全体の90%が森林という圧倒的な自然が残る「屋久島」。1993年には世界自然遺産に登録されたこの島に、2021年の一部客室リニューアルで生まれ変わった「sankara hotel&spa 屋久島」があります。
離島ならではの美食とやすらぎを求め、今回、約30か国で数多くの料理人を取材してきた私、グルメ記者・Miki D’Angelo Yamashitaがレポートします。
目 次
屋久島の自然の中、心身共にリラックスできるホテル空間
東京から鹿児島経由のプロペラ機で屋久島に到着。すると今回は、屋久島を知り尽くした「sankara hotel&spa 屋久島」のアクティビティマネージャー・大木信介さんが迎えてくれました。東京を起点に山岳写真家として活躍していた大木さんは、東日本大震災を経験して、屋久島に移住。屋久島の自然はもちろん、雨の多い気候、そしてなによりも、その雨がもたらす森の美しさに魅了されたそうです。
空港からはホテルの送迎をお願いすることも可能。事前に予約しておくと、縄文杉、ヤクスギランド、白谷雲水峡など世界に冠たる屋久島の自然に触れることができるアクティビティを、ゲストの興味と体力に合わせてガイドしていただけます。
スタッフに迎えられ、ホテルに一歩中に足を踏み入れると、青いプールに海と空が続く水平線が目に飛び込んできます。「sankara hotel&spa 屋久島」を象徴するインフィニティプールの美しさ。晴れていれば、ウェルカムドリンクの「屋久島名産タンカンジュース」をプールサイドに運んでもらえます。
本館から客室のヴィラまではカートでの送迎があります。広大な敷地の森には、巨大な岩がそこかしこに点在。リニューアルでは、覆っていた苔を取り除き岩肌を見せることで、屋久島が花崗岩で成り立っていることを体感できるようになりました。
部屋の窓からは、自然の森と海の雄大な眺めが広がります。今回は、バスルームを中心にリニューアルした、新たなルームタイプ「マナサヴィラ」に滞在。24時間ろ過循環式の内風呂は、寝湯スペースも新設され、いつでもゆったりと湯浴みを楽しみ、心身ともにリラックスすることができます。
※ウェルカムドリンクは季節に合わせて変わります。
屋久島の食材を駆使した独創的な美食を堪能
サンカラ(sankara)とは、サンスクリット語で「天からの恵み」。自然体験、美食、癒しをテーマに、格別なステイができるオーベルジュスタイルのリゾートホテルです。
朝食または夕朝食は宿泊プランに組み込まれています。ガストロノミック・フレンチの「okas(オーカス)」とプリフィックス・スタイルの「ayana(アヤナ)」の2つのレストランがあり、食事も滞在の大きな楽しみの一つ。
プリフィックスでカジュアルに楽しむ「ayana」
「ayana」は、プリフィックス・スタイルのレストラン。プールサイドに面したスタイリッシュで開放的な空間で食事や、40種類以上のワイン・焼酎をグラスで楽しめます。
飲食店で働いていた父親に憧れ、料理人を目指したという高橋由馬シェフ。西洋料理全般に興味を持ち、縁があって故郷・新潟のイタリア料理屋店で10年ほど経験を積んだあと、2018年に「sankara hotel&spa 屋久島」で新たなスタートを切りました。
「ayana」シェフ・高橋由馬氏にインタビュー
「当初はイタリア料理のメニューを作っていましたが、総料理長・武井千春氏のベースがフランス料理であるため、基礎からフレンチを学び、徐々にシフトしていきました。もともとこのレストランでは、さまざまなジャンルの料理を出していたので、フランス料理と自分の経験のイタリア料理をうまくミックスできる環境でした」という高橋シェフ。イタリアンをベースにフレンチも盛り込んだ独自のスタイルが好評です。
「旅に出るとその土地のものを食べたくなりますが、そんなゲストにフレンチやイタリアンだけではない、思い切った島の料理を堪能してもらいたい」と高橋シェフ。たとえば、サンカラホテルらしいサバのしゃぶしゃぶなどを試行錯誤中とのこと。「非日常的な環境で満足感を持ってもらえるような食とは?」を模索しながら、フランスの食材などを屋久島の食材と掛け合わせ、オリジナルの料理を生み出していきたいと意欲をみせます。今後もサンカラならではのコースを期待できそうです。
鯖節・宗田節をふんだんに使用した屋久島の甘い万能だし醤油、屋久島の一湊(いっそう)醤油漬けの卵黄をタルタルの中に潜ませる「鹿児島の『なかやま黒牛』のタルタル」。上には米を素揚げ、酸味の効いたドレッシングをかけたサラダ添えに屋久島の花を飾っています。使用するのはローストビーフに向いている部位、ウチヒラ(内モモ)。塊のままマリネして低温で火を入れ、ローストビーフにしてからカット。米は一度おかゆ状にしたあと乾燥させて砕き揚げたもの。醤油をベースにすることで、和のテイストを感じることができます。
柚子味噌とカメノテの泡。近海で獲れるアラをカダイフで巻いてカラッと揚げ、サクサクの食感を楽しむ「屋久島アラのカダイフフリット」。ソースは、柚を合わせて甘めに仕上げた自家製の麦味噌。同じく近くの海で獲れるカメノテは昆布と一緒に茹でて、出汁に豆乳を合わせて泡状のソースに。屋久島の食材や自家製の味噌を使い、和を意識してサンカラホテルらしさを出したひと皿。
「骨付き仔羊のローストカチャトーラ」は優しい味わいの料理の中にパンチのあるひと皿を、と考え、イタリア料理の鶏肉のトマト煮込みをローマ風に羊でアレンジ。ソースは羊のジュとオリーブ、ペッパーを一緒に煮込んだもの。他にも屋久島のキノコやソラマメをふんだんに使った鮮やかな料理を堪能できます。
地元の素材を使った豪華な朝食
朝食も「ayana」へ。屋久島の水と屋久島育ちの酵母を使ったブーランジェによる焼き立てパンがずらりと並び、有機野菜や季節のフルーツ、鹿児島産黒豚のハム、ソーセージ等、地元産の新鮮な素材をふんだんに使った、美味しさでは抜群の定評がある朝食です。
屋久島のインスピレーションが生み出すフレンチ「okas」
「okas」は、ガストロノミック・フレンチ。スイートタイプの部屋に宿泊するゲスト専用のレストランです。いただけるのは、シェフが屋久島から受けるインスピレーションを最大限盛り込んだフレンチフルコース。レアなワインをボトルで楽しむか、ひと皿ごとに合わせたペアリングも提案してくれます。
光を落とした店内の大きなオープンキッチンに面した、ライブ感あふれるカウンターでディナーが始まります。
鈴木章夫シェフは「okas」に着任したばかり。母親の手料理が美味しく、自分でも作れるようになりたい、と料理人を目指したそうです。シェフとしてのスタートは、神奈川県の葉山のウェディングレストラン。その後、箱根の「富士屋ホテル」に17年間勤務。在籍中には、フランスのカンヌやブルゴーニュの星付きレストランに研修に行くなど経験を重ねてきました。
「okas」シェフ・鈴木章夫氏にインタビュー
「フランス料理の醍醐味は、種や皮も使いきることだと学びました。そして30代からは、フランス料理の技法を極めたいと考えるようになりました。その一環として、パテアンクルートのコンクールに出場、2年連続アジアの12人に選ばれたことから『sankara hotel&spa 屋久島』に迎えられました。今後もコンクールに挑戦して世界大会へ行き、パテアンクルートをスペシャリテにしていきたいですね」と語る鈴木シェフ。技巧を凝らした香り高いフレンチは格別です。
屋久島の蕪を使ったブルーテ、その上には、地元の漁師から仕入れた旭ガニに柑橘のジャムを混ぜてタルタルにした「アミューズ 旭蟹、パッションフルーツ、蕪」。胴体の中に詰まった身をほぐし、殻を外してエシャロットと柑橘のジャム、ホワイトバルサミコで茹でたカニを合わせます。カニの出汁で仕上げたジュレの中にはパッションフルーツのジュレも加え、酸味と蕪の繊細な香りをまとった旭ガニが。
「ナカヤマ黒牛、里芋、トリュフ」は、賞を獲得した黒毛和牛のなかやま黒牛を炭火焼きでローストしたサーロインに、ソースはジュ・ド・ブフ。つけ合わせは里芋のドフィノワ。ブロッコリーと菜の花を掛け合わせたスティックセニョールを彩りに使い、フランス産のフレッシュ黒トリュフを削ります。お好みで自家製の柚子胡椒を。
デザートは「バナナとコーヒー」。コアのチュイルのパリパリした生地の中には、バナナのムース。その上にはバナナのキャラメリゼをのせ、パイナップルの泡を3ミリ加えています。コーヒーのアイスクリームには、コーヒークランブルの食感を添えています。
今回は、リニューアルした「sankara hotel&spa 屋久島」での滞在、そして美食のひとときを堪能させていただきました。
一度訪れると、美食とやすらぎの空間、スピリチュアルな島の自然に再び包まれたくなります。そんな贅沢な時間をぜひ、体験してみてください。
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※こちらの記事は2024年05月20日更新時点での情報になります。最新の情報は一休ガイドページをご確認ください。