若手からベテランまで、東京の鮨シーンは様々。そんな中から実力派の鮨の名店を厳選して5軒、ご紹介します。
目 次
1.鮨漫画の主人公に憧れ、夢を果たした若きご主人が握る江戸前鮨
すし家祥太(東京都/麻布十番駅)

「すし家祥太」のご主人、祥太氏の本名はムン・ギョハン氏。韓国の大邱近くの町で生まれ育った彼が、鮨職人を志したのは、日本の人気漫画「将太の寿司」を読み、感動したのがきっかけでした。そして、一念発起。24歳で来日してからは、持ち前のガッツ精神で、銀座の名店「鮨 かねさか」グループに弟子入りし、9年間修業。言葉の壁も厳しい鮨修業を乗り越えて「かねさか」各店で腕を磨き、晴れて独立を果たしたのは2019年11月のこと。小さいながらも品格漂う店を構えました。
“若い人でも気軽に楽しめる鮨屋”がコンセプトなだけに、おまかせコースは17,600円!基本的に酒肴2〜3品に握り14貫と、握りが中心です。それも、鮨の原点を常に念頭に置く祥太氏ゆえ。赤酢を用いる鮨飯はバランスも良く、祥太氏が好む〆ものの鮨ダネ との相性も上々。誠実な美味しさは、ミシュラン一つ星の名に恥じません。
2.江戸前鮨とドリンクのマリアージュを楽しむイノベーティブな鮨店
鮨m(東京都/表参道駅)
表参道・根津美術館のすぐそばに、人知れず佇む「鮨m」。その隠れ家的シチュエーションに心惹かれつつ暖簾をくぐれば、そこは黒を基調としたスタイリッシュな空間。通常の鮨屋とは趣を異にする劇場型の店内は、鮨とドリンクのマリアージュをコンセプトとする同店にふさわしいシックな雰囲気です。
そう、店名の“m”は“marriage”の“m”のこと。その名の通り、ここでは「江戸前鮓 すし通」の二番手を務めた橋本純也氏が握る伝統の江戸前鮨と、あの「NARISAWA」で10年間ヘッドソムリエを務めた木村好伸氏が繰り広げる、ワインあり、日本酒ありの見事なペアリングが何といっても醍醐味でしょう。そしてそこに華を添えるのが、フレンチ出身のシェフ・松澤俊介氏が「鮨m」のコンセプトに編み出した料理の数々。伝統と革新、様々なアプローチで展開する新しい鮨のスタイルを満喫できそうです。
3.実直なご主人の独自のセンスを活かした握りも魅力
鮨 杉澤(東京都/銀座駅)
泰明小学校前の裏通りは、知る人ぞ知る銀座の庶民派グルメスポット。その中ほど、雑居ビルの2階に上がれば「鮨 杉澤」と染め抜いた藍の暖簾が目に入ります。ご主人・杉澤敬吾氏は、銀座の名店「銀座 鮨青木」で17年間研鑽を積んだキャリアの持ち主。修業先の気風に倣い、江戸前鮨の伝統は守りつつも、さりげなく独自のセンスを活かし、他所とはひと味違う味を楽しませてくれます。
例えば、車海老。茹でたてをそのまま握る店が多い中、ここではひと工夫。茹でた海老に炒った黄身酢おぼろをふりかけて提供しています。「江戸前の黄身酢に漬ける手法を自分なりにアレンジしてみました。見た目も綺麗だし、黄身酢おぼろが加わることで仄かな甘みもついて美味しいと思います」とは、杉澤氏。真摯な心意気から生まれる実直な鮨が本分です。
4.マグロの突先から始まる怒涛の握りコースで勝負
はっこく(東京都/銀座駅)
サービスマンから鮨職人に転身。25歳で6年間、神泉の「鮨 秋月」で修業を積み、和食の「尾崎幸隆」を経て、2013年に銀座「鮨 とかみ」の大将となった佐藤博之氏。4年連続でミシュランの星をとり、満を持して独立。2018年、銀座「はっこく」をオープンしました。「江戸前鮨は握りが本流」との思いから、ここでは握りのみで構成されたコースで勝負。当初は怒涛の握り30貫コースでしたが、現在は25貫。途中で野菜の小鉢が何皿か出るものの、つまみは一切無しという潔さです。
白眉は、江戸前鮨の花形“本マグロ”。コースの初っ端を飾る突先の海苔巻き始め、赤身、中トロ、大トロと様々な部位を楽しませてくれます。マグロはあのマグロ専門の仲卸「やま幸」から。
「100キログラム前後の小ぶりで、身のキメが細かくしっとりと舌に吸い付くような柔らかなマグロが好きですね。そんな(僕)好みのマグロを「やま幸」氏はいつも選んでくれる」とは佐藤氏。しっかりと餌を食べて脂がのったマグロと、独特の赤酢の鮨飯との相性も上々です。
5.師匠の鮨をオマージュし、独自の進化を遂げた唯一無二の鮨
匠 鮨 おわな(東京都/恵比寿駅)
2020年から3年連続でミシュランの一つ星を取り続けている恵比寿の「匠 鮨 おわな」。店名に冠した“匠”の文字からも伺えるように、ご主人の小穴健司氏は、四谷の名店「すし匠」出身。中澤圭二氏のもとで10年間研鑽を積んだキャリアの持ち主です。それだけに、その実力のほどは推して知るべしでしょう。こぢんまりとした店内は、白木のカウンターに檜の天井と高級感漂う雰囲気ですが、子供連れでも来られるよう完全個室を用意するなど、さりげない心配りが嬉しい一軒です。
それは鮨も同様。気温に合わせて酸度を変える鮨飯には、鮨用に選んだ宮城産の米“銀坊主一族”を用い、鮨酢は修業先と同じく鮨ダネによって赤酢と白酢を使い分けるなど、握りに対する細やかな配慮が、地に足のついた美味しさの所以でしょう。肴と握りが交互に出るスタイルも、師匠へのいわば、オマージュ。独自のアレンジも秀逸です。
東京にある鮨の名店を厳選して5軒、ご紹介しました。ぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか。
※こちらの記事は2024年12月05日更新時点での情報になります。最新の情報は一休ガイドページをご確認ください。