恵比寿「鳥焼き 小花」佐藤新太朗氏に聞く、名店「鳥しき」の技を受け継ぐ新しい鳥料理のかたちとは

恵比寿駅から歩いて10分ほど。ビルの1階に店を構える「鳥焼き 小花」は、焼鳥の名店「鳥しき」池川義輝氏が監修する鳥焼き専門店です。今回は、店主・佐藤新太朗氏にインタビューを実施。名店の技術を受け継ぎながら新しい鳥料理を生み出し続ける同店について、お話を伺いました。

小さな頃から包丁を扱い、和食の道を歩みながら「鳥焼き 小花」へ

-まずは、料理人を目指されたきっかけをお聞かせください。

鳥焼き 小花の佐藤新太朗氏

父親が料理好きだったことが、一つのきっかけになっているかなと思います。“キッチンは母親の場所”という風潮はなかったですね。「リンゴを食べたい」と言ったら「自分で剥いて食べな」と、包丁とリンゴを渡されるような家だったので、他の人よりは包丁に触れる機会が多かったと思います。実際に使ってみて、ちょっとケガをすることも経験という感じでした。

その後、高校生のときに「この先どうしようかな」と考えて、料理の専門学校へ行くことを決めました。当時から興味があった和食の道に進もうかなと。卒業してからは、数軒の日本料理店で働きました。そのうちの一つで、今はもう閉店してしまった銀座の店には5年以上いたのですが、多くの学びを得られたと感じています。

-その後「鳥焼き 小花」の開業に至るまでは、どのような経緯だったのでしょうか?

今は入社してから12年ほどになりますが、会社自体がいくつも店舗を抱えているため、これまでにお鍋の店や居酒屋、カレー屋など様々な業態で働いてきました。料理長や店舗の立ち上げもやらせてもらいましたし、とても良い経験ができたと思います。僕は和食がベースでしたが、周りには様々なジャンルの料理を勉強してきた方がたくさんいたので、それまでに培ってきた経験や知識以外のことを学べましたね。

親方(池川氏)と初めて会ったのは、2年くらい前のことです。うちの店はもともと日本料理店で、僕は立ち上げの手伝いもしましたし料理長もやらせてもらったのですが、コロナの影響で一度閉店することになってしまったんです。

約1年閉めていて、今後どうしようかと考えていた頃に「『鳥しき』と一緒にやろう」ということになって。2022年の1月に「鳥焼き 小花」を始めるに至りました。大変な時期もありましたが、今は世の中が少し落ち着いてきたこともあって、良い兆しが見えてきたところかなと思っています。

「鳥しき」の技を継承し、工夫を凝らしながら独自のスタイルを打ち出す

-食材については「鳥しき」と同じ「伊達鶏」や「信玄どり」を使われているそうですね。

伊達鶏の魅力というと、やはり皮目の美味しさだと思います。あとは、鮮度が良いものをいただけているので、内臓系の料理には信玄どりを使うことが多いですね。珍しいものですと、やげん軟骨と横隔膜が付いた部位をお出ししています。ちょっと蛙っぽい見た目をしているので、親方と「とりかわず」と呼ぶようになりました。

-あえて串に刺さない「鳥焼き」をメインにしておられますね。佐藤様が考える、鳥焼きならではの魅力や特徴についてお聞かせください。

料理によってはどうしても成形しなければならないものもあるので、なかには一旦串に刺して焼いて、お客様にお出しするときに串から外す場合もあります。“串に刺さないスタイル”は、実は親方がやりたいと言っていたものなんです。焼鳥というジャンルをより確立させるためだとか、職人さんたちの地域交流も踏まえて考えていたようです。

-「鳥しき」ならではの焼き方を継承していると伺いました。串に刺さない鳥焼きの火入れについて、意識されている部分はありますか?

まず、近火の強火は変わらずです。鳥焼きのポジティブな部分で言うなら、焼き台の上でもわりと位置を変えやすく、均等に火入れがしやすい場合もあります。あとは部位にもよりますが、皮をピンと広げた状態で焼くとよりパリッとした仕上がりになりますね。

火入れをした後の盛り付けについては、串に刺す場合だと食材を小さめに切らなければならないこともあるので、鳥焼きはそのままの大きさや形でお出しできるのも良いところかもしれません。例えば、砂肝を串に刺す場合は半分に切る店も多いのですが、うちではそのままの大きさで出したりするので、見栄えが違ってきます。

串に刺すとそれだけで一つの料理になるのですが、うちは串がない分、意識していないとただ焼いただけのものになってしまいがちです。だからこそ、素材の味を損なわないように気を付けながらソースをかけてみるとか、少しだけ他の技法を入れてお出ししています。

「鳥焼き 小花」ならではの鳥焼きと日本料理の組み合わせについて

-鳥焼きと日本料理の組み合わせも、お店の大きな魅力だと感じます。コースの構成などは、どのようにして考えていらっしゃいますか?

基本的なコースの流れについては、親方と話し合って決めています。普通の焼鳥屋では出せないけれど親方がやってみたいと思っている料理を、僕だったりチームだったりで、具現化しているような感じですね。考えて、試しに作ってみた料理を親方に食べていただいて。と言っても、色々と好きにやらせていただいているのでありがたいです。

今まで働いてきた店では様々な食材を扱ってきましたが、今は鶏と野菜だけですので時間をかけてコースを考えています。例えば、和食なら必ずコースに入っている刺身などの生ものを入れずに、肉を低温調理して生に近い食感にするとか、そういった工夫を凝らしていますね。

-鶏肉を様々な料理で楽しめますが、訪れた際に「これは食べていただきたい!」と思われるメニューはありますか?

これを食べてほしいという僕らの気持ちはもちろんありますが、それってお客様が感じるものだと思うんです。つくねを最中に乗っけてマヨネーズをかけたメニューがありますが、あれも最初は「和風のハンバーガーみたいで可愛い」とか、そういうところから評判になって。

その意味では、僕らが絶対に食べてほしいというよりも、お客様の反応を見てこういうメニューが喜ばれるんだなと気付くことがありますね。もちろん、伊達鶏のもも肉をメインとしてお出ししていますが、何が心に残るか、感じ方は人それぞれだと思います。

それもあって、和食だけにこだわらないメニュー構成にしたいと思っています。例えばスパイスやハーブを使った、病みつきジャンク系な手羽の唐揚げとかも人気ですよ。コースに緩急を付ける意味で入れてみたのですが「この店の雰囲気でこんな料理が出てくるんだ!」という意外性も面白いかなと。

-ゲストからは「新しい」とか「進化系」のお店という声が多いようですが、その点についてはどのように思われますか?

個人的な感覚もありますが、例えば自分たちで「割烹」と呼んでしまうと、お客様も敷居が高そうとか少し身構えてしまうと思うんです。僕としては、和食というジャンルにとらわれすぎず、色々な料理をお出ししたい。あとは、来てくださったお客様がそれをどう受け取るかだと思っているので、お客様ごとに思い思いの感想を言っていただけるのは嬉しいですね。

海外からのゲストが増えているなかでの展望とは

-今後の展望や挑戦していきたいことはありますか?

僕個人としては、海外に行ってみたいなという気持ちがあります。最近は、海外からのお客様も増えてきました。「言葉があまり通じなくても、パッションは伝わるから大丈夫」と親方に言われているので、これからもチームで頑張って乗り切っていきたいです。

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佐藤新太朗氏 プロフィール

1979年東京生まれ
調理専門学校卒業後日本料理に魅了され、銀座「一乗寺」で研鑽を積む。その後、食材としての鳥の奥深さに感銘を受け「鳥しき」池川義輝氏に師事。2021年「鳥焼き小花」の店主に抜擢。“初心忘るべからず”を座右の銘に、一品一品真心を込めた料理を創作している。

焼き鳥

鳥焼き 小花

JR線 恵比寿駅 東口 徒歩10分

12,000円〜14,999円

【編集後記】
様々なジャンルの料理を経験してきた佐藤氏。「鳥しき」の技術を継承することはもちろん、鶏と野菜のみでメニューを構成している「鳥焼き 小花」では、これまでに培ってきた豊富な知識を存分に発揮されている様子。インタビュー中も気さくに答えてくださり、終始和やかな取材のひとときとなりました。一休.comレストランでも注目を集めている同店、気になった方は早めのチェックをおすすめします。

※こちらの記事は2024年11月29日更新時点での情報になります。最新の情報は一休ガイドページをご確認ください。

Yuri

校正の仕事に興味を持ち、スクールを経て一休コンシェルジュ編集部へ。好き嫌いはほぼなし。食べることが大好きで、どんなものでも美味しく・楽しくいただきます。編集部メンバーとのお店巡りが最近のマイブーム。もう少しお酒が強くなりたいと思う今日この頃です。

【MY CHOICE】
・最近行ったお店:さ行/デンクシフロリ/BLESS/レストラン プルニエ/ラフィナージュ

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