2020年7月、8代目料理長・栗田雄平氏を筆頭に新体制が発足した「銀座レカン」。日本を代表する老舗グランメゾンは、どう生まれ変わったのか? グルメ界では早くも話題沸騰です。新生「銀座レカン」の魅力と料理、ワインを巡って、料理長・栗田氏とシェフソムリエの近藤佑哉氏、新支配人の井上紀善氏の3人に、徹底的に語っていただきました。今回も、老舗グランメゾンの神髄に「KIWAMINO」編集部が迫ります。
銀座レカンの進化と変わらない魅力
―栗田シェフを筆頭に、「銀座レカン」が生まれ変わりました。まずは3人の中で最も長くレカンを知る新支配人の井上さんから一言お願いします。
(銀座レカン支配人 井上様)
新体制の発足に当たって、私を含め30年以上レカンに勤めてきたもの3人で一緒に話をしたことがあります。色々と話題に上るなかで「結局『銀座レカン』は何をしてきたんだろう?」ということに至りました。それで行きついたのが、「銀座レカン」は時代の良質を追い求めてきたのではないかという答えです。
実際、フランス料理と言えば重厚な雰囲気という時代から、リラックスして自然な流れでお料理を愉しんでいただくスタイルへと変化してきました。「銀座レカン」が提供するホスピタリティの方向性も、世相に伴って進化し続けてきたと思います
今回の新体制では、ユニフォームが特に目立つのではないでしょうか。これまでのタキシードが、グレイのスーツに改まりました。
―料理面での変化・進化も愉しみです。
(銀座レカン料理長 栗田様)
レカンは46年の歴史の中で常にそれぞれのシェフの色を強く出したお店であり続けました。したがってシェフが変わる事による変化、進化をくり返してきました。ですが、フランス料理のトラディショナルな部分を大事にするという事においては変わらない部分だと思いますし私の料理においても同じです。
その上で私の色というものを一つあげるとするならば食材のもつ自然な美しさを追求するという事です。
(銀座レカンシェフソムリエ 近藤様)
ソムリエという立場でも思いは同じです。常連のお客様はもちろん、新規で来店されるお客様にも喜んでいただけるよう、「銀座レカン」ならではのチームワークと言いますか、日々スクラムを組んで仕事をしています。
具体的には、やっぱり料理の部分。栗田シェフの感性を120%出していくために、ソムリエとしてどういうサポートができるのか?と常に自問自答をして現場に立っています。お料理やイメージが幹で、ドリンクやサービスはその枝葉という具合に、シェフを支えていきたいですね。シェフのやりたいことに制約が掛かってしまうと、本末転倒になってしまいますから。
8代目料理長・栗田雄平の世界観とは?
―今年3月のインタビューでも、チームワークを重んじる姿が印象的でした。それもまた、変わらないものの一つなのですね。栗田シェフの追求する「自然」や「美しさ」というキーワードをどう盛り上げていくのかワクワクしますね。
(栗田様)
サーヴィス、ソムリエに各チームに対する信頼感はとても強く感じています。
料理、ワイン、サーヴィスというレストランにおける3つの要素をより良くするためにお互い主張もしますし、また尊重もしあえる関係だと思います。
その中で料理の事を言いますと私は「美味しい料理は美しい」という考えのもと日々調理場に立っています。生産者さんの想いのこもった素晴らしい食材の美しさをなるべくそのまま皿の上で表現したいと思っております。瑞々しい野菜の色つや、新鮮なお魚の香ばしい焼き色、完璧なキュイソン(火の入れ具合)のお肉の切った断面、これら料理人が手を加える事によって得られる美しさを日々追求しています。ですから、料理の「自然な美しさ」を追求する事と「美味しさ」を追求する事は同義だと思っています。
(近藤様)
シェフは、盛り付けでも「自然な流れ」を重んじていますね。
(栗田様)
私の調理場では基本的には1人の料理人が1皿の盛り付けを最初から最後まで行います。もちろん料理はチームで作る物という考えが前提にあり、全ての皿に私が目を通して手を加える事もあるのですが。食材1つ1つの微妙な形の違いで盛り付けにも微調整が必要になります。
食材ののせる位置、量、バランスなど盛り付けによって味も変わります。
したがって盛り付けは味付けと同じと考えていますので、なるべく多数の人間の手が入らないよう、料理人それぞれの個の部分を重んじています。
(井上様)
調理場にいる一人ひとりの個性やパーソナリティを重んじることと、シェフが食材の「自然な美しさ」を大切にする思いには共通点があるように感じます。サービスを担う我々としては、その思いの伝え方を工夫しています。栗田シェフに合わせた変化・進化が必要とされるので、役割に関係なく、伝統と歴史を引き継ぎつつも挑戦を続けていきたいですね。
伝統と未来を探訪する極上のワインペアリング
―「銀座レカン」は素材へのこだわりも強いので、栗田シェフの思いや技術による繊細で味わい深い一皿が愉しみでなりません。お料理に欠かせないペアリングも進化を遂げたと伺いました。以前から力を入れていたところですよね。
(近藤様)
「新・ペアリングコース」では、「ディスカバリー・発見」をコンセプトにお料理とのマリアージュをお愉しみいただけるよう、チーム一丸で取り組んできました。
先ほど、井上支配人から、役割に関係なく伝統と歴史を引き継ぎつつも挑戦を続けていきたいというお話がありましたが、「新・ペアリングコース」では「銀座レカン」の挑戦と伝統・歴史を感じられるよう工夫をしています。
以前から、アフリカなどニューワールドと言われる地域のワイン収集にも力を入れてきました。「新・ペアリングコース」では、フランスワインとは違った「ディスカバリー・発見」を愉しんでいただけるようコース料理の前半、前菜あたりにニューワールドのインポートワインをご用意しています。前菜と合わせるので、口当たりも少し軽めなものを提案することが多いですね。
フランスワインでないものを積極的におすすめするのはチャレンジングですが、新体制のもとで挑戦する新生「銀座レカン」の姿と重なる部分もあるのではないでしょうか。
一方、お魚やお肉といったメインのお料理には「銀座レカン」が誇る1万5000本のセラーストックから厳選したワインを提案しています。以前はボトルでしかお出しできなかったものをグラスで愉しんでいただけるのです。ワインファンのお客様には、ぜひ体験してほしいですね。
45年という歴史の中で先輩のシェフソムリエたちが収集してきた貴重なワインを通して、「銀座レカン」の伝統・歴史を再発見できるはずです。
(栗田様)
日本酒や泡盛も提案していくという話を聞きました。料理人としてもとてもワクワクしています。
(近藤様)
泡盛については、沖縄の伝統的なスタイルで提供できるよう考えを深めているところです。愉しみにしていてください。
今回、「ノンアルコールペアリング」も導入しました。お酒を飲む方も羨むようなペアリングに仕上げ、ノンアルコールながらお料理に寄り添った提案をしているので、料理とのマリアージュもしっかり体感できると考えています。
(栗田様)
こういう料理にこういうワインを合わせるんだということは、役割の垣根を超えて調理場の一番若いスタッフまでシェアしています。お料理とのマリアージュでも、新しい発見をしていただけるのではないでしょうか。
(井上様)
手前味噌になってしまいますが、近藤ソムリエは、とにかく研究熱心。勉強家ですよね。行動力もすごいですから、「銀座レカン」のペアリングは今後もどんどん進化していくと思います。8月に行われた「第9回全日本最優秀ソムリエコンクール」では3位という結果で、一緒に働くものとしても嬉しいかぎりです。
また、withコロナということで、専門家の方をお招きして対策を徹底してきました。消毒などはもちろん、室内の空気が4分ごとに入れ替わる仕組みも導入しているので、ぜひ安心してお食事を愉しんでほしいですね。
【プロフィール】
銀座レカン 8代目料理長・栗田雄平氏(写真中央)
1979年東京生まれ。東京の著名レストランで研鑽を積み渡仏。帰国後は乃木坂のレストラン FEUで7年間副料理長を務め、その後ロテスリーレカン料理長に。
2020年7月より銀座レカン8代目料理長に就任。
銀座レカン 支配人 井上紀善氏(写真向かって右)
1963年千葉県生まれ。1983年銀座レカン入社。
1999年メートルドセルヴィスコンクール優勝。
レカングループ ブラッスリーレカン ルシャスリヨン支配人を経て
2020年7月より銀座レカン支配人に就任。
銀座レカン シェフソムリエ・近藤佑哉氏(写真向かって左)
1989年兵庫県生まれ。2018年第7回J.S.A.ソムリエ・スカラシップ優秀賞、「ポメリー・ソムリエコンクール2019」優勝、「第3回ボルドー&ボルドー・シュペリュールワインソムリエコンクール2019」優勝。「2020年 第9回全日本最優秀ソムリエコンクール」3位。難関のInternational A.S.I. Sommelier Diplomaも取得している。
【編集後記】
2回目の「銀座レカン」訪問となった今回。新体制のもと、お客様に喜んでいただこうと日々切磋琢磨に励む3人の熱い姿勢を、お話を通じて実感しました。「銀座レカン」では、バースペースを「ワインバー」としてリニューアルオープンする予定で、料理長・栗田さん監修のおつまみも登場するそうです。今後も、銀座の老舗グランメゾンの進化から目が離せません。
お店の衛生対策について
■店舗での取り組み
・アルコール消毒液の設置(入り口、お化粧室)
※こちらの記事は2023年04月21日更新時点での情報になります。最新の情報は一休ガイドページをご確認ください。