京都「中国菜Guu」宮谷要シェフに聞く、炎や蒸気を全6席のカウンターで魅せる中国料理の熱量とは

2022年9月、京都二条に開業されたばかりの「中国菜Guu」。店内はカウンター6席のみと席数に限りもあって、かなり先まで予約で埋まっています。宮谷要氏が腕を振るう、月替わりのコースで供される中国料理は、クオリティが高いと好評。今回は、宮谷氏にフードコラムニストの門上武司氏がインタビュー。ライブ感あふれるカウンターならではの京都らしい中国料理について語っていただきました。

中国料理に向き合う修業時代

門上武司氏(以下、門上):まず、宮谷さんはどういう思いでご自分の料理と向き合っておられるのか伺いたいと思います。料理人としての修業は、当初から中国料理を選ばれたのですか。

宮谷要氏(以下、宮谷):僕は41歳ですが、24年前の高校生のときにお好み焼き屋でアルバイトして、そこで飲食店の仕事が楽しそうに見えたのが料理の道に進むきっかけです。その頃、外食といえば町中華に行くことが多かったのですね。店の料理は家で味わったことのないおいしさだし、それを中華鍋ひとつで手際よく作る姿とか熱気のある雰囲気にかっこよさを感じて、中華の料理人になろうと思いました。僕は滋賀県出身なので、地元に近い京都の専門学校に通ってプロの料理人になる基礎を学び、卒業後に町中華の店で修業を始めました。見るもの全てに興味があり、料理に没頭していたこともあり、4年程経つと調理の工程とか中華料理の基本みたいなことはほぼ覚えてしまい、もっと知りたいと欲が出てくるんです。中国本土で実際の中国料理を習ってみたいし、個人の店とは違うホテルレストランなどの組織で仕事する現場も経験したいと思っていました。

門上:そういう意欲は、若い料理人には転機になりうるんです。どんなジャンルでも、それぞれの本場で学びたいと思うのは自然な流れです。ところが中国は、当時もいまも個人が気軽に働きに行けるような国ではありません。

宮谷:運良く、仕事上で中国とのつながりがあった僕の父親が縁をつないでくれ、香港と中国大陸を結ぶ国境の都市・東莞にある巨大複合ホテルのレストランに入れました。初めての修業は2週間程の見学でしたが、200人も働く厨房にも入れていろいろ体験でき「これが中国料理なんだ」と、刺激を受けて帰ってきました。それから数年後、東莞でお世話になった料理人さんから「広州で店を任されたけれど修業し直しに来るかい?」と誘われたのです。迷わず行くと決めました。
最初の中国では、ことばが通じないから意味もわからず、悔やまれることだらけでした。それで、再訪する前には中国語を必死で勉強して行きました。話せるようになると意思疎通もうまくいき、教えられたこともすんなり身に付けられるのです。そうして、ようやく本場の中国料理にまともに向き合えて、僕が本来するべきだった修業もできるようになったのです。ことばの壁を取り除くと心も通じ合うというか、料理人だけでなくいろいろな人たちとの関係も広がります。料理人は体で覚えますが、感覚とか考えをことばに表して整理できれば、より深く理解できるんですよ。

カウンターで魅せる料理のプレゼンテーション

門上:様々な経緯を踏まえ満を持して「中国菜Guu」を開店。オープンキッチンにカウンター席のみというのは、まさに割烹スタイル。京都らしい中国料理店ができました。

宮谷:自分の店は京都で持つのだと決めていましたから、納得できる物件に出合うまで長い間探していまして、この建物は本当に運良く見つかりました。けっして広くはないですが、一軒家で庭があるので炭起こしもできます。2階は食器を置く物置になり、魚の日干しや調味料の仕込みなど、商品づくりの工房としても使えます。その分、1階には無理なく効率よく動ける厨房をフルオープンで整えられました。

門上:カウンターはやっぱりライブ感ですよね。

宮谷:そうなんです。お客さんにまず感じてほしかったのは、中国料理の熱量なのです。中華鍋を振る様子を見て僕が料理人になりたいと思ったあの熱気、それ以上に中国のとんでもなく広い厨房で猛烈な炎や蒸気が立ち込めるなか、上半身を裸にして働く料理人を見た衝撃。そういう熱い思いを忘れずに料理している姿を、お客さんに伝えたいと考えました。火入れの多い中国料理には欠かせない高火力のガス台、6席分の蒸し物が同時にできる大きな蒸し器などは、火が見えたり湯気を感じたりする演出効果も狙って設置しています。お客さんがワクワクするのを間近に感じると、僕の思いがストレートに伝わっている手応えはあるんです。けれど、それってどちらかといえば料理人の目線ですよね。

門上:カウンターはお客さんの反応を直に感じられますから。

宮谷:京都の目や舌の肥えたお客さんと対峙していると、料理人はいかにプレゼンテーションできるか、その実力が問われている。カウンターのお客さん目線で見ればよくわかる気がするんです。コースのストーリーを立てて、最後まで考えたとおりに完結させられる力量というのがいかに大事かよくわかります。

これからの展望

門上:お客さんの反応次第で料理の量とか味付けを変えたりされているのですか。

宮谷:一度に6席なのと僕にも余裕が出てきたからか、今では少しずつコントロールできるようになってきました。基本的にはスペシャリティ以外はこれまで同じメニューを出していませんし、来店していただくお客さんはリピーターの方が多いので、一人ひとりの好みは覚えるようにしています。

門上:スペシャリティは、小籠包とデザートのエッグタルトですね。味の基本はやはりスープなんですか。

宮谷:差別化しやすいので、小籠包とエッグタルトには力を入れています。両方ともに究極なのを狙うと鮮度が命ですから、お客さんの前で生地を伸ばすところから作ったり、蒸したて焼きたてを召し上がっていただけるように考えたりして料理しています。スープは基本4種類あります。煮込み用とかは白湯スープ、もうひとつは魚介を調理するときに魚などで取った魚介スープ、あとは上湯という澄んだスープです。それらに加えて、コースの最後はラーメンなので、ラーメン用の鶏ガラスープです。金華ハムやコンソメ、老酒に鶏、昆布などを入れてます。こうしたスープ作りのために月に2回ぐらいは店に泊まっています。スープは本当にもう絶対に大事。

門上:現在、新しいことに取り組む予定とかありますか。

宮谷: 今の目標は、中国料理の基礎技術、基礎知識を伝授してもらった中国の恩師や仲間を日本に呼んで一緒にビジネスをすることですね。そのためにも、「Guu」と言うブランドをもっと強くしていかないといけませんね。

https://www.instagram.com/guu.kyoto

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宮谷要氏 プロフィール

21歳の時、中国広州に渡り、錦帯河飯店にて李建柱氏を師事。広州市内のレストランや、インターコンチネンタル香港 欣圖軒(ヤントーヒン)等で研修を積み、日本人としては稀な、中国政府が発行する国家認定調理師資格を取得する。
国内で点心師として活躍したのち、2020年9月に独立・Guuを設立。
2022年9月 京都二条にて「中国菜Guu」をオープン。現在は京都を拠点とし、店舗経営の他、国内外へのケータリングや技術指導等、様々な形で食に携わっている。

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【編集後記】

カウンターで料理を味わう醍醐味を大切にする料理人である。そのために調理器具から料理を出す順番、メリハリの付け方など緻密に計算されているはずなのだが、それを感じさせず、より自然な流れで料理が供されているところもすごい才能だと思う。

門上 武司

1952年10月3日大阪生まれ。フードコラムニスト。
株式会社ジオード代表取締役。
関西の食雑誌『あまから手帖』の編集顧問を務めるかたわら、食関係の執筆、編集業務を中心に、プロデューサーとして活動。「関西の食ならこの男に聞け」と評判高く、テレビ、雑誌、新聞等のメディアにて発言も多い。一般社団法人 全日本・食学会 副理事長。2002 年日本ソムリエ協会より名誉ソムリエの称号を授与。
著書に、『門上武司の僕を呼ぶ料理店』(クリエテ関西)のほか、『スローフードな宿』『スローフードな宿2』(木楽舎)、『京料理、おあがりやす』(廣済堂出版)等。2023年11月29日発売の「あまから手帖別冊 食べる仕事 門上武司」(クリエテ関西)はこれまでの門上武司の食の歴史と、これからの「食」を考える刺激的な一冊。

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