「すしログ」が選ぶ、鮨と日本酒ペアリングを楽しめる注目の鮨店6選

昨今では比較的定番となってきている料理とドリンクのペアリング。実は、鮨と日本酒に特化したペアリングを提案するお店は極めて珍しいのをご存知でしょうか。筆者は2023年に日本酒のソムリエ資格として知られる「J.S.A. SAKE DIPLOMA(酒ディプロマ)」を取得。試験対策の頃から現在までに飲んだ銘柄数は450を超えます。その結果、筆者は日本酒を高精度でペアリングもしくは提案する鮨店は非常に貴重であることを実感しています。今回は、筆者がおすすめする、鮨と日本酒のペアリングを楽しめる鮨店を5軒ご紹介いたします。
※本記事ではテーマを明確にすべく、ワインと日本酒を混ぜてペアリングするお店は割愛しております。

1.アツい職人魂を持つ親方が提案する今の時代に光るペアリング!

いしまる(埼玉県/大宮駅)

鮨職人としての修行経験が無いものの、圧倒的な職人魂を感じる職人、沼里裕幸親方の鮨店「いしまる」。江戸前鮨の古典や王道と向き合って独自の表現を追求されている点が秀逸。大宮は埼玉在住の方以外あまり行かないかもしれませんが、鮨好きならば絶対に訪問すべき一軒です。写真の見た目は地味に思うかもしれませんが、実際に味わうと奥深さに驚き、端正な印象に変わるはず。本質的な鮨です。

そして、鮨のみならず日本酒のご提案も素晴らしい。高級魚を用いる居酒屋出身だけあり、魚の扱いだけでなく日本酒の品揃えと提供方法は群を抜いています。

燗酒、古酒、アル添酒、パック酒まで幅広く駆使されて、あくまでも味覚と嗅覚ベースで組み立てる鮨職人は、沼里親方以外に知りません。「高級鮨店=プレミアムなお酒や純米大吟醸酒の冷酒」という既成概念に一石を投じる素敵な提案。フランス料理におけるワインのように、味覚的、嗅覚的にマリアージュを志向する鮨店です。沼里親方はこんな横文字を使いませんが。

寿司

いしまる

JR線 大宮駅 西口徒歩10分

20,000円〜29,999円

2.新潟の日本酒と魚介で繰り出す全国屈指の日本酒ペアリング!

すし あらい(新潟県/新潟駅)

最後にご紹介する「すし あらい」は、新潟にあって全国トップクラスの日本酒ペアリングを提供する隠れた名店です。こちらの「日本酒ペアリングコース】は、なんと日本酒12~13種類で構成されます。使用する日本酒は全て新潟県産で、違う蔵のお酒を使用する点も凄い。新潟は御存知の通り全国的にも日本酒の銘醸地ですが、絶対に知られざる発見、出会いがあるはずです。

そして、味覚や香りだけでなく、使用する酒器、温度帯、構成(提供の順番や起伏)などにも配慮されているところが美点です。

総合的にSAKE DIPLOMAの観点から見ても、驚嘆を覚えました。荒井大心親方はお一人で日本酒のご提案、ご提供をされながら鮨もバッチリ美味しいところが超人的。一騎当千、八面六臂と言った言葉が頭に浮かぶほどの奮闘ぶりで鮨と日本酒のペアリングを実現されています。

寿司

すしあらい

JR各線 新潟駅 徒歩10分程度

20,000円〜29,999円

3.SAKE DIPLOMAが理論に基づき構築する鮨と日本酒のペアリング!

鮨あさひ(東京都/五反田駅)

「鮨あさひ」は、鮨と日本酒のペアリングに最も意識的に向き合っているお店です。フランス料理店におけるソムリエのようにSAKE DIPLOMAを雇っていて、ご提案の精度が高い。運営母体は「日本酒原価酒蔵」を経営する株式会社クリエイティブプレイスで、いわゆる資本系となりますが、資本と日本酒の仕入れルートを持っているからこそ、個人店では実現しづらい高パフォーマンスを実現しています。

こちらは酒肴や鮨単体で味わうのではなく、日本酒とのペアリングで最大化されるお店。日本酒の選択は、調和、相乗効果、マスキング、補完の観点から選ばれていて、液体の温度やテクスチャーまで考慮されている点は正にSAKE DIPLOMAの理論通り。

お店自体が楽しいのは言わずもがな、こちらでペアリングを体験すると「このように選べば良いのか!」と発見があります。

寿司

鮨あさひ

都営浅草線 五反田駅 A6出口から徒歩1分

12,000円〜14,999円

4.創作的な鮨と親方の独自の感性で合わせる日本酒ペアリング!

鮨くにみつ(東京都/東中野駅)

東中野と言う江戸前鮨店が無さそうな立地で、カジュアルに創作的な江戸前鮨を提供する「鮨くにみつ」。おまかせコースは15,400円と、今の水準からすると良心的と言える価格帯。そして、日本酒ペアリングは5,500円。「ファーストドリンク+プレミア限定酒(60ml)5種」で構成されますが、コースについてくるファーストドリンクは日本酒も可能なので、実質6種類頂けます。

鮨は「白海老の茶葉〆】など創作的な仕事を用いつつ、江戸前鮨伝統の〆ものや煮ものも出される点が好印象。

そして、阿部国充親方は利き酒の勉強は独学との事ですが、チョイスが良いです。親方ならではな銘柄を配置されて、お酒の性質によって酒器を使い分けておられる点も素晴らしいです。

https://kunimitsu-higashinakano.com/

5.親方と女将さんの二人三脚による珠玉の日本酒ペアリング!

鮨かの(東京都/一之江駅)

「鮨かの」は、知る人ぞ知る街の名店です。なにせ都営新宿線の一之江駅が最寄りで、駅からも徒歩10分ほどかかります。しかし、鮨と日本酒が好きならば遠方から訪問する価値があり、唎酒師でもある鹿野亮親方と女将さんによる日本酒の提案が冴えます。

魚は海域で味が違いますが、こちらのお店は小田原の早川漁港から魚を仕入れることが多く、その点においても他店とは異なる魅力があります。江戸前鮨の仕事をキッチリ押さえた上で、現代的な方向性にまとめておられます。

そして、女将さんによる日本酒のご提案にも独自性が光り、ご自身が酒蔵に行って仕込みを手伝うような銘柄や、大塚の「地酒屋こだま」さんと言った優良酒屋から仕入れる銘柄が中心です。つまり、都心にありがちなプレミアム銘柄で利ざやを稼ぐようなことはせず、鮨に合う味を考えて出されています。燗酒が中心である点も素晴らしい。最近の鮨店では燗をつけるお店が少なく、冷酒一辺倒ですが、燗酒も交えなければ日本酒の真の魅力を伝えることは不可能です。今後、見直されるべき飲み方が燗酒で、その魅力を伝えてくれる最良の一軒が「鮨かの」さんです。

https://sushikano.jp/

以上で、筆者が感銘を覚えた日本酒ペアリングを提案する鮨店の紹介を終えます。ブックマークしているものの未だ訪問できていないお店もあります。自分自身が鮨と日本酒の両方に向き合いながら、これからも探求していきます。誇張なく将来が楽しみなジャンルなので、ぜひとも鮨と日本酒のペアリングを楽しんでみてください!

※こちらの記事は2024年06月07日作成時点での情報になります。最新の情報は一休ガイドページをご確認ください。

「すしログ」大谷 悠也

1981年、広島県生まれ。国際基督教大学卒業。鮨研究家、広島県鮨アドバイザー、日本酒ペアリング研究家。日本ソムリエ協会 J.S.A. SAKE DIPLOMA。鮨・鮓・寿司の本質を伝え、人気を高めるべく「すしログ(https://sushi-blog.com/)」を運営。旺盛な食欲と好奇心に基づき、国内外で6,000軒以上の飲食店を訪問。市場や生産者、醸造家のもとに足を運び、自ら調理も行う。

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