食通が語る、2025年のグルメトレンドとは 中村孝則氏編

KIWAMINO編集部では、食の専門家の方々に「2025年に行きたい、今気になるレストラン」と「2025年のグルメトレンド」について伺いました。今回は、コラムニスト・美食評論家として国内外を駆け巡る中村孝則氏。「世界のベストレストラン50」の日本評議委員長、「新潟ガストロノミーアワード」の特別審査委員長まで務める中村氏が予想する、2025年の食のトレンドとはどのようなものでしょうか。

お伺いしたのは……

中村孝則氏
神奈川県生まれ。美食評論家、コラムニスト。 ファッションからカルチャー、グルメ、旅やホテルなど“ラグジュアリー・ライフ”をテーマに、雑誌や新聞、TVにて活躍中。 2007年、フランス・シャンパーニュ騎士団のシュバリエ(騎士爵位)の称号を授勲。2010年には、スペインよりカヴァ騎士の称号も授勲。 2013年からは、「世界のベストレストラン50」、「アジアのベストレストラン50」の日本評議委員長も務める。剣道教士七段。大日本茶道学会茶道教授。

2025年に行きたい、今気になるレストランとは

ファインダイングに関して個人的に注目しているのは「アジアのベストレストラン50」の2024年のランキングで、51位から100位にランクインしているお店です。具体的には「Crony」「レヴォ」「MAZ」「オマージュ」「エスキス」です。これらのお店はアジア諸国のフーディたちも足繁く通っていて、2025年3月25日にソウルで発表予定の2025年の「アジアのベストレストラン50」に初のランクインが期待されています。その意味で、3月に発表されるこのランキング自体が、2025年の日本を含めたアジア諸国のグルメトレンドを予想する上で、大きな指標になるでしょう。

その海外ゲストたちは、ファインダイニングだけでなくローカルフードやカジュアルなお店にも足繁く通っているようで、都心の居酒屋や地元の鮨屋さんも人気の様子。その幅の広さも、今の食トレンドのひとつの傾向であり、国内のゲストにも良い意味で後押しになっています。

食通が予想する、2025年の食トレンドについて

まず、2024年を振り返ると、円安の後押しもあり海外から多くの観光客が日本を訪れました。その一番の目的は“日本の食や食文化の体験”というのが、多くのアンケート結果が示す通りです。アンケートによっては、日本の酒が10位以内に入っているデータもあり、それらを含めると、海外のゲストたちの多くは、日本の食体験を楽しみに来ていると言ってもいいでしょう。それは、いわゆるファインダイニングから居酒屋のようなカジュアルなお店やB級グルメまで幅広いのが特徴で、この勢いは2025年も、ますます加熱すると予想しています。

日本酒ブランド「HEAVENSAKE」のローンチイベント

また2024年末に、ユネスコが日本の「伝統的酒造り」を無形文化遺産に登録しました。提案概要によると、麹(こうじ)を用いる酒造りは、500年以上前の室町時代に技術の原型が確立して、日本酒や焼酎、泡盛やみりんなどの製造を通じて受け継がれたとあります。すでに海外でも日本酒人気が高まっていますが、このユネスコ無形文化遺産への登録によって、2025年は日本酒や焼酎、そして泡盛といった日本の国酒の魅力が再注目されるのではないかと予想しています。日本酒や焼酎に強い居酒屋や専門店などは、今以上に人気が集まるのではないでしょうか。

ファインダイニングでは、食のジャンルを超えて、日本酒のペアリングも積極的に取り入れはじめて久しいですが、近頃は日本酒や焼酎を使ったカクテルなどに積極的に挑戦するお店も増えています。例えば「鮨m」ではオーナーソムリエの木村好伸さんが、日本酒を使ったユニークなカクテルや、新たな飲み方で鮨とマリアージュしてフーディたちに話題です。コーヒーを使った日本酒カクテルなどは、筆者もその美味しさに度肝を抜かれました。いずれにせよ、2025年はインバウンドに引っ張られるかたちで、レストランシーンは新旧交代も含めた新たなトレンドが生まれると期待しています。

数多の名店に通い、味覚の経験値が国内随一な美食家が予想する2025年の食のトレンド。今後もインバウンド需要にあわせて “日本の食や食体験”の魅力や価値がますます高まることでしょう。そうした動きとともに進化するグルメシーンから、ますます目が離せませんね。

※こちらの記事は2025年01月22日作成時点での情報になります。最新の情報は一休ガイドページをご確認ください。

中村孝則

神奈川県生まれ。美食評論家、コラムニスト。
ファッションからカルチャー、グルメ、旅やホテルなど“ラグジュアリー・ライフ”をテーマに、雑誌や新聞、TVにて活躍中。
2007年、フランス・シャンパーニュ騎士団のシュバリエ(騎士爵位)の称号を授勲。2010年には、スペインよりカヴァ騎士の称号も授勲。
2013年からは、「世界のベストレストラン50」、「アジアのベストレストラン50」の日本評議委員長も務める。剣道教士七段。大日本茶道学会茶道教授。

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