焼鳥バブルと言われる昨今、さまざまなスタイルで焼鳥を振る舞う新店が相次いでいますが、その中でも、薪で焼く焼鳥という前代未聞のアプローチで、オープンするや瞬く間にフーディらの胃袋を鷲掴みにしたのが、2021年に麻布十番にオープンした「薪鳥 新神戸」です。東京オリンピックの開幕と同時に産声をあげた同店、再開発のため、2023年6月に一旦閉店したものの、同年11月に見事復活。赤坂見附に居を移してリスタートしました。
前代未聞の薪焼鳥で人気の名店が赤坂に移転
赤坂見附駅から徒歩2分ほどの至近距離ながら、場所はコインパーキングの奥。しかも入り口は倉庫の扉と見まごうような素っ気なさと、およそ飲食店があるとは思えぬシチュエーションに、辿り着けないゲストも多いそう。そんな隠れ家感満載の店内は、以前に比べ倍以上も広くなり、天井も高く開放感溢れる空間へと生まれ変わりました。ゆったりとしたカウンター席の向こうには、赤々と薪の炎がゆらめく炉窯が2台設えられています。
2台に増えた炉窯を駆使、見事な焼きを腿肉で実感
「炉窯が2台になったことで、野菜や肉など食材による火の調整がスムーズになり、焼きの精度がよりあがりました」そう言って笑うのは、大将の疋田豊樹さん。プライベートでも焼鳥を食べ歩く鶏ラバーな達人です。聞けば、熱源に余裕ができたことで、1台は炎をあげて焼く鶏専用にし、もう1台は熾火にして野菜専用にしているとか。「或いは1台を炭火にして薪火と炭火のハイブリッドにしても面白いかな、とも思ったりしています」とは疋田大将。いろいろな角度から、より良い“焼き”を目指しています。
さて、その焼きの見事さを舌で実感するのが、コースの最初に出される「高原比内地鶏」のもも肉です。艶やかな光沢を見せる黄金色の皮、鼻をくすぐる薪の薫香が、食べる前から食欲中枢を刺激。すかさず、アツアツを頬張れば、カリッと芳ばしい皮とその内側から滴る肉汁に思わず頬が緩みます。この一本で心を掴まれること請け合い。名刺代わりと呼ぶにふさわしい逸品でしょう。
3種の鶏を使い分け、緩急に富んだコースでゲストを魅了
ちなみに、ここでは秋田の「高原比内地鶏」をメインに、兵庫の「高坂鶏」、山口の「長州鶏」などを、部位によって使い分けています。例えば、2皿目の「とりわさ」には「高坂鶏」の胸肉を使用。それも、無菌の状態での出荷を可能にした「高坂鶏」なればこそ。土佐醤油ベースの「自家製とりわさ醤油」が、柔らかく淡麗なその身にフィット。しっとりとして焼きとはまた一味違う“静の美味しさ”を楽しませてくれます。
「高坂鶏」が刺身用なら、レバーやハツには、疋田大将曰く「内臓類が美味しい」という「長州鶏」をセレクト。とろけるレバー、弾ける食感のハツなどそれぞれの部位に応じた火入れもさすがの美味しさです。
串の合間には、鶏焼売のお椀や梅素麺(ひと口サイズ)「薪焼マッシュルームの鶏節削りかけ」といった一品ものが登場。食べ疲れることなく〆のご飯まで完走できるのも、コースの途中で出される小鉢ものが、タイミングよく舌をリセットしてくれるおかげでしょう。
そしてコースの掉尾を飾るのが、〆の「そぼろご飯」。これを楽しみに訪れるリピーターも多い同店の名物です。と言っても、焼鳥店でよく見かけるそれとは全くの別物。「薪焼鳥がウリの当店らしいご飯ものは何かなと考えた結果思いついたのが、このスタイルでした」と疋田大将が語るように、ここでは鶏挽肉を大きな金網のザルに入れて炎にかざし、豪快に炙り焼くというもの。
燃え盛る炎と共に立ち込める芳ばしい香りは、美味しい臨場感。薪の薫香に塗れた鶏挽肉を炊きたての白飯に入れ、混ぜ合わせれば、オリジナルの薪焼きそぼろ飯の出来上がりです。
ほろりとほぐれるご飯の炊き加減も上々。まずは、炒めたニラを乗せて、その後は卵かけ、かんずりと青ネギなどの味変を楽しめるのも食いしん坊には嬉しい限り。塩味のシンプルな味つけも、リピートしたくなる所以でしょう。
公式HP:https://makitori-shinkobe.com/
※こちらの記事は2024年12月12日作成時点での情報になります。最新の情報は一休ガイドページをご確認ください。