コラム|

第1回「世界料理学会」東京in豊洲 2日目レポート(2019/2/10)

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料理界の最前線で活躍する料理人たちが、世界に向けて食の文化・哲学を発信する「世界料理学会」。東京での記念すべき第1回が、2019年2月9~10日に豊洲市場7街区で開催されました。「第1回『世界料理学会』東京in豊洲 初開催、初日レポート」に続いて、2日目の様子をご紹介します。

講演⑥ 西健一郎(京味)

左から齋藤氏、西氏
西健一郎氏(京味)

西氏は、料理人育成機関『美瑛料理塾』主宰の齋藤壽氏と登場。伝説の京料理人であり実の父・西音松の下での修業時代を振り返られました。「死ぬまで勉強」という父の教えを肝に銘じ、50年以上にわたり今でも現役で京料理の真髄を守り続けています。
和食は「季節のものをどう使うか」が大事。父からは調理技術だけでなく、料理人としての姿勢や心構えも学んだと語りました。

講演⑦ 水上力(一幸庵)

水上力氏(一幸庵)

「和菓子とは侍」と話すのは、和菓子職人の水上氏。「殿様であるお茶を輝かせること」「お茶を飲んだ瞬間に姿が消え去ること」を和菓子の理想とし、武士道にある“武士道とは死ぬ事と見つけたり”と同じ。それが和菓子職人の哲学であり、美学だと語られました。
一方で、和菓子文化の衰退について「このままだと行きつく先は博物館で飾られるような未来」と危惧し、現在では洋菓子職人との交流や、和菓子を世界へ発信する活動にも力を入れられています。

講演⑧ 近藤文夫(てんぷら近藤)

近藤文夫氏(てんぷら近藤)

近藤氏は、現代のてんぷらを世に広めた立役者。『山の上ホテル』での修業時代には、作家 池波正太郎先生などの食通を含むたくさんのお客様に育てられたと話されました。
加えて、てんぷらを世界に広めることにも尽力。自身の仕事を詳しく紹介した本『天ぷらの全仕事』は、韓国・台湾・中国・ポルトガル語にも翻訳されています。
お客様に対しては、食後にお店から出て本音が話せるところで「美味しかったね」と言ってもらいたい、と笑顔で語られました。

講演⑨ 志村剛生(板前てんぷら 成生)

志村剛生氏(板前てんぷら 成生)

食通が新幹線で通う静岡の名店『板前てんぷら 成生』の店主志村氏。「静岡の野菜は香りも水分も違う」と、静岡の食材の豊かさや環境について語られました。魚介類は毎朝焼津の老舗鮮魚卸の前田尚毅氏と相談し、その日ごとに仕入れ。地元だからできる食材へのアプローチを次々と打ち出しています。
また「他業界に比べ、てんぷら業界は情報交換が進んでいない。てんぷら職人になりたい若者を増やしていかないと」と危機感を持ちつつ、静岡食材とてんぷらの魅力を紹介されました。

<てんぷら対談>コーディネーター:谷昇(ル・マンジュ・トゥー)/パネリスト:近藤文夫(てんぷら近藤)×志村剛生(板前てんぷら成生)

左から谷氏、近藤氏、志村氏

谷昇氏(ル・マンジュ・トゥー)をコーディネーターに加え、近藤氏と志村氏によるてんぷら対談が行われました。

谷氏:“てんぷら”の難しいところは?

近藤氏:同じものを複数人に安定して出すのはとても難しい。集中力を要しますね。

志村氏:僕も、息が止まるんじゃないかと思うほどの緊張感の中で揚げています。

谷氏:近藤さんは、今の歳になってなにか体現したいことはありますか?

近藤氏:今年72歳ですが、その時々に合うようにやり方は変えていますね。温暖化が進んで魚がかなり変わってきたけど、これにうまく対応していけることが年寄りのできることかなと思います。

谷氏:志村さんはどのように考えてベストのものを作っているのですか?

志村氏:事前に仕入れ先に希望を伝えてはいます。しかし、自分の目で確認するまでどういう素材が届くか分からないので、素材ごとに揚げ方で工夫をしていますね。

谷氏:お2人は自分がブレそうになったエピソードなどはありますか?

近藤氏:一度だけ、仕事を辞めようかなと思ったことはありました。でも、お店に来てくれるお客様の笑顔で考え直しましたね。だから、お客様にいかにニコニコしてもらうかをいつも考えるようにしています。

志村氏:まだ大きくブレたことはありません。しかしてんぷらは、ちょっとした気負いとかですぐ影響が出てしまうので、常に注意はしていますね。

講演⑩ 野﨑洋光(分とく山)

野﨑洋光氏(分とく山)

「和食とはどういうものなのか」と問いかけるのは野﨑氏。日本料理における神様や、精進料理から始まった懐石料理の成り立ちについて語られました。
福島出身である自身の経験も踏まえ、東北の料理については「常に災害や凶作と対峙してきた文化」と話されました。
「時代に沿って料理の仕方は変わる」という、先輩たちからの教えを信じてやってきた時代から、新しい情報を「開示しなければいけない時代」がきたと語られました。

トークセッション テーマ『伝承』 コーディネーター:齋藤壽(美瑛料理塾)/パネリスト:全登壇者

登壇者全員によるトークセッションでは、齋藤氏の進行で『伝承』についての活発な議論が展開されました。

齋藤氏:日本料理を世界の料理にするために、どういう部分を発信していきたいですか?

山本氏:「美味しい」ということはもちろん、あとからじわじわ効いてくる日本食材を感じてもらいたいですね。

林氏:大将たちの時代は、ベクトルが外に向いていた気がします。一方で、今は足元なんじゃないかと。自分のルーツなど今までの歴史を振り返ったところに、日本料理を考え直すきっかけがあるのではないかと思います。

野﨑氏:時代によって常識も変わっていくんですよね。この先もいい意味で進化していけると思うので、日本料理も新しい装いになっていければいいですね。

齋藤氏:中澤さんはハワイに行かれて、何か感じたことはありますか?

中澤氏:日本を離れて思ったのは、日本の食材の素晴らしさです。ハワイでは100年前や200年前の技法を使って、南国の魚を鮨にしています。考えたうえで戻ることも進化だと思っています。

齋藤氏:料理を出す方もお客さんも変わっていく中で、何が必要だと思いますか?

篠原氏:最近は若いお客様も増えましたが、その若い方が次のお客様になっていきます。店側が間口を開いて受け入れないと、お客さんは増えないなと思います。

谷氏:多少の経験者である私のような年寄りは、若い人たちに現在進行形で起きていることを伝えること。それが僕にとっての『伝承』かなと思っています。

クロージング 総括:秋山能久(総合ディレクター/日本料理 六雁)

秋山能久氏(総合ディレクター/日本料理 六雁)

秋山氏は「今料理人が市場離れしている」という危機感とともに、豊洲市場が日本の食の発信地として価値を高め、今一度市場に足を運んでもらえるようにしていきたいと、今後の意気込みを語りました。

閉会あいさつ:深谷宏治(「世界料理学会」東京in豊洲 顧問)

深谷宏治氏(「世界料理学会」東京in豊洲 顧問/ レストラン・バスク)

深谷氏は初めて東京で開催できたことに対して「料理人を盛り上げていく学会になるように、これからも力を貸してください」とお礼のあいさつで会を締めくくりました。

日本でトップを走り続ける料理人たちの熱い言葉に、若手の料理人や調理人、飲食関係者たちが熱心に耳を傾け、2日間に渡るプログラムは大盛況の中幕を閉じました。

1日目の記事はこちら

第一回 世界料理学会 東京 in 豊洲 
http://www.sekai-ryori-gakkai-tokyo.jp/summary.html

misaki

一休.comレストランの元営業。300店舗近いレストランを担当したのち、もっと世の中に宿やレストランの魅力を発信したい!という思いから、KIWAMINOの編集に。よく食べ、よく遊び、よく働くがモットー。全国各地を飛び回り、インタビュー記事を通してシェフの熱き想いをたくさんお届けできるよう日々奮闘中です。
【MY CHOICE】
・最近行ったお店:LATURE/TAKAZAWA/銀座 きた福
・好きなお店:オテル・ドゥ・ミクニ
・自分の会食で使うなら:六雁
・得意ジャンル:フランス料理
・好きな食材:赤身肉/鴨/海老/いくら

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