インタビュー|

名古屋の名店「セルヴァッジョ」上田和也氏に聞く、「大切な人と繋がる“心を満たす料理”への工夫」

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和の雰囲気でイタリア料理を楽しめると、グルメな人々に支持される名古屋の名店「セルヴァッジョ」。“和×イタリアン”をテーマに腕を振るうオーナーシェフの上田和也氏に、料理人を目指されたきっかけから料理とお店作りのこだわりまで伺いました。

サッカー選手を目指す青春時代に養われた「食事」への想い 

-お店をオープンされて15年目を迎えられますが、上田シェフが料理人を目指されたきっかけについてお聞かせください。

実は、小さい頃からプロサッカー選手を目指していて、小学生から大学卒業までサッカーをやっていました。当時はまだJリーグがない頃で、今で言うクラブチームに入り、プロを目指す環境で厳しい世界で過ごしていました。
毎日のきついトレーニングの中で、食事をしている時間が、仲間と楽しく会話ができ、疲れた心まで癒され、また次も頑張ろうと思える時間でした。
美味しいものを食べて心が満たされ、また頑張るという体験が、思い返すと重要な位置づけにありました。スポーツ選手の夢を諦めた時、次は自分が食事を通して何かを提供できたらいいな、と思ったのがきっかけですね。

-サッカーの道から料理の世界へ転向されたのですね!

はい。大学を卒業した23歳から修行を始めました。ずっとサッカー選手を目指してきて、料理人としては遅いスタートです。包丁の扱いもままならない状態だったのですが、スタートが遅かったからこそ専門学校へは行かず、現場で修行をつむことを選び、受け入れてくれた居酒屋で働き始めました。

-その後イタリア料理の世界へ進んだのは、どういった経緯なのでしょうか?

サッカーの世界にいる時に、強豪国イタリアへの憧れが自然と強くなっていたのが根底にあるのかもしれません。また、料理をはじめたタイミングで、その当時の素材重視のイタリア料理に感銘をうけて、その道へすすみました。

名古屋市の閑静な住宅街に、「セルヴァッジョ」という、その後僕自身の原点になるイタリア料理店があり、そこで修行を積みました。僕は、その店の料理が好きで、シェフの考え方は今でも自分の中に根付いています。

-どのような点に影響を受けられたのでしょうか。

一言でいうと、 “シンプル イズ ベスト”。素材本来の味をひきだし、いかに手を加え過ぎずに美味しいものを提供できるか、サービスも過剰にならず、いかにお客様が求めていることへ寄り添えるか、という考え方です。当時の自分は、一生懸命修行をしていて、力の抜き加減が全く分からなかったので、強く影響をうけました。
残念ながら、その後、お店は看板をおろすことになりました。シェフのことを尊敬していたので、独立する時には是が非でも「セルヴァッジョ」の名前を継承したいという思いが生まれていました。

-店名の由来にまつわる素敵なエピソードですね。独立についてはいつごろから考えていらしたのでしょうか。

料理の道へ進んだ時から、独立することを目指して修行をしていました。独立したときに、自分のパフォーマンスがどの程度発揮できるのか、その時その時の自分の能力を客観視しながら修行を重ねていきました。前セルヴァッジョの後、名古屋のイタリア料理の名店「Cucina italiana gallura」で修行をし、スーシェフを務めました。一流店でありつづけるパフォーマンス、チームをまとめる経験もそこで培えたと思っています。その後、別のイタリア料理店のシェフの経験を経て、35歳に独立しました。

独立する際に、前セルヴァッジョのシェフのもとへ足を運びました。先ほどお話しした通り、自身の原点となる「セルヴァッジョ」の看板を再び掲げて継承していきたいという思いを伝え、快諾をいただき、2007年、高岳に「セルヴァッジョ」をオープンしました。

「セルヴァッジョ」流、イタリア料理と和の世界の融合

-2007年に高岳でオープンされ、北欧家具中心のカジュアルな店構えから、2019年に東桜へ移転され、お店の雰囲気が変わりましたね。庭や盆栽をしつらえた和の空間になり、北欧家具を使用されていることで、柔らかな和の印象があります。

我々日本人には、食材も建築もそうですが、和の日本文化が根付いていると思います。
設計段階から日本家屋をイメージした建築をお願いし、庭や盆栽を並べた空間作りから、自然と今の形になっていきましたね。盆栽は、専門家に手ほどきをうけながら、基本は自分で手入れをしています。

家具に関しては北欧家具が好きなので、移転後も引き続き伝統的な和の空間の中に取り入れていきました。
イタリア料理と和の融合をイメージさせる提案を、空間でもしていこうと思っています。

-お店までのアプローチから、レストラン内に入ると和の雰囲気が広がる、とても素敵な世界観ですね。

ありがとうございます。暖簾をくぐると、都会の喧騒から離れ、静かな庭で季節を感じてから店内に入っていただき、お食事でも季節を感じていただく。そのような流れをつくりたくて、庭をかまえました。そして苔生す庭の中に、シンボルツリーとしてモミジの木を植えました。

四季を奏でる木をシンボルツリーとしておきたかったので、春は若葉、夏は青葉、秋は紅葉、冬は落葉と表現するモミジを選びました。料理では季節感をすごく大切にしているので、空間でも四季を味わっていただきたいと考えています。

―日本の季節感を味わっていただくという観点から、料理も国産のものを使われていらっしゃるのですか。

そうですね。食材に関しては、なるべく地のものを使うということを心掛けています。愛知県は海に面しており、山も近くにあり、食材は豊富にあります。
食材の移動距離が少ないことは、やはりお客様へいい状態で提供できる一番の近道だと思っているので、国産でも移動距離が少ないものを選ぶように心がけています。
愛知県は三河湾に面しているので、魚介の資源がたくさんあり、自然に地元の魚介類を多く使用するようになりました。また、自身がベジタブルフルーツマイスターを取得したことから野菜も多く使用し、魚介類と野菜が中心の今の形ができてきたと思います。

魚介類は、夏は脂が少なく、冬は反対に自身の脂を蓄えるので脂ののった魚が豊富となります。なので、季節ごとの旬の魚介類をメインに、そこに旬の食材のみをあわせるようにしています。調味料を少なくし、オリジナルのブロードを使用することで、素材をいかにシンプルに生かせるかという点にこだわってやっています。また紀州備長炭を使用した炭火焼も提供しています。

食材のバランスを考えながら自分にどんな料理を生み出せるかを、常に意識するように心がけています。

―こだわりという点では、料理と一緒にいただけるパンやリモンチェッロなど、手作りされているそうですね。

パンは前日の夜から低温長時間発酵の天然酵母で作っています。15時間かけて一次発酵し、翌朝に二次発酵させて焼いています。長い間発酵することで、より複雑な風味に変わるためです。
リモンチェッロは、地元浜松の実家の畑で、無農薬国産レモンを生産しています。無農薬の国産レモンだからこそ、皮も使用でき、自家製レモンチェッロを手作りするようになりました。

ワインはイタリアの北~南の州で多く揃えています。イタリアワインはとりたててブドウの品種が多く個性豊かなので、自然派のビオワインを含め、より料理にあわせて取り揃えています。その中でも特に生産者にはこだわるようにしています。来店した際には、ソムリエに是非気軽に聞いていただき、料理とのマリアージュを楽しんでいただきたいです。
コロナ禍になり、いい機会かと思い、ノンアルコールのスパークリングワインも始めました。アルコールがお苦手な方にも料理とあわせて楽しんでいただけたら嬉しいですね。

大切な人と楽しい時間を過ごせる場を追求し続ける

-今後の目標、想いについてお伺いさせてください。上田シェフがこれから目指されることは何でしょうか。

昨今のコロナ禍で変わってしまった価値観は少なくないと思います。
しかしその中で、人と接することを禁止され、日々の生活の中で人と交われないことで、いかに多くの人々がストレスを抱えているかを感じています。大切な人と美味しい食事を食べ、共に時間を共有することで、心身ともに癒すということがどれだけ大切なものかと改めて実感しました。自分が最初に料理人を志した時に「大切な人との食事の時間で心身ともに癒す」ということは、多くの人に求められていることだと、自分の信念は間違っていないと、コロナ禍で初心をとり戻すいい機会だったと思います。
大切な人と食事をする場所として求められるお店であり続けたいと強く思います。

僕が一番大切にしているのは、「セルヴァッジョに行って今日は楽しかった」と言っていただけることです。そのためには、セルヴァッジョだから味わえる美味しい料理を提供することが絶対です。それに加えて、いらっしゃるお客様がリラックスしていただけるには何をすれば良いか、常にお客様一人一人に合わせたサービスも提供していきます。
初心を忘れず、今後もセルヴァッジョスタッフ全員で、美味しい料理で大切な人と過ごす時間のお手伝いをしていきたいですね。

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【上田和也氏 プロフィール】
1972年静岡県生まれ。小学生からジュピロ磐田クラブチーム所属。プロアスリートを目指す経験から食の大切さを実感し大学卒業後に料理の道へ。名古屋のイタリア料理店で研鑽を積み、2001年CucinaItallianaGalluraでスーシェフを務める。2007年、愛知名古屋・高岳に自身の店、Selvaggioを開業。2019年8月、愛知名古屋・東桜へ移転。街の喧騒の中、庭を構えた和のしつらえの落ち着いた空間にさらなる好評を得ている。
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【編集後記】
レストランの語源は、「回復する食事」という意味から転じてきたと言われます。上田シェフのお話を伺う中で、食事で元気になるということは、美味しい料理を通して大切な人と楽しさを共有する体験そのものであると改めて感じました。和を感じるイタリアンで、大切な人との素敵な時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

https://selvaggio.jp/

Airi Ishikawa

一休コンシェルジュ メディア事業部長。高級旅館のお取り寄せが最近のマイブーム。インタビューを中心に、地産地消や、生産者に近い距離で食材と向き合う極みのシェフがいる店をご紹介します。
【MY CHOICE】
・最近行ったお店:鮨 梢 / Le Signe / 愚直に / ICARO miyamoto
・好きなお店:ベージュ・アラン・デュカス / ブラマソーレ / 美伶
・自分の会食で使うなら:SÉZANNE / 中国飯店 富麗華 / エディション・コウジ シモムラ
・得意ジャンル:フレンチ / バー
・好きな食材:山菜

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