています。
鮎の天ぷらは頭から尻尾まで、丸ごと食べる事が可能。一口食べるとホクホクの身と香ばしい湯気があふれ出し、食べる場所によって内臓の苦味が加わり、絶妙なグラデーションが生まれます。締めにいただく二八の蕎麦も隙のない逸品。実家である蕎麦店での修業の成果が、遺憾なく発揮されています。
5.日本とフランスの食文化を融合し、伝統を進化させるフレンチレストラン
restaurant Nabeno-Ism(東京都/浅草駅)
浅草駅からほど近く、隅田川沿いの一画に建つ一軒家レストラン「restaurant Nabeno-Ism」。エントランスの扉を入ると、ガラスの向こうに広々としたキッチンが広がります。ダイニングスペースの2階・3階にはカウンター席とテーブル席があり、お一人様から会食まで、幅広い用途で使い分ける事ができます。窓からは至近にある東京スカイツリーが望めます。
エグゼクティブシェフCEO・渡辺雄一郎氏は「ジョエル・ロブション」のエグゼクティブシェフを長年勤め上げ、満を持して独立を果たした人物。その開業はグルマン達の間で大きな話題となりました。
日本の四季を表現し、江戸伝統野菜とフランス料理のエスプリを組み込んだ、独自の解釈が紡ぎ出す料理の数々。夏の人気メニュー「鮎のポワレ」は米粉をまとわせ、太白胡麻油で香ばしく焼き上げていきます。一口目は鮎の繊細な持ち味を活かした仕立てを楽しみ、二口目は頭や内臓を使って仕上げたパテと合わせて。開業時から7年間継ぎ足して作っているというパテが、滋味深い味わいを楽しめる絶品の一皿を演出します。
いかがでしたでしょうか。鮎という食材一つを取っても様々なアプローチがあります。そのどれもが鮎の新たな魅力を教えてくれ、料理の奥深さを感ぜずにはいられません。料理人の数だけ、まだまだ知らない美味しさに気付かせてくれるお店が、この世界にはもっとある筈。そう思うと、思わず外食したくなってきます。皆様も自分だけの美味しい鮎を、探しに行きませんか。
※こちらの記事は2023年04月20日更新時点での情報になります。最新の情報は一休ガイドページをご確認ください。