食通が語る、2024年のグルメトレンドとは 門上武司氏編

今回KIWAMINO編集部では、食の専門家の方々に「2024年に行きたい、今気になるレストラン」と「2024年のグルメトレンド」について伺いました。第2弾は、数々のメディアに出演・執筆し、関西を代表する食通として知られる門上武司氏。常にトレンドに触れていらっしゃる門上氏が予想する、2024年の食のトレンドとはどのようなものでしょうか。

お伺いしたのは……

門上武司氏
1952年10月3日大阪生まれ。フードコラムニスト。
株式会社ジオード代表取締役。関西の食雑誌『あまから手帖』の編集顧問を務めるかたわら、食関係の執筆、編集業務を中心に、プロデューサーとして活動。「関西の食ならこの男に聞け」と評判高く、テレビ、雑誌、新聞等のメディアにて発言も多い。一般社団法人 全日本・食学会 副理事長。2002 年日本ソムリエ協会より名誉ソムリエの称号を授与される。著書に、『門上武司の僕を呼ぶ料理店』(クリエテ関西)のほか、『スローフードな宿』『スローフードな宿2』(木楽舎)、『京料理、おあがりやす』(廣済堂出版)等。11月29日に発売された「あまから手帖別冊 食べる仕事 門上武司」(クリエテ関西)はこれまでの門上武司の食の歴史と、これからの「食」を考える刺激的な一冊。

2024年に行きたい、今気になるレストランとは

食の世界の流れを見ていると、イノベーティブが進化する一方、どの料理も古典に注目する動きが顕著になってきたように感じられます。なかでも気になるのは、フランス料理の「シェ・イノ」。手島純也シェフが着任され「僕が『シェ・イノ』の料理を作るには2年かかる」と話されていますが、確実に日本のフランス料理の系譜の継承者として注目しています。その他地方の料理店の躍進です。静岡の「シンプルズ」は移転し、レストランとしての雰囲気も圧倒的に変化し、井上靖彦シェフが環境整備され、料理の質も数段ランクアップしたと感じます。ここには「サスエ前田魚店」の前田尚毅さんの存在も大きく関与します。日々進化している魚の状態に合わせて料理人が調理を工夫するので、その動きから目が離せません。

その前田さんが推薦するのは「日本料理FUJI」という和食の店です。3月に伺う予定ですが、気になる一軒です。天ぷらの「成生」も訪れる度に調理法が進化するのです。京都の「cenci」は、ここ数年京都でイタリア料理を作るというカテゴリーから脱却、視野がグローバルに広がったので、興味深い存在です。

食通が予想する、2024年の食トレンドについて

『どんな肉でも旨くする サカエヤ新保吉伸の全仕事』(世界文化社刊)より 
撮影=(株)世界文化ホールディングス 写真部 坂本正行

「サスエ前田魚店」の前田尚毅さん、南草津の精肉店「サカエヤ」の新保吉伸さんという、漁師と料理人、農家と料理人をつなぐ存在の重要性をひしひしと感じています。前田さんは魚を扱うことを「仕立て」と呼び、新保さんは「手当」と言います。前田さんが仕立てをしたエボタイ。「エボタイという普通の魚がこれほど感動を呼ぶ味になるのか!」と驚愕でした。また、新保さんが手当をした経産牛や雄牛を食べた時の感動は見事なものでした。

『どんな肉でも旨くする サカエヤ新保吉伸の全仕事』(世界文化社刊)より 
撮影=(株)世界文化ホールディングス 写真部 坂本正行

高級食材を扱うのではなく、むしろこれまであまり価値を持たなかった食材に新たな価値を与えること。これは、食の世界にとって極めて重要なことだと思っています。この二人は特筆した存在だと思います。そのための研究やエビデンスなどもかなり実績があります。今後、このようなバトンを渡す人たちに光が当たり、つなぐ役割の人が少しずつ増えていくような予感がします。日本各地でこのようなつなぐ人が増え、彼らとタッグを組む料理人が増えてくれば、日本の食のシーンは変わると信じています。

世界中を騒がせた新型コロナウイルスも落ち着きを見せた2023年。多大な影響を受けた飲食業界も、2024年は大きく躍進していくことでしょう。料理に対する温故知新の試みや、料理人との懸け橋となるような生産者の動きなど、新たなトレンドが生まれてくることが予想される飲食業界から、ますます目が離せませんね。

※こちらの記事は2024年02月09日作成時点での情報になります。最新の情報は一休ガイドページをご確認ください。

門上 武司

1952年10月3日大阪生まれ。フードコラムニスト。
株式会社ジオード代表取締役。
関西の食雑誌『あまから手帖』の編集顧問を務めるかたわら、食関係の執筆、編集業務を中心に、プロデューサーとして活動。「関西の食ならこの男に聞け」と評判高く、テレビ、雑誌、新聞等のメディアにて発言も多い。一般社団法人 全日本・食学会 副理事長。2002 年日本ソムリエ協会より名誉ソムリエの称号を授与。
著書に、『門上武司の僕を呼ぶ料理店』(クリエテ関西)のほか、『スローフードな宿』『スローフードな宿2』(木楽舎)、『京料理、おあがりやす』(廣済堂出版)等。2023年11月29日発売の「あまから手帖別冊 食べる仕事 門上武司」(クリエテ関西)はこれまでの門上武司の食の歴史と、これからの「食」を考える刺激的な一冊。

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