都市ならではの利便性と、豊かな自然に囲まれた環境が評判の東京・立川。西国立駅のほど近くに位置する「Auberge TOKITO」は、4室のみの客室を有する全室温泉露天風呂付のオーベルジュです。今回は一休コンシェルジュ編集部が実際に滞在し、宿ならではの美食のひとときを取材しました。
トラベルWEBマガジン「一休コンシェルジュ」にて、客室についてもご紹介しています。
https://www.ikyu.com/concierge/100167
目 次
夕食前は「茶房」にてこだわりの茶葉を楽しむお茶体験
客室をひと通りチェックしたあとは、特別にお茶体験をさせていただけることになりました。「Auberge TOKITO」のアフタヌーンティーで振る舞われるお茶を楽しめると聞き、ワクワクしながら「茶房」へ向かいます。
「茶房」のカウンターに座ると、まずはお茶見本についての説明が。
一つひとつの茶葉が持つ特徴を丁寧に教えてくれます。
好みの茶葉を選んだあとは、目の前でスタッフの方がお茶を淹れてくれます。しなやかな所作を見ていると、どこか背筋が伸びるような凛とした心地に。空間の雰囲気が、お茶そのものの味わいをより引き立てていました。
「茶請箱(ちゃうけばこ)」と名付けられたアフタヌーンティーは、季節ごとに内容が変わります。チェックイン前後はもちろん、ビジター利用も可能なため気軽に立ち寄れそうですね。
日本食本来の魅力を堪能する珠玉のディナータイム
美味しいお茶をいただいたあとは、お待ちかねのディナータイム。
ダイニングとなる「食房」へ向かいます。
「食房」は中庭を望むホール席や個室、カウンター席を完備。
個室は3室あり、仕切りを開けることで連結も可能です。
ホール席は天井も高く開放感たっぷり。
壁に飾られたオブジェは、立川の地中から見つかった飛行機のプロペラを活かしたものだそう。かつて飛行機の製造をメインに行なっていた、オーナー企業らしいインテリアと言えそうです。
総料理長・石井シェフに迎えられ、ディナータイムが始まります。
夕食はテーブル席とカウンター席、プランによって料理の内容が異なります。
今回は臨場感を満喫すべくカウンター席のプランを選択しました。
まずは乾杯。淡い桃色のシャンパンは、日本を象徴する鳥・朱鷺の羽の色をイメージしているのだそう。宿名の「ときと」にも朱鷺の意味があると聞き、まさに乾杯にぴったりの一杯だと感じました。料理はもちろん、様々なお酒とのペアリングにも注目です。
最初にいただいたのは、ナマコを様々なかたちで表現した「宇宙」。
干しナマコとフカヒレの春巻き、生のナマコを赤カブの酢漬けで包んだもの、帆立貝と子ナマコのタルタルの三種が盛られた一品で、異なる食感と味わいでナマコの魅力を楽しめます。
「ぬくもり」と名付けられた二品目は、鴨肉がメインの椀物。マグロの一番出汁と鴨肉の旨味に、菜の花のほろ苦さがアクセントを添えています。下に隠れているのは、鴨肉をミンチ状にしたつみれ。お腹をほっこりと温めてくれる一品です。
お椀のあとに登場した「残響 Super7」は、精米歩合7%というプレミアム感満点の日本酒。上品かつ軽やかな飲み口が特徴です。
続いての料理は、千葉のヒラメをメインにしたお造り。「ソース」の日本語訳となる「うじお」という名の逸品で、昆布と塩で作ったソースでいただきます。味の変化を楽しめるよう、山葵とちり酢も添えられていました。
江戸切子職人・堀口切子氏が手掛けた皿は、石井シェフの版画が描かれたカードを主役にする斬新なデザイン。裏には石井シェフの手書きメッセージがあり、粋な演出に心が温まります。
四品目は「百合根の概念を変える」とも言われる幻の品種「月光百合根」を用いた一品。百合根のほっくりとした食感はもちろん、良い意味で野菜とは思えないほどの独特の甘味は感動もの。こちらは総支配人・大河原さんが北海道時代に築いた農家との絆により「Auberge TOKITO」では通年使うことができるそう。
思わず「これは一体何だろう?」と呟いてしまった五品目は、京都の伝統野菜である「堀川ごぼう」にイカ墨を合わせて炭のような見た目に揚げたもの。インパクト抜群の見た目も相まって、シェフとの会話も盛り上がります。
富山の銘酒「満寿泉」をシャンパーニュの名門「アンリ・ジロー」の樫樽で半年間寝かせた一本。オーク由来の高貴な香りを楽しめます。
「名前の通り熱いうちにどうぞ」とおすすめされた、六品目の「熱寿司」。シビマグロの中トロをハンバーグのように見立て、自家製のいぶりがっこでアクセントを。皿の底にあるフォンドボーソースと卵黄が絡み合う、和と洋が交差したメニューです。
七品目「鮪節」は、キハダマグロの鮪節の下にタケノコが隠れた一皿。普段目にする鰹節とは全く異なり、ふわふわとした質感が見た目にもわかります。「鮪節を味わうためにタケノコがあり、タケノコを味わうために鮪節がある」そんな思いが込められているのだそう。
佐渡のソイとアワビに、鮮やかな緑の野菜を合わせた「日の出」。白身魚の旨味を凝縮させたピルピル風ソースが雪を、ソイと野菜が春を感じさせます。冬から春へと移り変わる季節の美しさを表現した料理です。
食器は「Auberge TOKITO」の名前の由来でもある“朱鷺色”の、日の出をモチーフとしたボウル。土地の土も材料に使うことで色の変化を生み出しています。
静岡・下田の猪肉をメインとする一品「地冷栄」は、ベリー系のニュアンスを感じる赤ワインと合わせていただきます。狩猟方法にこだわった猪肉は、臭みがなく旨味たっぷり。ベールのように食材を包む、塩漬けにした猪肉のラードによってほどよい塩味が加わります。
十品目となる「〆の一杯」には、自家製ちぢれ麺を主役にしたカジカ出汁のラーメンがお目見え。出汁となるオクカジカは、一般的に廃棄されることが多い「未利用魚」。そんな魚に熟成や燻製といった手間暇をかけ、カジカ節に変えることで味わい深いスープを生み出しました。
全粒粉の自家製麺は太さとちぢれ具合が独特。こだわりのスープがよく絡みます。
炭火で炙ったチャーシューや黄身がとろりとした烏骨鶏の煮卵など、具材も贅沢。
デザートは2種類。グラスに盛られたブラッドオレンジのムースには、真っ赤な果肉やすりおろした果皮が。フレッシュなオレンジの魅力が、余すことなく詰め込まれています。フキノトウのクレムブリュレはキャラメリゼされた表面と、フキノトウのほのかな苦味が絶妙でした。
最後は「べつばら」としてプティフルを。サクッとした食感が特徴のダックワーズにキンカンのコンポート、カシスのパート・ド・フリュイ、ブンタンの皮を使ったオランジェットが並びます。
カウンターは料理人の舞台!臨場感のある特等席
全13品のコースがすべて終了。食材などの説明に合わせて、料理が目の前で仕立てられる様子は臨場感たっぷり。次はどんな一皿が登場するのだろうと、ワクワクしながらシェフの仕事ぶりを眺めるのも、カウンター席の醍醐味だと感じました。
石井シェフが自ら作陶する、様々な器にも注目
並々ならぬこだわりは、料理を演出する器にも。有名作家のものはもちろん、石井シェフが手掛けた食器がダイニングや客室で使われているのだそう。宿の敷地内には、なんと専用の作陶場まで完備されていました。
また、客室にも置かれている木製の食器類には、副料理長・佐澤シェフが宿の建設時に伐採された木を再活用して作ったものも。料理だけではなく、盛り付ける器にまでおもてなしの思いがたくさん詰まっています。
石井シェフが作陶した食器は、裏に「掌(たなごころ)」の文字が。「てのひら」とも読めるこの字には「自らの手で作ったもので、誰かに喜んでもらえたら」という、石井シェフの思いが込められています。様々な食器に刻まれているこのサイン、滞在中に探してみてはいかがでしょう。
たっぷりの具材と味わう「黒粥」で、心地よい1日をスタート
翌朝は食房とは別にある、蔵を改装した「宴(うたげ)」で朝食を。
宴席などもできる広間があり、朝食時は仕切りを付けて個室のように利用可能です。
朝食は「身体をスッキリ整えて一日をスタートしてほしい」という思いから、赤米や雑穀などを合わせた「黒粥」をメインにしています。烏骨鶏の出汁で炊いたお粥は、インパクトのある色味が特徴。
お粥と一緒に提供されるのは、種類豊富なトッピングの数々。
烏骨鶏のせせり肉や温泉卵をはじめ、菜の花のおひたしや自家製の漬物まで!
ナッツ類や干しブドウもあり、自分好みのテイストでお粥をアレンジできます。
何も乗せずシンプルにお粥を味わったり、和風の餡を掛けていただくのも美味しそう。
たくさんのナッツに干しブドウ、クロテッドクリームを入れて洋風にするのもおすすめです。お粥は量もあるので、数回に分けて様々なトッピングを楽しんでみて。
食後のコーヒーをいただいて朝食は終了。
前日のティーセレモニーに始まり、夕食から朝食まで「Auberge TOKITO」ならではの魅力を堪能するひとときとなりました。
老舗料亭「無門庵」の跡地で、その歴史を紡ぎ続ける「Auberge TOKITO」。
オーベルジュのメインとも言える美食の数々と、温泉掛け流しの湯を堪能できる上質な客室が日常を忘れる寛ぎの滞在を叶えてくれることでしょう。
宿泊予約はこちら:https://www.ikyu.com/00003160/
このほか、石井シェフのインタビュー記事もご紹介しております。
記事はこちら:https://www.kiwamino.com/articles/interviews/23570
※こちらの記事は2024年08月06日更新時点での情報になります。最新の情報は一休ガイドページをご確認ください。