「すしログ」が選ぶ、昔ながらの粋を味わえる江戸前鮨店5選

本記事では“粋を味わえる江戸前鮨店”を紹介します。最近の鮨人気の高まりは留まるところを知らず、若い職人さんのお店も次々と誕生しています。都心の一流店はスタイリッシュな内装で、キリッとした空気が流れ、鮨を頂く前から心が洗われるようです。ただ、そのようなお店を回りながら訪問すると癒やされるのが、昔ながらの雰囲気の鮨店。仕事もクラシックなお店が多く、雰囲気と仕事に心が和みます。鮨のバリエーションが広がる今だからこそ、様々なお店を訪問する魅力があるはずです。

1.粋な町・日本橋で古典とモダンをミックスする!「蛇の市 本店」

蛇の市 本店(東京都/三越前駅)

「蛇の市 本店」は日本橋にある鮨店で、創業を1889年(明治22年)にさかのぼります。日本橋は築地の前に魚河岸があった場所なので、今でも老舗の鮨店や天麩羅店が残っています。現在は5代目親方兄弟が漬け場を守っていて、古典的な江戸前鮨をモダンにアレンジする温故知新の試みを行っています。

「蛇の市 本店」の魅力については、老舗に生まれた兄弟が伝統の味と仕事を守りながら、現代的な感覚も採り入れている点です。しかも、価格はリーズナブル。極めて古典的な「のの字巻き」を出されていたり、濃度が非常に高い煮ツメを使用されていたりする点に日本橋の老舗としての矜持を感じます。

寿司

蛇の市 本店

東京メトロ銀座線 三越前駅 A1出口を出て神田方面へ。最初の角を右折し二つ目の角を左折。左手側にございます。

8,000円〜9,999円

2.風情ある浅草観音裏で鮨も雰囲気も粋そのもの!「鮓 かね庄」

鮓 かね庄(東京都/浅草駅)

浅草の観音裏にある「鮓 かね庄」は、2017年6月にオープンした鮨店です。お店を営むのは、御徒町にあった人気鮨店「鮨處寛八」ご出身の渡辺親方。オープンは近年であるものの、店内は渋い雰囲気。観音裏エリアにはフグ料理店が多数存在しますが、こちらもフグ割烹の後に入られたので店内に庇があります。

「鮓 かね庄」の特徴と言えば、確かな江戸前鮨の仕事で“鮨が継承される魅力”を伝えてくれる点です。そして、シャリについてもクラシックな町、浅草にあって独特です。米のもっちり感を引き出す炊き加減で、お酢は米酢のみ。酸味も塩気も穏やかです。砂糖を使用しつつも甘みは非常に優しく嫌味がありません。赤酢で砂糖不使用のシャリが多い下町にあって、独自のスタンスを高いレベルで表現されています。

寿司

鮓 かね庄

つくばエクスプレス線 浅草駅 A2番出口 徒歩9分

15,000円〜19,999円

3.今は無き銀座の名店を継ぐ王道の江戸前鮨!「銀座 鮨 み富」

銀座 鮨 み富(東京都/東銀座駅)

銀座のど真ん中にある「銀座 鮨 み富」は、名店「新富寿し」ご出身の三橋親方が営むお店です。「新富寿し」は大正時代から2017年まで続いた名店で、池波正太郎が幼少から晩年まで通い続けたという逸話がありました。閉店後「銀座 鮨 み富」が2018年7月にオープンした時は、いち鮨好きとして安堵しました。

古典的な仕事を、正攻法で現代的に表現されている点が「銀座 鮨 み富」の魅力です。「新富寿し」で高齢の親方に代わって取り仕切っておられただけあり、仕事の精度の高さは折り紙付き。特に〆た光物や煮物についてはご提案、古典好きとしては琴線に触れるもの。それでいて、三橋親方のセンスで調整されることにより、決して古臭くありません。シャリについても修行先は冷たかったところ、人肌の温度を維持し現代的に仕上げています。

寿司

銀座 鮨 み富

東京メトロ日比谷線 東銀座駅 徒歩2分

12,000円〜14,999円

4.鮨通におすすめしたいシグネチャーのある老舗!「神田笹鮨」

神田笹鮨(東京都/神田駅)

「神田笹鮨」は店名が示す通り神田駅近くにある老舗で、1903年(明治36年)の創業です。歴史の割に訪問しているグルメは少なく、穴場のお店だと言えます。「江戸前寿司の〆寿司と言えば、酢〆です」と断言した上で「〆寿司は東京一と自負」と力強く宣言される先代親方のお言葉に、老舗の江戸前鮨の矜持を感じます。

「神田笹鮨」の魅力は、お店ご自慢の〆を施した鮨種で、特に「ジンタ(豆アジ)」は格別です。先代親方は「ジンタを知らずして鮨を語るなかれ」との名言を残されています。ジンタは立夏の頃に揚がる鯵の新子です。〆の仕事により味が凝縮されていながら、食感はしっとり。噛み締めると繊維がホロりとほどけてゆき、鯵の香りを楽しませてくれます。これはまさにスペシャリテと言えるでしょう。

寿司

神田笹鮨

JR線 神田駅 東口 徒歩2分

3,000円〜3,999円

5.目利きが光る仕入れで鮨と料理を満喫させてくれる!「おすもじ処 うを徳」

おすもじ処 うを徳(東京都/東向島駅)

「おすもじ処 うを徳」は、江戸時代に風光明媚な行楽地として栄えた向島にあるお店です。現在は3代目の小宮健一さんが暖簾を守っており、京都の日本料理店「割烹やました」で修行されたキャリアと江戸前鮨の二刀流で楽しませてくれます。なお「おすもじ」とは聞き慣れない言葉だと思いますが「すし」の意味で、室町時代に女性の間で流行した言葉です。京都で使用される言葉ですが、今や使用される料理人がほとんどいらっしゃらないので、検索すると「うを徳」さんがヒットします。

「おすもじ処 うを徳」の魅力でもあるのが、卓越した食材力と日本料理出身ゆえの調理技術の高さです。過去に足を運ばせて頂き、毎回食材に驚くお店は全国でも決して多くはない!と興奮した次第です。立地と雰囲気が渋いお店になりますが、食材を愛す食通諸氏はぜひとも訪問してみてください。特にこちらの鰻は印象深い味わいです。鮨についても改良を重ねておられ、着実にご自身の表現を実現されています。

寿司

おすもじ処 うを徳

東武伊勢崎線 東向島駅 徒歩5分

20,000円〜29,999円

以上、本記事を読んでくださった方の新たな鮨の発見につながれば幸いです。鮨は現在進行系で進歩し続けている料理ですが、だからこそトップクラスの有名店以外も巡る楽しさがあります。様々な鮨があることや、鮨の調理技術の奥深さを感じさせてくれるのが“粋を味わえるお店”だと感じます。

※こちらの記事は2025年01月11日作成時点での情報になります。最新の情報は一休ガイドページをご確認ください。

「すしログ」大谷 悠也

1981年、広島県生まれ。国際基督教大学卒業。鮨研究家、広島県鮨アドバイザー、日本酒ペアリング研究家。日本ソムリエ協会 J.S.A. SAKE DIPLOMA。鮨・鮓・寿司の本質を伝え、人気を高めるべく「すしログ(https://sushi-blog.com/)」を運営。旺盛な食欲と好奇心に基づき、国内外で6,000軒以上の飲食店を訪問。市場や生産者、醸造家のもとに足を運び、自ら調理も行う。

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