インタビュー|

「神楽坂石かわ」石川秀樹氏にインタビュー!愛弟子の個性が光る「石かわ」一門の魅力

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国内外の美食家たちを魅了している料理店「蓮 三四七」、「愚直に」、「波濤」、「NK」。この4つの店舗の共通点は、ミシュラン三つ星を獲得し続けている「神楽坂石かわ」の石川秀樹氏の遺伝子を継ぐ愛弟子が店主であること。今回KIWAMINOでは、師匠の石川氏本人から、愛弟子たちとそれぞれの店舗の魅力、そして2021年9月にオープンした「jinen.」についてお話を伺いました。

1.最近また一皮むけた?銀座「蓮 三四七」と店主・三科惇氏の魅力

-今や日本の料理界を牽引している愛弟子の方々の魅力と、その店舗のこだわりについてお伺いさせていただければと思います。
さっそくですが、「蓮 三四七」の名前の由来から教えてください。

すべての店名は僕が考えているんですが、「蓮(レン)」という名は、植物の「蓮(ハス)」からきています。「蓮(ハス)」は、泥の中から茎をすっと伸ばして、清らかで美しい花を咲かせるでしょう。それが人と一緒だなと思っているんです。社会に揉まれ、辛いこと楽しいこと、いろいろあるけれどもすべて受け入れて、立ち上がる。その姿は凛としていて美しい。僕はそういう人間でありたいし、そういう人間たちの集まりに身を置きたい。だから、「蓮(ハス)」が好きなんです。その好きな花の名前を店名に付けて「蓮(レン)」。ずっと「蓮(レン)」という名前でしたが、2020年のリニューアルを機に10年以上「蓮」を引っ張ってくれた三科(みしな)惇の名前をもじって、店名を「蓮 三四七」にしたんです。

-「蓮 三四七」はどのようなコンセプトでスタートされたのでしょうか。

「蓮 三四七」店主・三科惇氏

すでにオープンしていた「虎白」は、トリュフとかキャビアとか、なんでも使って面白いことをしようと考えてはじめたお店でしたが、「蓮」は原点に立ち返って「神楽坂石かわ」よりシンプルに行こうと。「虎白」の真逆ですね。奇をてらわず「蓮(ハス)」のように凛とした美しさがある料理だと思います。今は「蓮 三四七」は、三科のお店なので好きにやってもらっています。お店にはなかなか行けないですが、最近の料理を写真で見て、また一皮むけた感じを受けましたね。なにかあったのかなって(笑)。

懐石・会席料理

蓮 三四七

東京メトロ銀座線 新橋駅 銀座口より徒歩4分

20,000円〜29,999円

2.「石かわグループ」初の寿司店「波濤」と店主・熊切大地氏の魅力

-寿司屋「波濤」は、いかにして誕生したのでしょう。

3年くらい前、隈研吾さんの依頼でロンドンとパリの和食屋さんへ何店か一緒に行ったんです。そのとき感じたのは「海外での和食の難しさ」。海外で日本料理がいくら人気と言っても、本国とはまた違った種類の“日本料理風”のもので。うちみたいなコースで出す日本料理はまだ理解されていないと感じました。

でも日本人もそうですよね。「今日、『神楽坂石かわ』で何食べるの?」と聞かれても答えられないですよね。僕だって答えられない(笑)。ロンドンやパリの日本料理店さんは、最初はご飯を土鍋などで出していたけれど、今はお寿司。お寿司にすることで、食べるものが明確になり、その流れで日本料理も食べてくれるんです。今はお寿司が大人気で、日本料理を食べるきっかけのゲートになっているなと考えました。外国に本物の日本料理が幅広く定着するのはまだ先の話だと思いますが、日本料理を知ってもらうきっかけとしてお寿司があるのなら、やってみようと。やるなら、中途半端なことは嫌だし、本気でやりたい。お寿司が大好きで、毎週のように食べ歩いて勉強しているお寿司の申し子のような子がうちのエースにいたんで、「お寿司やる?」と聞いたら「やります!」ということで、任せたのが熊切大地ですね。

-店名の由来を教えてください。

コンセプトとかは早く決まるんですが、いつもお店の名前はギリギリなんですよね(笑)。カウンターの目の前の壁をどうするか考えていて、お寿司だし海の絵を描いてもらおうと。いつもお願いしている書家であり画家の高仲健一さんにお願いしておまかせで出来上がったのが波濤図だったんです。その作品を見た瞬間に、店名を「波濤」にしようと決めました。波濤というのは「大きな波」こと。海は世界中に繋がっていて、お寿司を通して日本料理を世界中の多くの方に知ってもらおうと考えたことにリンクして良いなと。

-熊切さんはどんなお弟子さんでしたか?

「波濤」店主・熊切大地氏

スピードがあって、チャカチャカ動いてハキハキしている、頭の回転が速い子でしたね。すべてを自分ごとに捉えて動いていた印象。若手への指導もしっかりできていたし、仕事にもストイック。開店前に“渾身の一握り”を毎日食べさせてもらっていたんですが、完成度はかなりのものだと感じていましたね。寿司も本物だし、一緒に出す日本料理も本物。世界への日本料理のゲートに「波濤」はなってくれるんじゃないかなと思います。

寿司

波濤

東京メトロ東西線 神楽坂駅 徒歩4分

3.師匠に“天才”と言わしめた「NK」店主・カク.ランド(角谷健人)氏の魅力

-「Nanpeidai Chef’s table featuring Kakuland」この店名の由来から教えてください。

2020年のコロナ禍で、グループ全体をいったん神楽坂に結集させていたんです。そのタイミングで神楽坂のビルに空きができたので、僕が天才だと思っている角谷健人と「NANPEIDAI」の高橋七洋シェフと組んでもらってカウンターでお店をやったら面白いと思ったんです。

角谷も新店舗用に毎日新作を僕のもとに届けてくれたんです。出してくれるのは、美味しい日本料理。でも彼のすごいのはこういうことじゃないと思い「枠にとらわれないで、自分の好きにやってごらん」と声を掛けました。そうしたらどの国にも囚われないボーダーレスな料理が出てきて。僕には思いもつかない料理たちで、しかも美味しい。なんでもありで楽しくて美味しい料理店にしたいから、有名なテーマパークのように君は“カクランド”になれと(笑)。それが店名にもなった感じですね。

-角谷さんはどんなお弟子さんでしたか?

「NK」店主・カク.ランド(角谷健人)氏

「石かわ」と「虎白」、「蓮 三四七」で働いて、フレンチレストラン「ランベリー」で勉強、「NANPEIDAI」のスーシェフも担当してくれましたね。彼の料理が一番楽しくて面白いと思っています。彼の料理は本当にセンスの塊。天才というのはこういうことなんだと思わせる人ですね。

イノベーティブ

NK(Nanpeidai chef’s table featuring Kakuland)

東京メトロ東西線 神楽坂駅 徒歩3分

4.実直さが設えと料理からも伝わる「愚直に」と店主・大塚将人氏の魅力

-「愚直に」という店名の由来から教えてください。

大塚将人は、まず東京に出店されている京都の有名料亭で修行して、いろいろ学んでうちの店に来た人なんですが、とても実直な子でね。「なんの言葉が好きなの?」と聞くと真面目な言葉がたくさん出てきて、そのなかの一つが「愚直」。彼の好きな言葉を使おうと考えていたのでその言葉に「に」を付けて店名にしたんです。「石かわグループ」の基本の心は“真面目”で、お客様を第一に考える。それが店名に表れていてよいと思っています(笑)。

-大塚さんはどんなお弟子さんでしたか?

「愚直」店主・大塚将人氏

最初は、殻があるな~と感じました。僕もそうだったし、みんなもそうなんですけどね。お客様が来ても元気に笑顔で「いらっしゃいませ!」が言えなくて。いろいろ経験したことで、今では素敵な笑顔でお客様を迎えていますよ(笑)。料理が美味しいのは当たり前なんです。より素敵なお店にするのには、店主の笑顔が大事なんです。仕事面でもできる子です。「愚直に」を任せる前に、僕とカウンターで一緒に仕事をしたんですが、仕事ができるので「石かわ」の料理長もやってもらっていました。

「愚直に」の料理の良さは実直さ。日本の温かい素朴さを感じる料理と設えになっていますね。青竹でお酒を注いだり、店内の設えも「石かわグループ」初のオープンキッチンにしたりして。仕事着も他とはちょっと違うデザインで、大塚自身と大塚の料理に合わせています。初めて訪れる方は、その点にも注目していただけると嬉しいですね。

割烹・小料理・懐石料理

愚直に

JR総武線・中央線 飯田橋駅 徒歩4分

5.2021年9月オープン「jinen.(ジネン ドット)」の魅力

-新しく渋谷・南平台にオープンした「jinen.(ジネン ドット)」について教えてください。

店名は漢字で書くと「自然(じねん)」。“自分の能力や環境を嫌がらず否定もせずに、与えられたままを受け入れ、肯定し、そこに自分のできることを行っていく”中国の哲学者・老子の教えからいただいています。

「jinen.」シェフ・加藤将益氏

北海道の三つ星フランス料理店「モリエール」さんで7、8年修行した加藤将益がシェフとして腕を振るう店です。加藤は世界の美食家が一度は訪れたいと言うデンマークの「noma」で学んだ経験もあって、「INUA」の立ち上げメンバーとしても活躍した人物。その後に、日本料理のエッセンスを学ぶためうちに来たんですね。

「jinen.(ジネン ドット)」の料理は、まあすごいですよ。これまでの彼の経験が全て詰まっています。フレンチをベースにしているのですが、和の経験もプラスされ彼にしか出せない世界ですね。これも開店前に新作を毎日食べさせてもらっていましたが、まあ役得ですね。毎日感謝しながらいただいていました。設えも開放的な空間で、非日常を感じてもらえるようにしています。ぜひお越しいただきたいですね。

-最後に、お弟子さんたちに一言メッセージを送るとしたらなんでしょう。

当たり前のことですが、今日来ていただいたお客様皆さんに喜んでもらえるお店になっていってほしいと思います。お客様に楽しく喜んでもらえれば、その結果がおのずとみんなの元に戻ってきますから。これからも、この当たり前のことを一日一日集中してやり通していきたいですね。

懐石・会席料理

神楽坂 石かわ

都営地下鉄大江戸線 牛込神楽坂駅 徒歩3分

【編集後記】
とても気さくな石川様。自分のお店「神楽坂石かわ」の営業があるため、お弟子さんたちのお店にはなかなか行けてないそうです。でも意外にも、Instagramなどでお店の情報を見ているそう。石川様ご自身もInstagramをやっていらっしゃるので、石かわグループの最新情報が気になる方はチェックしてみてはいかがでしょう。

吉田ふとし

人材業界系メディアの編集・制作を経て、現職。小学生の娘をもつ1児の父。アルコール(日本酒、焼酎、ウィスキー)を好むのは祖母譲り。読者のみなさまには、気づきのある多くの情報をお届けいたします。よろしくお願いいたします。

【MY CHOICE】
・最近行ったお店:ジランドール
・好きなお店:広東料理 センス
・自分の会食で使うなら:「赤坂浅田」
・得意ジャンル:和食 / バー
・好きな食材: ジビエ、白子

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