インタビュー|

名古屋「レミニセンス」葛原将季氏にインタビュー。記憶に残り続ける料理とは

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東西の文化が交流し、独自の雰囲気を醸す名古屋。そんな地にある「レミニセンス」は、名古屋フレンチの代表格とも言われています。
腕を振るうのは、「カンテサンス」「HAJIME」という名店で研鑽を積んだ葛原将季氏。今回は新鋭のシェフにお店や料理のこだわり、これからのことを存分に語っていただきました。

※本インタビューは、2021年4月9日にオンラインにて行いました。

目標に向かってやることを明確に示していた修行時代

-まずは料理人を目指されたきっかけを教えてください。

小さい頃からよく料理を作る家庭の中で育ちました。自分が作った料理を家族が食べて「おいしい」と言ってくれることが嬉しくて、色々工夫したりしていたのですが、それが直接的なきっかけになったわけではないんです。
一番の大きな出来事は、高校生の時に「名古屋マリオットアソシアホテル」のメインダイニング「パーゴラ」でアルバイトをして、そこで初めて飲食店に触れたことですかね。

名古屋マリオットアソシアホテル/パーゴラ

当時「パーゴラ」は僕が知っている飲食店とは違いすぎて、こんな世界があったんだと衝撃を受け、料理人になりたいと思うようになりましたね。
そう考えている中で勉強も兼ねて「ミクニナゴヤ」に食事に行ったんです。そこでの体験が非現実すぎて、自分もいつかこの世界に入りたいと改めて感じました。
もともと小さい頃から料理をしていたこともあって、繋がったんだと思います。

-その後、「グランカフェ 新橋 ミクニ」「株式会社ゼットン」「カンテサンス」「HAJIME」など、そうそうたる名店で修行されていますが、それらを選ばれたのには共通点があるのでしょうか?

僕はどんな世界でも1番が好きなんです。当時「料理の世界で1番はミクニだよ」と教えていただき、どうせ行くなら東京だと思って「グランカフェ 新橋 ミクニ」に入店しました。
ただ、すぐに閉店してしまったんですよね。途方に暮れている時、飲食店として経営的に長けているのはどこだろうと考えて「株式会社ゼットン」へ入社しました。上場する時だったので、すごく勢いがあったんです。
21歳の時に、自分から手を挙げて料理長をやらせてもらいました。当時最年少の料理長で、売り上げも高かったので天狗になっていたんですよね。

カンテサンス

ちょうどその頃、東京にミシュランが来て「カンテサンス」が話題になっていたんですが、ある人に「今の自分に満足していてはだめだよ」と言われまして。
日本で1番はどこだろう?と考えた結果「カンテサンス」に入店しました。

HAJIME

この業界がある程度わかってきた時に、岸田シェフとは違った観点でまた学びたいなと考え、その後「HAJIME」に入店しましたね。

-「カンテサンス」や「HAJIME」で学んだことで、自身に生かされていることはなんでしょうか?

岸田シェフ、米田シェフに共通して言えることは「本質を追求する」ことですね。
その「本質」というのが実はすごく難しくて、しっかりと理解していないと単に奇をてらったお店になってしまう。2人はしっかりと本質を追求しているので、常にトップでいられるのだと思います。
岸田シェフはアスリートタイプで、美味しさを0.1ポイントでも上げるための努力を毎日惜しまない、そういった姿勢を一番学びました。
米田シェフからは料理や味の組み立て方、僕は“複雑味の調和”と言っているんですが、それを一番学びました。

僕は修行の中で、料理に対しての姿勢や考え方などの「哲学」を学びたいと思っていました。
料理人は20代半ばで渡仏する人も多いと思うのですが、僕は「哲学」を学ぶには言葉の壁があるフランスではなく、日本で学んだ方がいいと考えました。

目標に向かって一つ一つの地点を決めておくと、逆算して今自分が学ぶべきものが明確になりますよね。
自分はゲームのように例えて、項目ごとに毎日何ポイントレベルアップしたかを考えていました。
岸田シェフや米田シェフのレベルに近づくために毎日何をやって、何がレベルアップしたかを書き出すことで、自分の成長を実感していました。毎日すごく楽しかったですね。

-どのタイミングで独立を考えたのでしょうか?

明確にお店を持ちたいと考え始めたのは「ゼットン」で働いていた時ですね。ただ、その時はどんなお店がやりたいとかは固まっていなかったです。
「カンテサンス」では、「フロリレージュ」の川手シェフと一緒に仕事をしていたのですが、ちょうど独立の準備をしていた時に関わらせてもらえて。
コンセプトやテーマ設定が必要なことを勉強させてもらう中で、今後変わってもいいから決めちゃおう!と思って23歳頃に決めたのが「レミニセンス」のコンセプトです。

記憶に残る心地よい“違和感”を感じるひととき

-「レミニセンス」のコンセプト“余韻と記憶”に込めた想いをお聞かせいただけますか。

岸田シェフが作ったある料理を食べた時に、余韻がすごく長く感じ、心地よく消えなくて、「余韻」というワードってすごく素敵だなと思ったんです。
感銘を受けた料理はいつまでも記憶に残っているし、料理を見ただけでシェフの顔が浮かびます。そういうお店と料理を作りたいと考えて“余韻と記憶”というコンセプトを決めました。

僕は人生を豊かにするのに一番大切なものは、思い出だと思うんです。その思い出とイコールになるのが“過去を偲ぶ”という意味合いがある「追憶」というワードだと思っていて、英語で「追憶」を意味する「レミニセンス」を店名に掲げました。

自分のお店はお腹を満たすためだけの場所ではなくて、思い出作りをしてもらうためにあるべきだと思っているので、エンターテインメントを提供できる空間にしたいと考えています。
店内にしても一つ一つに意味を持たせて、家具などもできるだけ東海エリアの作家さんにオリジナルを作っていただいています。

-そんなテーマに沿った料理はどのような思考で生み出されているのでしょうか?

一皿一皿に、“余韻、記憶、安堵、追憶”というテーマがあるのですが、これらの流れを大切にしていますね。
例えば5皿目で出している伊勢志摩の天の岩戸の水と名古屋コーチンを使用したスープ。普通のスープなんですが、これがあることで前のお皿と後ろのお皿が生きてくる。一皿一皿がおいしいのではなくて、この一品があることでコース全体がどうなるか、そういう組み立てを大事にしていますね。

味に関しては、“違和感とインパクト”を特に大事にしています。“違和感”があることによってお客様がその一皿にぐっと入り込んでくれ、頭の中で色々と考えてくれて、それが記憶に残っていくと思っているので、僕の料理はただ美味しいだけというのはあまりないですね。
今はどこのレストランもレベルが高くて、美味しいだけでは記憶に残っていかない。なので“違和感”という個性を大切にしているんですが、一歩間違ってしまうと、奇をてらった料理になってしまう。なので「本質を追求する」というのが大切なんですよね。

-味の“違和感”を大切にしているとおっしゃるシェフは、なかなかいないですよね。

やはり独立当初は、修行した先の子供のように言われることも多く、どうやって違いを出せばいいか悩んでいました。
今は岸田シェフや米田シェフがやらないような東海エリアの食材を使った料理や、違和感のある味を生み出すことで僕の個性を出して、まだ隣には行けていないですけど足元くらいには行けたかなと、思っています。

1番ワクワクすることを想像し、導いた次の目標

-10年後、20年後に向けた目標をお聞かせください。

僕は人生の指針として「美と食とエンターテイメントを追求して、愛知県を日本屈指の観光都市にする」と掲げています。
まずは食と美を繋げられないかと思って、美に触れるために美容学校に通ってエステシャンの資格まで取ったりしたんです。
その他にもECサイトやカフェを立ち上げるなど色々考えたんですが、ワクワクしないなと思って。
自分が一番やりたいことって何か、考えたことを全部想像してみたんですよね。その中で一番大変そうで一番ワクワクしたのが、三つ星を取って日本で最高峰、世界で最高峰のレストランをやることだったんです。

建物から作り込んで、完璧な世界観のレストランを作ろうと、実は移転も視野に考えています。三つ星の先はどうするんだ、と言われるとそれはわからないですね。(笑)
ただ、三つ星を取った時に見える世界は今までと全然違うと思っています。そこに立つことができたらまた考えようかな、と思っています。

-三つ星の夢は何歳で叶えるのが目標ですか?

ずっと、40歳になった時に今までの集大成でありたいと考えていました。
20代はたくさん修行して、30歳でお店を立ち上げましたがそれがゴールではなくて、まだまだ修行中なんですよね。
ようやく40歳くらいから自分がやりたいことをできると思っているので、40歳頃で三つ星をとれたらいいなと思っています。
僕はまだまだ若手の部類に入ると思っていて、それは自分にとって最大の武器なので、今から何でもできるなと感じています。
僕の人生の指針の中でも、まずは美とエンタメは少し寝ていてもらって、今は食をもっと極めたいと思います。

【編集後記】
目をキラキラさせながらエネルギッシュにお話をしてくださった葛原シェフ。料理へのこだわりはもちろん、料理人にとっての考え方や哲学についても、とても勉強になりました。「レミニセンス」に伺って、葛原シェフが生み出すおいしい“違和感”を私も体感してみたいです。そして葛原シェフが思い描く未来に私自身もワクワクしました。

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【プロフィール】
葛原 将季氏(クズハラ マサキ)
1985年7月、愛知県名古屋市生まれ。「名古屋マリオットアソシアホテル」にてアルバイトをしたことがきっかけで、フランス料理に興味を持つ。さつき調理・福祉学院卒業後、東京や名古屋にて修行。2008年「カンテサンス」、2013年「HAJIME」にて修行後、「あつた蓬莱軒 本店」にて鰻の扱い方を学ぶ。2015年、自身の30歳の誕生日に「レミニセンス」を開業。2019年には「ミシュランガイド愛知(名古屋)2019」にて二つ星を獲得。
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フランス料理

Reminiscence

名古屋市営地下鉄東山線 伏見駅 徒歩8分

その他にも「極みの店」をInstagramでも紹介中!
ぜひチェックしてみてください。

https://www.instagram.com/kiwamino/

Minaho Ito

一休.comの宿泊営業から編集部へ。子供を預けて、つかの間の贅沢をレストランで過ごすのが楽しみ。見た目が美しい料理が好きで、イノベーティブ料理やフレンチ・イタリアンがお気に入り。
自分へのご褒美にスイーツ店巡りをすることも多く、行きたいお店リストは常に更新中。

【MY CHOICE】
・最近行ったお店:ラペ (La paix)
・好きなお店:NARISAWA/Crear Bacchus/オテル・ドゥ・ミクニ/ガストロノミー ジョエル・ロブション
・得意料理:イノベーティブ料理/フレンチ/イタリアン
・好きな食材:赤身肉/チーズ

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