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「珀狼」グルメレポ。気鋭の若手シェフが腕を振るい、和皿で少しずついただく麗しきイタリアン懐石

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広尾から西麻布の交差点を経て青山へ向かう外苑西通り。その裏道には小さなレストランが宝石のようにひしめいており、一流店の激選区といえます。今回はその一角に佇む「珀狼」を訪れました。

小さな灯りを頼りに階段を下がった地下にひっそりと店を構える「珀狼」。明るくフレンドリーなスタッフの出迎えに、ほっと心が解きほぐされます。

2019年11月に29歳の誕生日を迎えたばかりのシェフ・篠原佑希氏はトスカーナを中心に3年間イタリアの星付きレストランで修行し、2018年よりこの店のシェフに就任。有田焼や唐津焼など伝統工芸の器を使った、少量多皿で懐石スタイルのコースがこの店の特徴。他にはない独自のイタリアンは、篠原シェフの名前と掛けて「シノリアン」と命名!コの字型カウンター形式のユニークな店内は、シェフの手さばきを間近に拝見しながら、臨場感溢れる料理を楽しめます。

飲み物はソムリエの山田晃一郎氏がセレクト。ノンアルペアリングもあり、料理の流れに合わせて水も3種出てきます。(この日はシェフの修行先であったトスカーナ地方の水に始まり、中盤のお口直しのタイミングで鳥取県、大山山麓で採水した軟水「ミライズ」、最後にデザートと合わせてジョージアの天然の炭酸水「NABEGHLAVI(ナベグラヴィ)」が登場)

さて、まず登場したのはこの食材の宝石箱!本日の料理に使われる素材について、実物を見ながら説明してくれます。箱の中を眺めることで、これからいただく15皿への期待が高まります。

前菜盛り合わせ
まるで石庭のような目にも嬉しい一皿。手前はかぶを土佐酢でマリネし、毛ガニを包み、ラビオリ風に仕立てたもの。真ん中は生ハム入りのケークサレ。トマトソースとオレガノを添えて。奥は鹿のムースの上にフォアグラのテリーヌ、さらに表面に柚子をのせ、ジュニパーベリーを振った一品。飛び石を渡るように、手前から食べ進めるほどに、旨味が深まっていきます。最後は柚子でさっぱりとした後味に。

魂の根フラン
底にポルチーニソースが敷かれた、百合根のフラン。上にあしらわれているのは毛ガニです。ポルチーニが蟹味噌のようにコク深く、百合根とカニを包み込み、ふわふわの食感ですーっと儚く溶けていきます。器は有田焼のエスプレッソカップ。

Red Bru
赤身の和牛を乗せたブルスケッタ。トリュフオイルをかけた上に、別オーダーで白トリュフをたっぷりかけることができます。肉本来の上質な旨味と香りが鼻を抜け、忍ばせたピクルスのカリカリ食感と酸味がリズミカル。合わせるお酒は千葉・九十九里の日本酒、梅一輪の純米生酛造り。脂身をすっと流し、甘みを増幅させます。

生ハム パーテェー
生ハムは2種類。左はとちおとめを飴に潜らせ、北イタリア・サンダニエーレ産の生ハムをのせています。パクッと一口で食べると、いちごのジューシーな酸と甘みに飴のカリカリ食感、生ハムの旨味と塩気が全体を包み込んで絶妙な塩梅に。右は、今焼きあがったばかりの黒オリーブ入りマドレーヌに、トスカーナ産の熟成タイプをのせて。こちらは本国で月間20本しか作れず、日本には4本しか来ないという希少な生ハムだそうです。日本酒と一緒にいただくと、旨味をさらに深めます。

珀狼名物 V3 春菊の巨人
産地の違う3種のアサリ(この日は熊本、愛知、浜名湖。その時々の仕入れで変わるそうです)とパスタでボンゴレ仕立てに。春菊のペーストで和え、春菊のスプラウトを添えて。春菊の爽やかな苦味と香り、貝のふくよかな旨味の華麗なるハーモニー!合わせるのはドイツ・モーゼル中部で家族経営するワイナリー、マーカス・モリトールのリースリング。

シノリアンTKG
ビスマルクピザからインスピレーションを得た、新感覚のTKG(卵かけご飯)。一番上には繊細なほうれん草のチュイル、その下には香辛料をつけて熟成させた複雑味のある生ハムと低温調理したうずらの卵、そして一番下は牡蠣とほうれん草、クリームソースを太巻きのように包み込んだラザニア。芳しい複雑な旨味が次々と何重にも押し寄せ、これはもうたまりません。

珀狼名物 カチュッコ
珀狼のお任せメニューは月替わりですが、こちらだけは毎回登場する不動の名作。篠原シェフのトスカーナ修行時代、マンマが週に一度は作ってくれた思い出の味を、さらに磨き上げてアレンジしたそう。甲殻類のビスクソースと魚のあらから取ったソース、2種類のソースを混ぜて丁寧にぐっと煮詰め、仕上げにレモンオイルをたらり。上品で奥深い味わいに。お酒はトスカーナを代表するサンジョベーゼをメインに使った希少な赤ワイン、ランコーレ。器は有田焼の骨董品だそう。

合法ハーブ グラニテ
お口直しは、スーシェフの岸祐示氏(甘いものが得意!)が手がける柚子とオレンジを使ったグラニテ。ハーブはレモングラス、レモンバーム、ミントの3種を効かせています。ジンのようなシャープな苦味のある大人の味わいですっきり爽やか。

オニオングラタンチーズ
一口サイズのバーガーには、北海道・花畑牧場のチーズ、ラクレットがとろーりと。バンズは百合ヶ丘で人気のベーカリー「nichinichi(ニチニチ)」直伝で、絶妙なカリふわ食感。中にはぐっと煮詰めたオニオングラタンとウニが詰まっています。めくるめく濃厚なウニの風味は、絶大なる危険な旨味爆弾でした。ワインはシェフと同い年という1990年のバルバレスコ。

スペシャル セコガニのリゾット
スペシャルオーダーで食べられる、今の時期だけの特別メニュー。セコガニの殻でとった出汁で炊いたリゾット。外子が混ぜてあり、身と内子をふわっとのせて。さらに白トリュフ(オプション)を存分に振り掛けた贅沢過ぎる一皿です。器は有田焼の逆輸入品。

ひよこのスープ
ベッサンと呼ばれるひよこ豆の粉をまぶして揚げた鱈のコンフィに鱈の白子を添えて。ソースはバッカラマンテカート(干し鱈)にひよこ豆のペーストを混ぜたもの。ひよこ豆の香ばしさが加わり、程よいアクセントになっています。器は有田焼、柿右衛門の写しだそうです。

BANBI de BBQ
じっくりと炭火で焼いた蝦夷鹿の一品。京都の堀川牛蒡を鹿の出汁と醤油とトリュフで煮込み、きんぴら風に仕上げた付け合わせを添えて。牛蒡のエスプーマを敷き、醤油のチュイルがのっています。ここでもハラハラとトリュフをかけました。(別オーダーでトリュフは3品にかけてくれます)鹿は程よい弾力があり、噛みしめるほどに芳醇さが増していきます。

裏メニュー 黒ごまカリー
メニューの裏側にひっそりと書かれた“裏メニュー”。5品ある中から、今回選んだのは牛テールの出汁と黒ゴマのカレー。玉ねぎ、人参、マンゴーチャツネ、スパイス3種、カカオバターなどでじっくり煮込まれています。肉の出汁がこっくりと奥深く、スパイスが複雑に鼻に抜け、いつまでも食べていられそうなカレーでした。器はオレンジの釉薬を効かせた唐津焼。

スッポン☆PONスープ
山形・出羽桜の大吟醸酒で出汁をとったスッポンのスープ。スッポンの身が入ったラビオリ入り。鉄瓶でサーブしてくれます。お腹に静かにこだまするような、透明感のある滋味深い味。すっきりと胃腸を整えてくれそうです。

赤い恋人
岸シェフ担当のデザート1品目。真ん中のチョコレートドームの中にはブラックベリーとフランボワーズ。下にシフォンケーキが敷かれています。周りの粉は雪に見立てたホワイトチョコレートパウダー。甘さ控えめの上品なデザートです。

アイスクリームユースクリーム
最後に登場したのは、おままごとのような可愛らしさのある3品。左は北海道の牛乳を使ったフレッシュで濃厚なソフトクリーム。上に乗ったポップコーンはなんとみりんでキャラメリゼ。200年の歴史を持つ、愛知の小笠原みりんを使用しています。
そして右端はシェフ渾身の大福!2019年10月から作り始め、毎月中身を変えているそうで、今回は、チョコレートのバタークリームにグラッパをたっぷり効かせ、レーズンをアクセントに。消えてしまいそうなほど繊細なふわふわ食感、これに包まれて眠りたいくらいの柔らかな舌触り。チョコとグラッパの餡が大人っぽい色気を漂わせて濃厚に香ります。

毎回小さなサプライズがあり、スタッフは機敏できめ細やかな気遣いを見せつつも、どこか遊び心のある振る舞いで、驚きと笑いに満ちた珀狼小劇場!(各料理のダジャレを効かせたネーミングにも注目!)15皿を飽きさせることなく、次の料理を常にワクワクしながら待つ、楽しい臨場感がありました。大切な人と一緒にこっそり訪ねたいお店です。

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イノベイティブイタリアン懐石

珀狼

東京メトロ日比谷線 広尾駅 4番出口より徒歩6分

アクセス
住所: 東京都港区西麻布4-4-9 B1

江澤 香織

ライター。旅、食、クラフト等を中心に、旅雑誌、食雑誌、航空会社会員誌等を始め、書籍、WEB、広告等でも活動。各地の生産者取材も多く、食の背景を探求することはライフワークの一つ。食べ物は甘いも辛いもくさいも酒もOK。特に興味があるのは発酵食品や地方の郷土料理、チョコレート。

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