油の中で心地よい音を立てて揚げられていく天ぷら。熱々の天ぷらを口に入れた瞬間に広がるカリッ、サクッ、ジュワッという食感は堪らないですよね。素材によって揚げる時間や衣に変化をつけるのはもちろん、同じ食材でも時期や産地によって微調整して、理想の状態に仕上げるのが職人技です。今回は、そんな技術力が光る、一度は行きたい東京にある天ぷらの名店を5軒ご紹介します。
目 次
1.銀座の地で30年以上愛され続ける天ぷらの名店
てんぷら近藤(東京都/銀座駅)
銀座の地にて30年以上愛され続ける天ぷらの名店「てんぷら近藤」。店主・近藤文夫氏は、天ぷらという料理を国内外問わず広く知らしめた立役者の一人です。今でこそ魚介のみならず、野菜を天ぷらに使うのはポピュラーですが、それも昭和の時代から近藤氏を始めとする既成概念にとらわれない料理人達が、常に新しい形を模索してきたからこそ。
70歳をとうに過ぎた現在でも自ら仕入れに赴き、カウンターに立ち続ける近藤氏。「美味しいだけでなく未来につながる感動を」と、常に謙虚で真摯な姿勢に心打たれます。あまりにも有名なメニューである「さつま芋の天ぷら」は、10センチを超える切り株のようなさつま芋を、30分程度の時間をかけてじっくり揚げてから提供。揚げたての天ぷらを口に運ぶと、みずみずしさと上品な甘さに思わずため息がこぼれます。
2.出汁、油、米にこだわった、渾身の「天ぷら会席」
天雅(東京都/中目黒駅)
中目黒駅より徒歩約4分のところに店を構える「天雅」。店主 ・足木雅彦氏は、ご実家である愛知県・豊橋にある天ぷら屋と名古屋の日本料理店「小久保」で学び、約20年の修業を経て東京にて独立されました。料理は出汁、油、米にこだわった、天ぷら料理と日本料理を楽しめる「天ぷら会席」を提供します。
天ぷらの名手であったお父様のスペシャリテ「うにの天ぷら」も絶品ですが、足木氏の料理へのこだわりは、並々ならぬものがあります。出汁は、毎朝「北海道産羅臼昆布」と「枕崎産本枯節」で引き、お椀や天つゆなどに使用。油は胡麻油特有のコシが強い「太白胡麻油」と上品な香りの「大香胡麻油」をブレンドします。自信を持って提供する米は、地元・豊橋産「女神のほほえみ」。プリっとした触感が天丼にも天茶漬けにも合います。
3.日本酒にも合う洗練された天ぷらに酔い知れるひととき
てんぷら前平(東京都/麻布十番駅)
「てんぷらと和食 山の上」で20年の修業を積んだ、前平智一氏が開業した「てんぷら前平」。食材に対する探求心がとても強く、人気のメニューも枚挙に暇がありません。芽ネギと小柱を海苔で巻いて揚げた「芽ネギ小柱」は、芽ネギのサクサクとした食感と、火が通った小柱が醸す甘みのバランスの妙が人気。平らに押し潰した塩漬けのホヤを、白イカとクチコを巻いて揚げた「ホヤの天ぷら」は、日本酒 との相性が絶妙なオリジナルメニューです。
日本酒をこよなく愛する前平氏がコンセプトに掲げるのは、日本酒に合う天ぷら。なかでも、様々な天ぷらと相性の良い日本酒の「王祿」は、まず試したいお酒の一つ。日本酒はもちろんのこと、ソムリエが提案してくれるワインも豊富。カウンター9席のみのゆったりとした設えの中で、天ぷらとお酒のマリアージュに心から酔いしれましょう。
4.名店の技術とこだわりを受け継ぐ、二代目の新たな挑戦
天冨良 よこ田(東京都/麻布十番駅)
軽妙なトークと卓抜した技術の天ぷらが人気の「天冨良 よこ田」。ミシュランガイドにて8年間連続で一つ星を獲得する天ぷらの名店です。2021年からは主人・横田恒夫氏の技術と信念を継承した2代目大将が腕を振るいます。多くのお客様から支持を集めているのは、仕立てがシンプルだからこそ弛まない丁寧な仕込みと改善が、当たり前のように繰り返されてきた産物なのでしょう。
コースはおまかせのみ。こだわりの食材は、長年通い続ける河岸の馴染みの仲買より仕入れます。同店が天ぷら屋で初めて調味料にカレー塩を用いたことは有名ですが、美味しい天ぷらをシンプルに塩レモンでいただくのも絶品です。特にレアな火加減で揚げられた海老と塩レモンの組み合わせは、思わず即座にお代わりしたくなるほど厳選した食材を薄い衣で揚げているので、食べ疲れすることがありません。
5.職人歴半世紀を超える、匠が揚げる江戸前天ぷら
てんぷら 深町(東京都/京橋駅)
かつて「てんぷらと和食 山の上」で料理長を務めた深町正男氏が独立開業した「てんぷら 深町」。食材を吟味した江戸前の天ぷらと言えば、料理人の道を歩んで半世紀の深町氏の名前が真っ先にあがるでしょう。特注の朱色の盆が並ぶ檜造りのカウンター席が、程よい緊張感と高揚感を演出。現在は二代目の長男・一真氏と次男・純央氏が加わり、家族で天ぷらの名店を盛り立てています。
季節ごとに旬の食材を惜しみなく豪華に盛り付け、油にも徹底的にこだわった天ぷらは胃もたれするようなこともなく、最後まで美味しくいただけます。魚介はプリプリと弾力があり、野菜はみずみずしい水分に溢れて、それぞれの食材に新たな生命が吹き込まれたかの様です。包み込まれるような安らぎを感じる雰囲気の中で、熟達の職人技に心もお腹も満たされましょう。
いかがでしたでしょうか。揚げたてを口に頬張った時の幸福感は、天ぷらならではの魅力ですよね。天ぷらが国内外問わず多くの方に愛されるようになり、日本が誇る料理ジャンルの一つになったのも、偉大な先人達の努力があってこそ実現できたのではないでしょうか。名店でいただく幸せの味、皆様もぜひご賞味ください。
※こちらの記事は2023年11月29日更新時点での情報になります。最新の情報は一休ガイドページをご確認ください。