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大阪「澤田」澤田敏允氏に聞く、名店での経験を活かし“その日その時の旬を届ける”日本料理とは

天下の台所とも呼ばれ、様々なグルメが人気の街・大阪。エリア屈指の繁華街である北新地は、高級料理店が軒を連ねる激戦区として知られています。今回は、日本料理「澤田」の店主・澤田敏允氏にKIWAMINO編集部がインタビュー。名店での修業時代から、これまでの経験を活かした料理に対する思いについてお話を伺いました。

スポーツインストラクターからの転職、有名店で研鑽を積む

-まずは、料理人の道を選ばれたきっかけについてお聞かせください。

学生時代は、スポーツが好きでずっとサッカーをしていました。一方、部活動の傍ら居酒屋さんや焼鳥屋さんでアルバイトもしていたので、当時から飲食の仕事に興味を持っていたんです。その後、スポーツと飲食どちらの仕事に就こうかと考え、一時期はインストラクターの仕事をしていましたが、途中で転職をしたのち飲食の道へ進むことを決めました。

-数々の有名店で研鑽を積まれておられる澤田様ですが、修業時代についてお聞かせください。

転職後、最初に働いた大阪の「島之内 一陽」はアラカルトがメインの割烹料理店。それまではアルバイト経験のみでしたので、ほぼ一から料理の基礎を教わりました。和・洋・中の様々な技法を使いながら料理をしていましたが、3~4年経った頃から懐石料理に興味を持ち始めまして、お店を移ろうと考えるようになりました。

まず、滋賀にある「招福樓 本店」で働きたいと思い連絡をしてみたところ、僕が採用条件を満たしていないため難しいとお断りされてしまいまして。でも、どうしても諦めがつかず「招福樓 本店」出身の方が出しているお店で働こうと、考えを変えてみることにしました。

色々探したうえで辿り着いたのが、当時滋賀にあった「日本料理しのはら(現:銀座 しのはら)」でした。全く知らないお店だったので食べに行ってみたところ、出していただいたすっぽんのお椀が人生で一番美味しいと思うほどの仕上がりだったんです。このお椀について学ぶだけでも十分滋賀に行く価値があるなと感じていたら、ありがたいことに翌週から働かせていただけることになりました。

-今や名店として知られる「銀座 しのはら」ですが、滋賀から銀座に移転された際は、あらゆる部分で変化があったのではないでしょうか。

滋賀で働き始めて1年半くらい経った頃、銀座へ移転する運びとなりました。滋賀のお店は四方を田んぼに囲まれており、料理の飾りに使うお花や葉っぱなどを裏手の山へ採りに行くような、のどかな場所にあったんです。
移転後の銀座はまさに大都会、滋賀のように気軽に山へ入るなんてことはできません。もちろん銀座ならではの良さもありましたが、滋賀で自然の景色や環境を料理に落とし込む経験ができたことは、僕の料理人生において大きな出来事だったと感じています。

食材に関しても、滋賀はすっぽんだけでなく鰻や鮎、鯉なども評判です。都会ではあまり扱わないような食材も日々使用していましたから、それを自分の強みにできたというのも良い経験だったと思いますね。

古民家をリノベーション、茶室を意識したこだわりの空間で独立

-2023年7月に「澤田」をオープン。どのような流れで独立される運びとなったのでしょうか。

もともと、銀座で働いた後は大阪へ戻ろうと思っていたんです。ただ、もう少し経験を積みたい気持ちもあり、歴史のあるお店で昔ながらの仕事を吸収したいと思い、大阪にある老舗料亭「味吉兆」で働かせていただくことに。

その後は独立も考えましたが、コロナ禍だったこともあり知人が営んでいた北新地の「食堂 たのし」でお世話になりました。お酒に特化したお店で、店主がサービスマン。僕は自由に料理をさせてもらえたので、自分自身の幅を広げてくれたお店でもあったと思います。独立前に良い経験をさせていただきました。

働きながら独立に向けて物件を探していましたが、最初はなかなか思うようなところが見つからずトータルで2年半ほどかかってやっとここに巡り会えました。すでに結婚しておりましたので妻の後押しも大きかったですね。

-店舗は古民家をリノベーションされたそうですが、お店の造りや内装についてどのような部分にこだわっていますか。

内見に訪れてすぐにここだ!と感じたのですが、築100年ほどの古民家ということもあり、所々に古さが目立っていて。室内に入った印象は、正直あまり良いものではありませんでした。一方で、建物周辺の雰囲気はすごく良かったんです。繁華街となるとビルに入っているお店も多い中、ここは小さめですが木造の一軒家。開放感もありますし、目の前の路地もさほど狭いとは感じません。2件目でも利用いただきやすい繁華街(北新地)の近くというのもポイントでした。

工事は、あえて普段は飲食店を手掛けていない工務店さんに依頼。主に茶室、数寄屋建築を扱っていらっしゃる工務店さんでした。茶室って、言わば「シンプルで小さな空間に、亭主が人を招いておもてなしをする場所」です。僕も同じように、お客様に近い距離でおもてなしをさせていただけたら、という思いがありましたので「飾り気のないシンプルさ」を重視してリクエスト。必要なものだけがある簡素な空間をとお伝えしました。

店内は今でもお花を一輪だけ置くなど、派手な飾りつけはしていません。
空間がシンプルだからこそ、手作りのおもてなしがよりお客様の心に響くのだと思っています。現在はカウンターに6席設けていますが、お客様一人ひとりにしっかり対応することやスタッフとの連携を考えると、丁度いい席数かなと。

レシピに頼らない「澤田」ならではの料理でおもてなし

-「澤田」というお店について、どのようなコンセプトを持たれていらっしゃいますか。澤田様が日頃から心がけている思いについてお聞かせください。

おもてなしとお話ししましたが、料理にしろ思いにしろ、押しつけがましくならないようにしたいですね。美味しい料理でお腹を満たしていただくことはもちろんですが「美味しかった」だけではなく「楽しかった」と言ってもらえるような、堅苦しさのないおもてなしができるお店にしたいと思っています。

-「澤田」ならではの料理の特徴・魅力とは、どのようなものでしょうか。また実際の献立やコースを考える際に、意識されていることはございますか。

photo by「Tomomi ♡ 東京グルメ女子」

料理と言うとやはり一番は季節感。あとは、この土地の食材を「澤田」ならではの料理で召し上がっていただきたいですね。季節を意識すると、他のお店で似たような料理が出てくることも多いと思います。もちろん王道のメニューはあるかもしれませんが、あまり他では見ないような料理を楽しんでいただきたいですね。

考えてみると、あらゆる部分で「銀座 しのはら」での経験が活きている気がします。
料理って基本のレシピどおりに作るお店も多いと思いますが、例え同じ食材であってもそのポテンシャルは毎日変わりますし、暑い日や寒い日、湿度が高い日など、環境も日によって全く異なります。「銀座 しのはら」の店主・篠原さんは、それらを踏まえて日ごとに煮物の炊き時間や調味料を変えたりしていました。実は、今の「澤田」にも基本のレシピというものがないんです。当時篠原さんが行っていたことが、すごく心に残っているんですよね。

photo by「Tomomi ♡ 東京グルメ女子」

例えば夏のような湿度が高くて暑い時期なら、冷たい料理や酸味のあるものが体に馴染みやすいはず、じゃあその酸味はどうやってつけるのか。お酢なのか、柑橘の酸味なのか。様々な方法がありますから、そのあたりの微妙なさじ加減は意識していますね。

食材や環境と同じように、お店に来られるお客様の好みも様々。その日ごとに美味しいと感じていただける、お客様の体に馴染む料理を作りたいと考えています。
その視点で言うと「澤田」では、コースの最初にお野菜を使った精進仕立ての一品をお出しすることが多くあります。僕個人の思いですが、空腹でお店にいらしていただいたお客様には、お腹に優しい料理からお出ししたいなと。その後、徐々に動物性のものを召し上がっていただくという流れにしています。

-他にはなかなかない「澤田」ならではの料理、普段お店の献立はどのように考えていらっしゃるのでしょうか。

献立そのものはもちろんですが、コースの順番もものすごく考えていますよ。
例えば、日々お店の行き帰りで外の気候や温度、季節感を気にしていますし、休みの日にじっくり料理について考えることもあります。あとは、毎日忙しくさせてもらっているところで、自分を追い込んでいるときにふと良いアイデアが降りてくることもありますね。

業者との信頼関係を重視、地の食材と季節感を意識した仕入れ

-食材を仕入れる際、どのような部分にこだわりを持たれていらっしゃいますか。

これはどのお店でも同じかもしれませんが「今の季節、今この瞬間に食べてもらいたい食材かどうか」という部分は大切にしています。あとは、今関係を持っているすべての業者さんに共通しているのは「その人から食材を買いたいと思うか」というところ。そう思えない方とのお付き合いは、控えるようにしています。

やはり信頼している方から仕入れた食材ですと「これをしっかり料理に活かそう」という心まで料理に乗るような気がするんですよね。業者さんも人ですから「これは良いものだから、あいつのところに回してあげよう」と思ってもらえるような、お互いが信頼し合った人間関係を大切にしていきたいですね。

コースの最後には季節を感じる和菓子が

食材の産地としては、大阪・関西エリアをメインに考えています。お魚ですと、まずは大阪湾や明石のものを探してみて、思うようなものがなければ関西などエリアを広げていくイメージです。お野菜も大阪の伝統野菜がありますが、エリアにこだわり過ぎずきちんと美味しいものを提供できればと思っています。

料理に合わせるお酒の選び方についてはいかがでしょうか。

photo by「Tomomi ♡ 東京グルメ女子」

お店にはビールやワイン、シャンパンなどひと通りのお酒を揃えていますが、その中でもやはり日本酒にはこだわっていますね。食材と同じく関西のものを中心に、僕の故郷・広島にもあまり名前が知られていない銘酒がたくさんあるので、そのあたりも仕入れています。有名銘柄はもちろん魅力的ですが、色々なお酒との出会いを楽しんでいただきたい。広島を応援する気持ちで、ちょっとだけえこひいきをしています(笑)。

これからも愛され続けるお店となるよう、努力を重ねていきたい

-『ミシュランガイド京都・大阪2024』一つ星獲得おめでとうございます。今の思いをお聞かせください。

率直に嬉しいと思っています。僕が働いてきたお店もミシュランに掲載されましたし、親方たちにも少し恩返しができたんじゃないかなと。
あとは、自分のためというよりも「澤田」が好きで通ってくださるお客様にも「自分が通っているお店はこんなに評価されているのか」と喜んでもらえると思いますから、今回のお話はとてもありがたく受け止めています。

-これからも続けていきたいこと、今後挑戦していきたいことがあればお聞かせください。

これと言った大きな希望はないのですが、やはり今お店に来ていただいているお客様に、これからもサービスやクオリティの高い料理を提供できるように頑張っていきたいです。
今は妻を含む3名体制でお店を営んでいますが、従業員も増やす方向で検討しているので、今後は同じ志を持つ人と一緒にもっと良いお店を作り上げてきたいですね。

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澤田敏允氏 プロフィール
1986年6月7日 広島県呉市生まれ
高校卒業とともにスポーツの専門学校に通うため大阪へ。スポーツインストラクターなどの仕事を経て、24歳で本格的に料理の世界へ入り「島之内一陽」で働き始める。2023年7月9日に「澤田」をオープン。9か月でミシュラン一つ星を獲得。
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日本料理

澤田

JR東西線 新福島駅 徒歩6分

【編集後記】
スポーツインストラクターから腕利きの料理人へと転身し、活躍されてきた澤田氏。お話を伺い、料理はもちろんおもてなしやお店の造りに至るまで、様々な部分に澤田氏の“心”が込められているのだと感じました。わずか9か月で星付きの名店となった「澤田」で、店主の思いが詰まった料理をゆっくりと味わってみてはいかがでしょうか。

※こちらの記事は2024年05月29日作成時点での情報になります。最新の情報は一休ガイドページをご確認ください。

Yuri

校正の仕事に興味を持ち、スクールを経て一休コンシェルジュ編集部へ。好き嫌いはほぼなし。食べることが大好きで、どんなものでも美味しく・楽しくいただきます。編集部メンバーとのお店巡りが最近のマイブーム。もう少しお酒が強くなりたいと思う今日この頃です。

【MY CHOICE】
・最近行ったお店:さ行/デンクシフロリ/BLESS/レストラン プルニエ/ラフィナージュ

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