【名店グルメ】名古屋「うな善」関東式・名古屋式うなぎの食べ比べができる、創業60余年のうなぎ屋さん

名古屋を訪れたら数ある名物のなかでも、まず食べたくなるのが「うなぎ」ではないでしょうか。うなぎの老舗店が数多くありますが、名古屋式うなぎ・関東式うなぎの2種類が楽しめる「うな善」は、個性が際立つうなぎ専門店です。4代目が焼き上げる、幻の青うなぎを使った「名古屋式うなぎ」、細かく刻まず大きな蒲焼きをのせる「ひつまぶし」など、普通の店とはひと味違ううなぎを楽しむことができます。「うな善」でこれまで味わったことのない、独創的なうなぎに出会ってみませんか。

関西風の蒲焼きが主流の名古屋では珍しい江戸風蒲焼き

名古屋駅から徒歩約8分、通り沿いの飲食店が軒を連ねる一角に佇む、3階建ての趣のある建物が現れます。「ひつまぶし」ののぼりがはためく創業60余年のうなぎ屋「うな善」です。名古屋式うなぎ・関東式うなぎの2種類を味わうことができるこの人気店、最大の魅力は焼き方が選べること。”カリフワッ“とした名古屋式は330グラム以上の希少な青うなぎの太物。”フワトロッ”とした関東式は200グラムサイズの食べやすいうなぎ。どちらにするか迷うこと必至です。

扉を開けると香ばしい香りが漂い、奥に向かって広々とした店内には、カウンター席とテーブル席。ソファー席でゆったりとくつろげる個室や畳席に籐の椅子が配されたテーブル席などもあり、お一人様から団体まで、あらゆるシーンに対応可能な守備範囲の広さもうれしいポイント。フロアごとに趣が異なり、和の優美な空間のなか、くつろぎながら食事を満喫することができます。

うなぎの蒲焼きは地域によって焼き方が異なり、関東は背開きにしたうなぎを白焼きし、蒸してから焼きます。一方、関西では腹開きで焼き、タレをつけてはまた焼くという手法。名古屋では関西風の蒲焼きが主流なのですが「うな善」では、江戸風蒲焼きが初代から受け継がれてきました。

もともと浜名湖でうなぎの養殖を営んでいた初代が自分の育てたうなぎを食べてほしい、と名古屋で開業したのが始まり。近年では全国、海外からも食通が訪れるうなぎの名店となりました。毎日仕入れるうなぎは、水の良い静岡・吉田で育った選りすぐりの上物。生きたままのうなぎを鮮度の高いうちに捌くため、店内に設けた「立て場」で徹底管理しています。

4代目が手掛ける希少な青うなぎの「名古屋式」蒲焼き

現在の4代目は、大学卒業後、岐阜や滋賀の名店、名古屋の「炭焼うな富士」にて修業を積んだあと店を継いだ中西正樹氏。幻の青うなぎを使った「名古屋式うなぎ」を手掛けて注目されています。

「うな善」で代々受け継がれてきた関東式は、背中から包丁を入れる背開きが主流。武家社会だった江戸の名残で、切腹を連想させるからだそうです。箸を入れると、ほろほろとくずれるほどの柔らかさ。これこそ関東式の持ち味です。短めの竹串を使って、身がくずれないよう、厚みに合わせて縫うように串打ちをして、鉄串では出せない美しさで仕上げます。一方、名古屋式では、中まで素早く火が通るように、腹開きにして鉄串に刺し、うなぎを炭火で白焼きに。余分な脂を落としながら、素材の旨味を凝縮させ、香ばしさを引き出します。焼き上がりは、カリッとした皮とフワッとした身が魅力です。

初代から伝わるタレは、毎日使っていないと油分が酸化してしまいますが、上質なうなぎを日々休まず捌いているため、あっさりしつつもコクのある秘伝の風味が絶えることはありません。「江戸式うなぎ」には、うなぎにも、ひつまぶしの出汁とも相性の良い薄口醤油ベースのタレを三度付け。うなぎ本来の旨味を引き出しつつ、タレをしっかりと纏わせます。仕上げはタレが焦げて香ばしくなるような熟練の火入れの技を効かせます。

短冊切りにせず、大きな蒲焼きをのせて食感を楽しむ「ひつまぶし」

ご当地グルメ・名古屋名物「ひつまぶし」もぜひ味わいたい一品。この店ではユニークな「ひつまぶし」がいただけるのです。一般的な「ひつまぶし」は、短冊切りにした蒲焼きをご飯にのせますが「うな善」では、細かく刻むことなく大きな蒲焼きをのせるため、食べ応えがあるのが最大の魅力。厳選した新潟県産・有機コシヒカリのご飯とほぐした蒲焼きに、枕崎産の鰹と北海道利尻産の昆布から引いた出汁をかけると、またひと味違うおいしさが広がります。

「ひつまぶし」は通年楽しめますが、冬にはふぐ料理やちゃんこ鍋を取り入れたうなぎ料理もあります。さらには、うなぎ以外にも、刺身や名古屋コーチンをはじめとする50種類以上のメニューも自慢。愛知県の地酒や日本各地の銘酒も取り揃え、ゆったり自分好みのうなぎを満喫できる貴重な一軒。数ある名古屋のうなぎ店のなかでもほかに類を見ないうなぎを味わうことができます。

うなぎは、浜松を起点に調理法が変わると言われており、地域により食感も味わいも異なる奥深さが持ち味です。愛知県はその中間地点。関西風のうなぎが多いなか、東西のうなぎを食べ比べることができる「うな善」は稀に見る店。名古屋に行く機会があれば、ぜひその個性の違いを楽しんでみてください。

うなぎ

うな善

各線 名古屋駅 徒歩8分

5,000円〜5,999円

※こちらの記事は2024年07月15日作成時点での情報になります。最新の情報は一休ガイドページをご確認ください。

Miki D'Angelo Yamashita

コロンビア大学・パリ政治学院修士。新聞社勤務、国際時事担当記者、週刊誌、書籍編集者歴任。専門は別だが、趣味が高じて食担当記者に。延べ3000人料理人インタビュー、約30カ国で食関連を取材。料理本も多数編集。

【MY CHOICE】
・最近行ったお店:未在 / 晴山 / レヴォ /茶禅華
・好きなお店:ギ・サヴォワ / Restaurant KEI / 祇園さゝ木 / 宮坂
・自分の会食で使うなら:ル・ブルキニオン / ラルジャン / 乃木坂しん / 蕎麦おさめ
・注目しているお店:お料理ふじ居 / 日本料理 研野 / ELEZO ESPRIT
・得意ジャンル: スイーツ
・好きな食材:麺類

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