人形町「礒田」礒田岳人氏に聞く、名店の味を受け継ぎながら独自の感性で生み出す日本料理とは

2021年4月に東京都・人形町に開業した「礒田」。名店「新ばし星野」にて約8年修業を積んだ礒田岳人氏が独立し、あっという間に予約困難店の1つになりました。今回KIWAMINOは、礒田氏にインタビューを実施。修行中の話や料理を作る上で大切にされていることなど、お話を伺いました。

日本だからこそ1番光る日本料理の道へ

-料理人、中でも日本料理の道を目指されたきっかけをお聞かせください。

幼い頃から自然と料理に興味を持つようになり、小学校に上がる少し前くらいから、料理を始めていました。辻調理師専門学校に進学を決めたんですが、願書を出すのが遅かったみたいで、実は専攻できる学科が日本料理科しかなかったんです(笑)。元々フレンチなど洋食ってかっこいいなと憧れていたこともあったので、当時は選択肢が日本料理しかないのはショックでしたね(笑)。

-そうだったんですね!実際に日本料理に進まれてみていかがでしたか?

全く後悔はないです。日本料理の世界に進むことになって良かったなと思っています。当時はあまりわかっていなかったのですが、様々な経験を経て日本の食材にはやはり日本料理が1番向いているんだと気づきました。日本では、日本料理が1番美味しく食べられる料理ジャンルだと思うので、良い選択だったなと改めて思います。

-その後調理学校を卒業されてすぐ、東京の新橋にある「新ばし 星野」で働かれることになったのですか?

大阪の日本料理店で2年程お世話になり、その後に「新ばし 星野」で働かせていただくことになりました。僕は大阪出身だったのですが、東京に出てみたいという気持ちもありましたし、何より「新ばし 星野」に魅力を感じて猛アプローチしました。

-「新ばし 星野」での修業時代、特に印象に残っていることはどんなことでしょうか?

「新ばし 星野」では約8年間お世話になりました。初めの5年間は大将と僕の2人だけだったので特に濃密でしたね。僕が入った当初は、大将もお店を始めてまだ2、3年目の頃でしたので、試行錯誤している時です。それを間近で見ることができたのはすごく大きかったなと思います。営業の合間や試作で作ったものなど、大将が色々と食べさせてくれたんですけど、大将の料理は本当に美味しいんですよね。そんな美味しいものをいつも食べる機会があったのは、非常に恵まれていたなと思います。

-満を持して2021年4月に、人形町にて独立開業されましたが、開業にあたる経緯をお聞かせください。

料理の道に進むと決めた時から、いつか独立したいと思っていました。「新ばし 星野」が新橋にありましたので、そのイメージを残しつつ良い場所があればと探していたんです。1年くらいかかりましたが、ご縁があって人形町にあるこちらのお店に決めました。人形町というエリアは結構気に入っています。いい感じの下町感があって、街並みも面白いですしね。

星野氏の料理とはまた違った礒田氏らしい料理とは

-「新ばし 星野」より受け継いでいる部分と、独自性を出すための工夫やこだわりについてお聞きしたいのですが、まず「新ばし 星野」より受け継いでいる部分についてお聞かせください。

「煮炊きもの」や「お椀」に関しては、大将の味を引き継いでいるなと思いますね。特に「煮炊きもの」などは日本料理のコースで出していらっしゃるお店もあまりないと思うんですけど、自分は出し続けたいなって思います。特に意識しているのは、お皿の中での味付けのバランスです。2つのものを盛り込むとしたら、片方は薄く、もう片方は少し濃くして、全体のバランス感を大事にしています。

-星野氏で学んだことの他、独自性を出すための工夫やこだわりについてお聞かせください。

敢えて独自性を出そうという感覚はないです。ただ、もちろん作る人が変われば、その人の好みが反映されると思うので、同じ食材を相手にしてもアプローチの方法は変わってくると思っています。僕は関西出身なので、お塩で味付けすることも多いです。僕の好みが反映された料理になっていると思います。

-奇を衒わず旬を大切にされたお料理を作る中で、食材に関してはどんなことにこだわっていらっしゃいますか?

食材に関しては、もちろん良いものを仕入れたいです。ですが、良すぎるものばかり仕入れても仕方ないかなと思うので、そこもバランスをとっています。良すぎる食材は、切って焼くだけ、そのままの素材のポテンシャルだけで完成してしまうので、敢えて自分の手を加えられるものを選ぶようにしています。

-お料理を作る上で大切にされていることはなんでしょうか?

中途半端なものは出さないのは当然ですけど、美味しく仕上げるってことが1番大切だと思って日々作っています。また日本料理は季節を味わう料理ですので、季節感をいかに出すかというところは大事にしていますね。後は、リラックスして食べていただきたいです。日本料理ってちょっと堅苦しいなと思う方もいらっしゃると思うんですけど、楽しく召し上がっていただけたらなと思います。

1人でも多くの人に自分の料理を届けたい

-今後取り組んでみたいと思っていることはどんなことでしょうか?

将来的には0から新しいお店作りをしたいです。現在は居抜きの物件でしたが、今よりも広さのある物件で0から自分のお店作りをしてみたいですね。席数を増やすことで、もう少し予約を取りやすくしたいですし、場所が広くなれば新しい調理器具なんかも入れることができると思うので、料理の幅も広げられるかなと思っています。多くのお客様に美味しいって思ってもらえたら嬉しいですね。

礒田岳人氏 プロフィール
1991年大阪生まれ。「新ばし 星野」にて8年間修業後、2021年人形町にて独立。

【編集後記】
「リラックスして楽しく召し上がっていただきたい」と語る礒田氏。インタビュー中も常に自然体で、楽しそうにお話をしてくださりました。「まだ試行錯誤している途中なので」と語りながらもお客様に美味しいものを食べてもらいたいという信念のもと料理に向き合い続ける礒田氏の思いを感じました。

※こちらの記事は2023年10月10日作成時点での情報になります。最新の情報は一休ガイドページをご確認ください。

Mika.A

外食が何よりの楽しみな編集部メンバーです。
野菜へのこだわりは人一倍!好きが高じて
ベジタリアン・フルーツアドバイザーの資格を取得しました。

・好きなお店:銀座レカン/シンシア/Heritage by Kei Kobayashi
・好きなジャンル:フレンチ/鮨/肉料理
・最近行ったフレンチ:ラルジャン/apothéose/渡辺料理店/フロリレージュ
・好きな美食宿:ホテルリッジ/sankara hotel&spa 屋久島

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