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都内屈指の予約困難店「銀座大石」グルメレポ。元北島亭のスーシェフが魅せる少量多皿の美学

フランス料理好きなら、知らない人はいない「北島亭」。長年スーシェフとして腕を振るっていた大石義一さんが、2019年9月に「銀座大石」を開業し独立されたことは記憶に新しいところです。開業と同時に予約が殺到瞬く間に人気店の仲間入りを果たされましたが、今回は独立された大石さんのお料理の人気の秘密を「KIWAMINO」をご覧の皆様にお届けします。

※この記事は2020年1月に取材した情報をもとに制作しました。

銀座マロニエ通りに面した、「マロニエ通り銀座館」の2階に居を構える「銀座大石」。
店内は清潔感のあるシンプルな白い壁に対し、淡く温かみのある木目調の大きなL字カウンターとのコントラストが美しいです。

すべてのお客様に満足を。「銀座大石」で成すべきことを突きつめる

まずはお腹を温めるために、アールグレイに塩とバターを溶かしたスープを。チベットやブータンなどで飲まれるバター茶のイメージで、まろやかな塩味が食欲を刺激しつつ、胃を温めてくれます。

続いては、イチボのステーキをタルタル風に挟み込んだ一皿。固めた卵黄が口のなかでほどけ、イチボの脂とよく合います。よく噛むと、藁で燻製をかけたキャビアの塩味とホワジャオ(花椒)の香りが口いっぱいに広がり、後味にはさっぱりとした余韻が残る優しい前菜です。

ここに、アンリオの「ブリュット スーヴェラン」を合わせます。キリッとした辛口の味わいにエレガントな酸味を持つシャンパーニュが、肉の旨味とキャビアの塩味を巧みに引き立ててくれます。食事の始めに飲むお酒として最適な軽やかさと、綺麗なのどごしを味わわせてくれました。

カリフラワーのムースを覆い隠すコンソメのジュレに浮かぶのは、バフンウニ、ボタンエビ、アワビ。「北島亭」の人気メニューを彷彿とさせる仕立てですが、かつて「北島亭」の時に感じた旨味の重厚感を少し抑えつつ、食材自体が持っている美味しさの調和を食べ進めながら楽しむ余裕が作られていました。

「皿数が『北島亭』の倍以上になるコースなので、満足感を削ぐことなく流れを楽しめるように仕立てています。昔からのお客様にも新しいお客様にもご満足いただけるように、前にやっていたことをブラッシュアップしていきたいですね」という大石さんの言葉から、細やかな心配りを実感しました。

ドメーヌ・イヴ・キュイユロンの「マルサンヌ レ ヴィーニュ ダ コート 2018」は、柑橘のフルーティーな香りに、穏やかな苦味のある辛口の白ワイン。旨味で満ち足りた口のなかにシャープさを取り戻してくれるので、何度もコンソメと魚介の調和の瞬間を楽しむことができます。

酢飯に乗って現れたのは銚子のノドグロ。香ばしく焼き上げられたノドグロは、見ただけでも脂の乗り具合が伝わってきます。酢飯と少し馴染ませるようにして口に運ぶと、バルサミコ酢の酢飯だったことに気が付きます。25年熟成のもので甘み、フレッシュなバルサミコで酸味を出しています。ノドグロは噛んだ途端に脂が溶け出すほど。この濃厚な脂が酢飯と混ざり、乳化したような一体感が生まれます。口のなかでノドグロと酢飯が渾然一体となった瞬間が至福で、見事なノドグロの脂の活かし方でした。

ドメーヌ・フランソワ・ヴィラールの「サン ジョセフ フリュイ ダヴィルラン 2016」。ドライな後口にボリュームのあるボディの白ワインなので、ノドグロの脂にもしっかり合います。

ここまで、随所に和食の要素も感じます。実は開業準備の時間を使って日本料理店でも修業をされたというお話を伺ったところで登場したのが、聖護院蕪が入ったスープ。スッポンや鶏ガラ、複数の貝から取ったスープは、深い滋味を感じるご馳走の味がします。適度な緩急を意識したコースの流れが心地よいです。

ドメーヌ・ウルストの「グラン クリュ ブラント リースリング ヴィエイユ ヴィーニュ 2017」は、力強さがありながらも繊細なミネラル感がある白ワインで、スープとも違和感なく調和します。スープの出汁感をそっと肯定してくれる、よきパートナーでした。

続いては、八寸のように仕立てたテリーヌ食べ比べの一皿。新鮮な新潟の青首鴨を使った、今日作って今日食べるためのテリーヌは、小気味よい歯応えと臭みのない鴨肉の香りが食欲をそそります。野菜のテリーヌと交互に食べると、それぞれの完成度の高さを堪能しながら味わえます。

ドメーヌ・ウルストの「ロゼ ダルザス 2018」は柔らかい酸味を持つロゼワインで、青首鴨の美味しさをじっくりと引き出してくれる相性の良いご提案でした。
大石さんお得意のフォアグラと黒トリュフと根セロリのテリーヌも、ねっとりとした味わいがトリュフ風味のコンソメゼリーと共に口いっぱいに広がっていくので、多幸感に包まれます。

ここで、ドメーヌ・マルク・テンペの「ゲヴェルツトラミネール ツェレンベルグ 2016」の白ワインを。さとうきびや蜜のようなニュアンスを感じるリッチな果実感で、フォアグラを更に美味しく味わえます。

もう少しフォアグラに浸りたいと思っていたところに、フォアグラを裏ごしして生クリームでのばしたフォアグラ最中。とちおとめと、あまおうのコンフィズリー、煮詰めたバルサミコ酢も入っており、フォアグラの魅力を再確認しつつ、小休止のグラニテのようで思わず笑顔になります。

変幻自在の美味しさ、また食べたいと思う楽しい余韻

コースも終盤を迎え、ここからは程よい厚みのボディと上品なナッツ香、鮮やかなミネラルの余韻が長いシャルドネ、ドメーヌ・ブセイ・ローランの「ムルソー ヴィエイユ ヴィーニュ 2017」の白ワイン一本とじっくりお付き合いを。時間の流れと共に変化するワインの味わいも楽しんでいきます。

マナガツオは、皮はカリっとポワレし、身の部分はフライ仕立てでした。海老芋と貝のソースは塩味が抑えてあり、付け合わせのキャビアで塩加減を自分の好みに調整して食べられる工夫がうれしいです。ムルソーともよく合い、ソースの重みを調整してくれます。

鳥取県の大山地鶏を丸ごと一羽ゆでたむね肉は、煮汁を煮詰め卵黄で仕上げたソースを使って、力のある地鶏の旨味が全面に出ている一皿です。提供直前に黒トリュフをソースと合わせて出しているので香りがよく、ソースを飲み込むのが惜しいと思ってしまいます。

「まだまだありますからね!」と、大石さんからスイカとライムのシャーベットをいただきます。スイカは甘く、カクテルを飲んでいるかのような清涼感もあり、満腹前にほっと一息つけました。

飛騨牛のなかでも希少な、とび牛のランプ肉のロースト。ゲランドの塩と山葵で食べればとび牛が持つ濃厚な赤身肉そのものの旨さが楽しめます。また、赤ワインとすじを煮込んだソースと一緒に食べれば、ソースととび牛の旨味が濃密に絡み合った何とも言えない香りが噛む度に鼻を抜けていきます。

ここから締めのご飯、一皿目は下関の虎ふぐのから揚げと白子を鯛とフグで取った出汁で炊き込んだご飯です。ご飯をよく混ぜ込んでからふぐの出汁をかけ、リゾットのように仕立てて完成。てっさは半分が炊き込まれ、もう半分はふぐの出汁をかける直前に盛り付けられます。半生のてっさの歯応えと、濃厚な虎ふぐの旨味がお皿全体から溢れ出ていて、思わずお代わりをいただきました。

もうお腹いっぱい、と思いつつ二皿目の締めのご飯。バターと小麦粉を使わない、肉と野菜のシンプルな旨味のカレーライスをいただきます。さっぱりとして後を引く美味しさ。皆さん召し上がる影の人気メニューというのも頷けます。

最後のデザートまで美味しくいただき、「銀座大石」を食べ尽くして大満足でした。食事とお酒を味わいながら、大石さんが目の前でお料理を作り、その美味しさを満面の笑みで説明してくれる。食事の楽しみを改めて感じることができたひとときでした。

お客様にもっと満足していただくには、しなければならないことがまだまだ沢山ある。冗談を言いながらも、真剣な表情でそう仰っていた大石さんが目指すのはどんなお店なのか、これからがとても楽しみです。

お店の衛生対策について

【ご協力のお願い】
■お客様用の手指消毒液、外用消毒剤アルコールスプレーを設置しております。

■入店時に検温をお願いしております。

【感染予防のための対策】
■厚生労働省の対応指針に基づき、スタッフの手洗い、うがい、並びに、店内、家具、什器等のアルコール消毒を徹底しております。

■スタッフは出勤時の体温測定を実施し、発熱や体調不良がうかがえる者に対しては出勤停止とし、行政に相談し指示を受けるよう周知徹底しております。

■お客様の健康と安全、公衆衛生を考慮し営業時はマスクを着用させて頂いております。


■常に換気をしております。

フランス料理

銀座大石

東京メトロ銀座線・丸ノ内線・日比谷線 銀座駅 徒歩5分

アクセス
住所: 東京都中央区銀座2-10-11マロニエ通り銀座館2階

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橋本 恭一

美味しいお酒とお料理を求め続ける 都内屈指の胃袋&肝臓フル回転系ライター。 和洋中ジャンル問わず、王道の古典料理から イノベーティブ系のお料理にどんなお酒が合うかを ひたすらに追い求めており、食前食後などのバーの 楽しみ方も皆様にお伝えしてまいります。
【MY CHOICE】
・さいきん行ったお店:Buca del Tappo/サエキ飯店/赤坂 らいもん/鮨 みうら
・好きなお店:日本料理 晴山/ラ クレリエール/私厨房 勇
・自分の会食で使うなら:くろ﨑/リストランテ ペガソ/Panacee
・得意ジャンル:フレンチ/イタリアン/バー
・好きな食材:サルミソース/真鱈の白子/生トリ貝

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