今さら聞けない和食のマナー:「会席料理では、献立の名称と順序さえ知っていれば怖くない!」

大切な接待や会食で、「会席料理」の和食店を選択するという読者の方も多いのではないでしょうか。一品一品、見た目も美しいお料理が運ばれてきますが、「先付」や「お造り」など、各献立の名称や提供される順序・ルールといった、基本的なマナーについてはあまり知られていません。
今回は、お食事の途中でゲストから「次の献立は?」と尋ねられても、落ち着いて答えられるよう、「会席料理」の献立の名称や意味、順序について説明いたします。ぜひ参考にしてみてください。

現在の「会食」文化の礎となった「会席料理」

「会席料理」とは、お客様をもてなす供応料理の一種。江戸期・享保年間ごろ、諸大名に代わって江戸に駐在した御留守居役らが、外交や会談の場所として茶屋(料理屋)を利用したことがきっかけとなって発展したとも言われています。
それまで供応料理と言えば、室町時代に確立された本膳料理が一般的でしたが、作法が複雑で貴族や一部の上級武士に限られたものでした。「会席料理」は、外交や会談の場で発展したものですから、その場での会話がスムーズに進むことに重きが置かれ、現代の「会食」や「接待」の基礎となったとも言えるでしょう。
また、一品一品提供されるスタイルは、室町時代の中頃に禅宗と茶道が結びついて完成した「茶懐石」に由来しています。

「会席料理」で供される献立の名称と順序

それでは、本膳料理と茶懐石の双方をベースに発展を遂げてきた、「会席料理」の献立について、提供される順序毎にご紹介します。

先付
乾杯の挨拶が終わってから、お酒と共にいただく料理。お酒の肴となるため、量は少なめです。魚介類などの“なまぐさ物”と“山菜物”といった、2種類を提供するお店もあります。関西地方では「突き出し」とも言われています。

吸い物
かつて江戸では「椀盛り」、京都や大阪といった上方では「菓子椀」とも言われた、魚や鶏肉、野菜などが入った汁物のこと。素材の持ち味を活かした薄めの味付けで、量が少ない場合も多いことが特徴。一口でいただけ、箸洗いを意図とした料理であることから、転じて「箸洗」と呼ぶ場合もあります。

お造り
「向付」とも呼ばれ、旬の魚による刺身料理のことを指します。「茶懐石」では膾(なます)を仕立てて提供していましたが、「会席料理」では季節の魚が用いられることがほとんど。なお、「向付」と言われる由来は、本膳料理にて客の前方(向こう側)に置くことにあるとされています。

焼き物
古来より、火の上で焼いて作った料理の総称ですが、会席料理の献立ではとくに魚を焼いたものを指します。「お造り」同様、その季節が旬の魚を用います。夏ですと鮎、晩秋では鱧が一般的。

煮物または蒸し物
「焼き物」に続くのが、「煮物」もしくは「蒸し物」。「炊き合わせ」と呼ばれることもあり、季節ならではの食材が使用されます。魚がメインとなる「焼き物」とは異なり、旬の野菜が使われることも多く、夏には茄子、秋であれば松茸が代表的な食材です。甘鯛や大根を用いた料理も登場します。

揚げ物
「揚げ物」の代表格は何といっても衣をまとった「てんぷら」ですが、カリカリに揚げた小魚や、竜田揚げが供される場合もあります。エビなどの海鮮だけでなく、松茸や野菜など、旬のものもよく使われます。
なお、お店によってはこの段階で、肉料理が提供される場合も。各お店のコンセプトや、提案する料理の楽しみ方を体感できるひとときでもあります。

酢の物
ここまで来ると、お料理もそろそろ終盤。甘酢や吉野酢などで、季節のお野菜を仕上げた一品が登場します。「ご飯」が供される手前で、一息落ち着ける瞬間です。「酢の物」は、「揚げ物」の前後に供されることが多いため、「揚げ物」と順序が逆転する場合もあります。

ご飯・止め椀・香の物
お食事の締め括りとなる「ご飯」。炊き込みご飯である場合も多いです。「止め椀」とは、ご飯と共に提供される汁物のこと。「香の物」はいわゆる漬物で、ご飯のお供にいただきましょう。

水菓子
「水菓子」は果物を指すワード。他の献立同様、季節にマッチした果物が提供されます。お口の中をさっぱりさせることが目的ということで、お店によってはアイスやシャーベットの場合も。また、冷たい「水菓子」だけでなく、温かい「焼菓子」を一緒にいただけるお店もあります。

一般的な「会席料理」の献立と順序についてまとめてみました。一度目を通しておけば、実際の接待や会食の際も安心できますね。なお、お店によっては順序が若干異なる場合もあり、気になる方は事前に問い合わせるか、公式ホームページなどで情報を確認することをお勧めします。

参考文献

鈴木晋一 「会席料理」世界大百科事典収録
鈴木晋一 「会席料理」日本大百科全書(ニッポニカ)収録
多田鉄之助 「懐石」日本大百科全書(ニッポニカ)収録
多田鉄之助 「日本料理」日本大百科全書(ニッポニカ)収録
多田鉄之助 「日本料理」世界大百科事典収録
「日本料理の基本マナー」 【マナーと常識事典】現代用語の基礎知識2007年版付録に収録
全て、ジャパンナレッジから2019年10月2日に最終アクセス

※こちらの記事は2020年01月31日更新時点での情報になります。最新の情報は一休ガイドページをご確認ください。

謝 谷楓

「一休.comレストラン」のプレミアム・美食メディア「KIWAMINO」担当エディター。ユーザーの悩み解決につながる情報を届けられるよう、マーケットイン視点の企画・編集を心掛けています。

前職は、観光業界の専門新聞記者。トラベル×テック領域に関心を寄せ、ベンチャーやオンライン旅行会社の取材に注力していました。一休入社後は「一休コンシェルジュ」を経て、2019年4月から「KIWAMINO」の担当に。立ち上げを経て、編集・運営に従事しています。
【MY CHOICE】
・最近行ったお店:和田倉、SENSE
・好きなお店:六雁
・自分の会食で使うなら:茶禅華
・得意ジャンル:日本料理
・好きな食材:雲丹/赤貝

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