食通が語る、2024年のグルメトレンドとは 中村孝則氏編

今回KIWAMINO編集部では、食の専門家の方々に「2024年に行きたい、今気になるレストラン」と「2024年のグルメトレンド」について伺いました。第3弾は、コラムニスト・美食評論家として国内外を駆け巡る中村孝則氏。「世界のベストレストラン50」の日本評議委員長、「新潟ガストロノミーアワード」の特別審査委員長まで務める中村氏が予想する、2024年の食のトレンドとはどのようなものでしょうか。

お伺いしたのは……

中村孝則氏
神奈川県生まれ。美食評論家、コラムニスト。 ファッションからカルチャー、グルメ、旅やホテルなど“ラグジュアリー・ライフ”をテーマに、雑誌や新聞、TVにて活躍中。 2007年、フランス・シャンパーニュ騎士団のシュバリエ(騎士爵位)の称号を授勲。2010年には、スペインよりカヴァ騎士の称号も授勲。 2013年からは、「世界のベストレストラン50」、「アジアのベストレストラン50」の日本評議委員長も務める。剣道教士七段。大日本茶道学会茶道教授。

2024年に行きたい、今気になるレストランとは

「Le Jardin(ル ジャルダン)」は、福井県で20年以上の歴史を持つ、同県を代表するフランス料理店。2022年の大リニューアルで就任した新たなシェフ・堀内亮氏の料理が素晴らしい。堀内氏は、フランスの三つ星レストラン「Regis et Jacques Marcon」で副料理長を務めるなど、名店での修行経験も豊富です。第54回<ル・テタンジェ賞>国際シグネチャーキュイジーヌコンクール2022年世界大会で第1位に輝く実力者。「汐うに」など、福井の食材を使ったフランス料理は白眉。季節ごとに味わいたいです。
新潟県にある「日本料理 蘭」は、すでに完成されたと思われがちな日本料理に、「まだ進化の余地がある」と、新潟で果敢に挑戦する姿勢は特筆に値すると思います。新潟の四季折々の魅力的な食材を使った料理は、「また別の季節も味わいたい!」という余韻も素晴らしい。2023年度の「新潟ガストロノミー」の特別賞がそれを裏付けています。

2023年秋「麻布台ヒルズ」の誕生にともない、その象徴的なレストランとして、リニューアルオープンした新生「フロリレージュ」。個人的には2つの注目点があり、1つはゲストが大きなテーブルを囲んで食べる「ターブルドット」というダイニングスタイルです。フランスの料理用語でまかない食堂を意味するこの形式は、“食べる歓びをシェアする”というシェフ・川手寛康氏の思いを込めたもの。私は、これからのガストロミーのトレンドの1つと睨んでいます。そして、東京のレストランの料理の魅力の本質をどのように調理するのか?ある意味で、試金石になる店であり、2024年に定期的に体験したい店の筆頭です。

食通が予想する、2024年の食トレンドについて

インバウンドの好調を背景に、フーディたちのローカルガストロミーへの希求は、さらに加速すると思います。すでに金沢や福岡、静岡の人気レストランは、海外からのフーディも知るところ。予約困難な店も増えつつある中、彼らの食指はさらにディープなエリアへ向かうでしょう。具体的には、2024年3月に新幹線が開通予定の福井県。「すしの県」を標榜する富山県。「新潟ガストロミーアワード」を設立した新潟県。美食でのブランディングを計画している三重県や千葉県などにも注目しています。

その一方で、あらためて海外からの玄関口という意味でも、東京のレストランにも再注目しています。折しも、「麻布台ヒルズ」や「虎ノ門ヒルズ」を筆頭に、あらたな出店ラッシュも追い風になっています。川手氏の新生「フロリレージュ」は、まさにその象徴で、大テーブルでゲスト同士が囲む「ターブルドット」というダイニングスタイルは、東京らしい表現になっていると思います。また、「MAZ」、「CYCLE」、「SAAWAAN BISTRO」といった海外の人気店が東京へ出店する流れも見逃せない。そこにシェフ・北村啓太氏の「apothéose (アポテオーズ)」やシェフ・小林圭氏が手がける「KEI COLLECTION PARIS」など、いわゆる凱旋組の東京出店も拍車をかけるにちがいない。いずれにせよ、2024年は東京から地方への新たな美食街道の動線が生まれると予想します。

世界中を騒がせた新型コロナウイルスも落ち着きを見せた2023年。多大な影響を受けた飲食業界も、2024年は大きく躍進していくことでしょう。なかでも、中村氏が予想する“ディープ・ローカルと東京回帰”からは目が離せません。海外から日本に進出する動きも多様化する中、さらに新たなトレンドが生まれることでしょう。

※こちらの記事は2024年02月15日作成時点での情報になります。最新の情報は一休ガイドページをご確認ください。

中村孝則

神奈川県生まれ。美食評論家、コラムニスト。
ファッションからカルチャー、グルメ、旅やホテルなど“ラグジュアリー・ライフ”をテーマに、雑誌や新聞、TVにて活躍中。
2007年、フランス・シャンパーニュ騎士団のシュバリエ(騎士爵位)の称号を授勲。2010年には、スペインよりカヴァ騎士の称号も授勲。
2013年からは、「世界のベストレストラン50」、「アジアのベストレストラン50」の日本評議委員長も務める。剣道教士七段。大日本茶道学会茶道教授。

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