今回KIWAMINO編集部では、食の専門家の方々に「2024年に行きたい、今気になるレストラン」と「2024年のグルメトレンド」について伺いました。第1弾は、ライフスタイル・エディターとして、グルメやレストラン企画をメインにご担当されている『婦人画報』副編集長・平田剛三氏。常にトレンドに触れていらっしゃる平田氏が予想する、2024年の食のトレンドとはどのようなものでしょうか。
お伺いしたのは……
『婦人画報』副編集長・平田剛三氏
『25ans』『メンズクラブ』など月刊誌のムック制作を経て、1994年より婦人画報編集部在籍。2018年から2年間、住宅建築専門誌『モダンリビング』にも携わる。ライフスタイル・エディターとして、主にグルメ、レストラン企画を担当、日本料理の連載も多数。担当した書籍は青柳・ 小山裕久著『古今料理集』。愛猫の名前は「コトロ」。
2024年に行きたい、今気になるレストランとは
「コングスト」は人形町のスペイン料理店で、2023年秋にオープンした直後からおいしいもの好きの知人がSNSで盛んに取り上げているのですが、まだ伺えていません。銀座、神楽坂、鎌倉の名店で修行後に独立した坂田慎吾さん。彼の手掛けるパエリヤほか豊富なバルメニューがコース8,800円でいただける(2023年12月現在)とあって期待しています。「カム バイ スタンドバインミー」は、学芸大学前、自由が丘でフレンチの手法を取り入れたベトナム料理を出す白井瑛里さんが、「麻布台ヒルズ」内の麻布台ヒルズ マーケットに2024年1月に出すお店。繊細な味付けと食後感の爽やかさは、これまでのベトナム料理の概念を変えてくれました。麻布台ヒルズは「ここにしか出店していない」という綺羅星のようなレストランがどれも魅力的ですが、なかでも注目の一軒です。
「KEI COLLECTION PARIS」は、虎ノ門ヒルズ駅の真上に立つ「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」49階に2024年春誕生予定。“ガストロノミーグリル フランセーズ&バー”とうたい、パリで三ツ星獲得し続ける小林圭シェフ プロフデュースによる、海と大陸の食材本来の美味しさを追求する、これまでにないスタイルのお店が誕生します。和菓子屋「とらや」と共同運営する静岡・御殿場「Maison KEI(メゾンケイ)」、監修する「ザ・リッツ・カールトン東京」の45階に位置する「アジュール フォーティーファイブ」とも異なる、新たな小林シェフの一面に期待しています。
食通が予想する、2024年の食トレンドについて
「ぺスカタリアン」、正しくはペスコ・ベジタリアン(pesco-vegetarian)。一般的な食事から肉を除いた食事、もしくは魚介類、乳製品、卵は食べる菜食のことを指し、ヴィーガンやベジタリアンとの明らかな違いは魚介類がOKなところ。日本人にとって牛や豚より魚の方が消化しやすいため、肉を避けて消化器の負担を減らし腸内環境を整えることができるというメリットが、これから話題になると思います。すでに麻布十番の「Ichi Azabu」のようにヴィーガンとともにぺスカタリアンのコースを取り入れている店も登場しています。そもそも日本では旬の魚介を多彩な調理法で楽しむ文化がありますから、寿司をはじめとした日本料理、イタリアンなどジャンルを超えて広がりを見せる可能性を秘めています。
往年のベテランシェフの新たなスタイルにも注目。三國清三シェフは赤坂迎賓館前の店を閉め、これまで育てたスタッフは麻布台ヒルズの「Hills House Dining33」へ、自身は8席ほどのひとりで賄える小さな店を同じ赤坂で2024年に開きます。脇屋友詞シェフは赤坂や横浜の既存店の編成を変えつつ、2023年12月、限られた客を自らカウンターに立ってもてなす「Ginza脇屋」をオープン。ともに昨今よく聞く「ターブルドット」(家の主人が料理を作り、家族とゲストとで一緒のテーブルで食事をしながらもてなすスタイル)の流れを見越した店作りだと思います。これまで、一代でブランドを築いたシェフが故郷のある地方に戻って開業する話をよく聞きましたが(「麻布長江」の長坂松夫さんや「アラジン」の川崎誠也さんなど)、これからは赤坂や銀座という都心で新店を、という流れになるのかもしれません。
世界中を騒がせた新型コロナウイルスも落ち着きを見せた2023年。多大な影響を受けた飲食業界も、2024年は大きく躍進していくことでしょう。2023年にオープンした麻布台ヒルズや虎ノ門ヒルズの新しいレストラン、人や環境に配慮した食スタイルの普及など、新たなトレンドが生まれてくることが予想される飲食業界から、ますます目が離せませんね。
※こちらの記事は2024年10月25日更新時点での情報になります。最新の情報は一休ガイドページをご確認ください。