インタビュー|

鈴木健太郎氏に聞く、銀座「アルジェント」で伝えたいフランス料理の楽しみ方

日本中の美食が集まる街、銀座。その一角に佇む「アルジェント」は、2019年に鈴木健太郎氏を料理長に迎え、イノベーティブなフランス料理の店へと一新されました。そこで今回は、2020年で2年目を迎えた鈴木氏に、料理への想いや新生「アルジェント」での展望をお聞きしました。

オリジナリティー溢れるフランス料理店で料理人の道をスタートさせた戸惑い

―2019年1月に「アルジェント」の料理長になって2年目。改めて、料理人を志したきっかけについてお聞かせください。

実は、料理人になろうとはあまり考えていなくて。大学に行って、公務員にでもなろうかと思っていました。料理人を意識したきっかけと言うほどでもないのですが、大学の時にアルバイトをしていた居酒屋でしょうか。

―居酒屋での調理経験が、料理の世界を意識したきっかけだったのでしょうか。

とは言っても、その居酒屋ではホールだったので、調理はしていないんです。ただ、わりとこだわった料理を出していて。美味しい料理っていいなと、その時初めて感じました。
フランス料理も最初からやろうとしていたわけではなく、その店がエスニック系だったので、同じ方向に進もうかなと思っていました。でも、通っていた料理の専門学校の先生に「うちには高級料理店しか就職先はない」と言われて、各国の料理を展開する会社のフランス料理店で働き始めました。そこで初めて、フランス料理に触れることになったんです。

その店はフレンチだったのですが、昆布出汁を取るところから始まったり、醤油やわさびを多く使う店でもありました。そういうフランス料理もあるんだなと思いながら、4年ほど働いていました。

当時は、「この料理のベースとなっている料理って何ですか?」と料理長に必ず聞き、その後、家に帰ってから派生元の料理を調べるという日々でした。
例えば、「ブールブラン」は基本ホワイトですが、その店では黄色。自分で調べて、バターソースにサフランを加えたから黄色なんだとわかって。応用力というかアレンジの幅も勉強になりました。

―スタートし始めで、いきなりオリジナリティー溢れる現場へ飛び込んだということでしょうか。

最初がそうだったので、次に勤めた一軒家フレンチは王道な店を選びました。そこで初めて、フォンドボーやコンソメ、フュメ・ド・ポワソン、出汁をしっかり取るということ、フランス料理のベースとなることを学びました。

“100年後のトラディショナル”新しいことにチャレンジしたい

―自分自身を表現する場として、フランス料理という世界がマッチしたのでしょうか。

そうですね。2店舗目でも1年勤めて、このままフランス料理の道を進み続けようと思いました。でも、自分が目指すところはクラシックなフランス料理ではないなと思っていて。「いろんな素材を使っています」とか「いろんな技法で調理しています」とか、そういう店に対する興味が強かったです。

―「ひらまつ」との出会いは、どのような流れだったのでしょうか。

プルセル兄弟が南仏で3つ星を取ったお店の東京店「サンス・エ・サヴール(東京・丸の内)」に興味をもったのがきっかけです。3つ星を取った時から“100年後のトラディショナル”をテーマに掲げていた店で、進んでいるなと思いました。魚のソースにレモンをたくさん使うところなど、尖っていていいなと。「サンス・エ・サヴール」に入店して、この店は「ひらまつ」だったんだと後から知った感じです。

―“100年後のトラディショナル”という革新的なテーマを目の当たりにして気づいたこと、得たものは何だったのでしょうか。

食材の幅の広さでしょうか。もともと本店は南仏の暖かい場所にあり、“フルーツ”と“酸味”をすごく重視していました。盛り付けもすごく綺麗だなと思いましたね。自分がシェフになるならもっと綺麗な料理、見て感動するようなアーティスティックな料理をやりたいという想いがずっとあったので、プルセル兄弟の店で働けたことは本当によかったと思います。

―その後に、「ブラッスリー ポール・ボキューズ 大丸東京」へ。

「サンス・エ・サヴール」も忙しい店でしたが、「ブラッスリー ポール・ボキューズ 大丸東京」はよりスピードが必要な現場でした。1日のお客様の数が数十人の世界から、200人の世界に移ったので体力やテクニックをここで学べたと思います。

生産者の熱い想いが伝わる料理を提供し続けたい

―有名店で研鑽を積み、2019年1月に「アルジェント」の料理長となられていかがでしょうか。

高級志向のお客様や接待で利用される方が多いと感じました。それに加えて、食材のことをよく知っているお客様も多い。例えばキャビアでも、「ベルーガ」とか「オシェトラ」がいいとか、細かく指定される方も多いですし、使える食材の幅も広がりました。

最高の食材を、どこまで自分の手で満足いただける一皿に昇華できるか。その意味で、より一層レベルというかハードルが上がりました。極端に言えば、高いものは塩こしょうを振っただけでも美味しいわけですから。変にこってりしたソースを合わせるのではなくて、その素材を生かして、より美味しく感じていただくにはどうしたらいいのか。足し算だけではなく、引き算も使わなければならないのだと強く感じました。

―2年目の今年、新生「アルジェント」でお客様に提案したい楽しみ方はありますか。

食材を美味しく育てるために力を注いでいる生産者さんの想いや、背景まで伝えたいと思っています。例えば今ですと、最初に一口だけ食べてもらう一品にトリュフのコロッケがあるんですが、カカオニブを土に見立て、その上にコロッケを置いて葉っぱで隠して出すんです。実際にトリュフを採取するときも、森の中で犬や豚が葉っぱや土をかき分けて探します。その疑似体験と言いますか、トリュフはこういう風に採るんだという情景を思い描いてもらう。そんなプレゼンテーションができればいいなと思っています。

また、野菜を育てている生産者さんの顔や畑が料理から見るようにということも意識しています。まだ構想中なのですが、額縁に生産者さんや畑の写真を入れて、その上にアスパラの料理を盛り付けるのも面白いのではないかと思っています。そういう意外性、エンターテインメント性も取り入れたプレゼンテーションを楽しんでいただきたいです。

シェフになって1年目のときは、以前のイタリア料理のお店だと思って来られる方もいらっしゃいましたが、今では自分がつくるフランス料理を求めていらっしゃる常連の方も増えています。
ですから2年目は、これまで以上に自分自身を出していきたいと思っています。例えば、会食や接待、顔合わせ向けのコースと、自分のスペシャリテを出せるコースの2本を考えています。ゆっくりと時間をかけてお食事を召し上がれる方なら、スペシャリテを入れた10皿ほどをお出しして、生産者さんの顔を思い浮かべながら食べていただきたい。会食のお客様ヘは、4~5皿くらいでまとめて会話にも集中できるようなコース構成を考えています。お客様のシチュエーションに合わせて喜んでもらえるように、生産者さんの姿を思い浮かべられるように、そして美しい1皿、見て感動するようなアーティスティックな1皿をこれからも提供し続けたいと思います。

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鈴木健太郎 
プロフィール:
1981年神奈川県生まれ。専門学校卒業後、都内近郊のフランス料理店でキャリアを積み、2009年「ひらまつ」入社。「サンス・エ・サヴール」(東京・丸の内)、「ブラッスリー ポール・ボキューズ 大丸東京」(東京・丸の内)で研鑽を積んだ後、2016年9月より「アイコニック」(銀座)の料理長として腕を振るう。
2019年1月、「アルジェント」の料理長に就任。食材同士がそれぞれの味を高めあう掛け算の料理を得意とし、“独創的”を意味するイノベーティブな料理を通して、「日本の美味しさ」を表現し続けている。

編集後記
素敵な笑顔とともに、優しい口調で丁寧にインタビューに答えてくださった鈴木氏。ウエディングのお料理も引き受けていて、その時は事前に30~60分、新郎新婦と打ち合わせをして2人の思い出の食材を聞き出し、披露宴のお料理にその食材を使った1皿を出すのだそう。新郎新婦の想いを背景と一緒に料理で表現するのは、時間と労力がかかると思い「それは大変ですよね」と聞いてみると、「知らない食材に出会うこともあって勉強になるし、直接お客様と長くお話しできる機会もないので面白いんですよ」と笑顔で答えてくださいました。この方が手掛ける1皿は、絶対にすべて美味しいと感じた瞬間でした。

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フランス料理

アルジェント

JR山手線/京浜東北線 有楽町駅 中央口より徒歩5分

15,000円〜19,999円

アクセス
住所: 東京都中央区銀座3-3-1 ZOE銀座8F・9F

yoshida.f

放送作家、人材業界系メディアの編集・制作を経て、現職。小学生の娘をもつ1児の父。アルコール(日本酒、焼酎、ウィスキー)を好むのは祖母譲り。読者のみなさまには、気づきのある多くの情報をお届けいたします。よろしくお願いいたします。

【MY CHOICE】
・最近行ったお店:ジランドール
・好きなお店:広東料理 センス
・自分の会食で使うなら:「赤坂浅田」
・得意ジャンル:和食 / バー
・好きな食材: 豚肉、鶏肉、白子

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